第13話「懐かしいと思うとき」
話数を間違っていました……
訂正しました。
閉ざされたこの世界で時の流れを知るのは難しい。
自動で灯りがつく便利なシステムがあるので忘れそうになるが、この城の中は薄暗い。
廊下の端に立つと反対側の端がぼんやり沈んでしまい見えないぐらいだ。
なんとなくの感覚と、律儀に食事に呼びに来る魔王の側近がいてようやく時間がわかる。
外の景色が見たいと、リィは思った。
この城に連れてこられて、1度も外に出ていない。
特別に外が好きだというわけではない。けれども、人並みに外で遊んだ記憶だってあるのだ。
たまには息抜きがしたいと思っても仕方ないだろう。
魔王城で暮らし始めて十日以上の月日が過ぎていた。
断じて郷愁などではないが複雑な思いを抱えたリィは、ぼんやりと考え事に耽った。
朝目覚めても何となく起きる気になれなくて、ベッドで寝転がったままである。
ごろごろとベッドの端から端まで転がってみる。
このベッドは広い。教会にいた頃はこれの4分の1の大きさのベッドで寝ていた。
何となく楽しくなってどんどん転がる。
思う存分転がって、ふと顔をあげると部屋の扉が空いていた。
半開きにした扉の先にいた魔王は、リィと目が合うと真顔のまま口を開いた。
「邪魔したか」
いつから見ていたものやら。固まっていたリィは急いで身を起こした。
「何?」
ヴァルがリィのところを訪ねてくるなど初めてである。
僅かに目線をそらしたヴァルは、その場所から入ってこようとはせず、その場で手に持っていたものを差し出した。
「……何?」
「詫びだ。シリルが何か言ったそうだな」
「べつに」
謝ってもらうようなことじゃない。
リィが沈黙すると、ヴァルは静かに眉を寄せる。
癖なのだろうか、何度か目にした仕草である。
「要らない」
「迷惑料だ、取り置け」
迷惑料。
なんだそれ。
リィはきょとんとした。
よくわからない。
ヴァルは困惑するリィに説明するでもなく佇んでいる。
手に持っているものが所在なさげにくたりとした。
「ねえ、何でそれにしたの」
気になって問うてみると、ヴァルはぱちくりと瞬いた。表情は一切変わらないが、瞳にだけ不思議そうな色を載せる。
ここ数日で何となくではあるが、彼の感情の変化がわかるようになってきたような気がするリィである。
本気でわからないという様子のヴァルは、何故、というようにリィを見た。
「女性はこういったものを好むのだろう」
幼いうちならば。
リィは差し出されているぬいぐるみを見て首を傾げる。
「どうして」
「ジェンが言っていた」
まさかの側近の入れ知恵だった。
リィは少しだけ笑ってしまった。
彼とその愛嬌のある顔立ちのうさぎのぬいぐるみが、あまりにも不似合いで。
生憎とぬいぐるみを喜ぶような年ではないけれど、なんだか気が抜けてしまってリィはベッドを滑り降りた。
裸足のまま歩み寄り、ぬいぐるみを受けとる。
くたっと柔らかい素材でできたそれと目を合わせる。
「もらっていいの」
「好きなようにすればいい」
こっそり抱き締めると日向のような匂いがして、少しだけ涙が滲んだ。
7日に更新予定部分は8日に繰り上げて投稿になります。




