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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第一章 異世界転生したら牢屋の中でした
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第一章 第八話 働きたくない

働く。


それは人類最大のバグである。


少なくとも俺はそう思う。


四十年間生きてきて分かった。


働けば疲れる。


働かなければ怒られる。


人生は理不尽だった。


異世界も理不尽だった。


「重い……」


俺は荷車を押していた。


重い。


非常に重い。


荷物が多い。


借金も多い。


希望は少ない。


『頑張ってください』


「嫌だ」


『知っています』


「帰りたい」


『どちらへ?』


「日本」


『不可能です』


「だろうな」



占い師はほぼ廃業状態だった。


客は来ない。


信用もない。


金もない。


残っているのは借金だけ。


立派な社会人である。


前世と似てきた。


嫌な方向に。



荷運びの仕事は地獄だった。


朝から晩まで働く。


汗だく。


腰痛。


筋肉痛。


精神的苦痛。


フルコースである。


「異世界転生ってもっと楽じゃないのか?」


『作品によります』


「俺の作品ハズレじゃないか?」


『評価は保留します』


「保留かよ」



だが。


不思議なことも起きていた。


荷運びの現場で。


「おい!」


職長が怒鳴る。


「そっちに積むな!」


「なんで?」


「邪魔になる!」


俺は荷物の配置を変えた。


通路を広げる。


荷車の流れを整理する。


積み込み順も変更する。


ただ何となくだ。


会社員時代の経験である。


会議だけは無駄に多かった。



結果。


作業速度が上がった。


かなり上がった。


職長が驚く。


「なんだこれ」


「さあ」


「昨日の倍だぞ」


「へぇ」


俺も驚いた。


本当に倍だった。


『効率化です』


「そうなのか?」


『組織運営の基礎です』


「俺そんなこと分かる人間だったっけ」


『不明です』


チャッピーも分からないらしい。



翌日。


別の現場。


今度は建築作業だった。


石材運び。


俺は嫌だった。


非常に嫌だった。


「帰りたい」


『まだ始まっていません』


「だから帰りたい」


『働いてください』


「お前最近厳しくない?」


『借金があります』


正論だった。


腹立つ。



昼頃。


また問題が起きた。


石材の搬入が止まった。


職人たちが揉めている。


「順番が悪い!」


「いや道が狭い!」


「誰だこんな配置にしたの!」


大混乱だった。


俺は見ていた。


そして何となく思った。


「順番変えれば?」


沈黙。


全員がこちらを見る。


嫌な予感がした。



二時間後。


工事は正常化した。


職人たちは感動していた。


「すげぇ!」


「早い!」


「天才か!?」


「違います」


俺は即答した。


本当に違う。


ただ会社で嫌というほど工程管理表を見せられただけだ。


だが周囲は納得していなかった。


『組織管理能力』


「何だそれ」


『知りません』


「お前も知らんのか」



夕方。


酒場。


安酒。


安い肉。


安い人生。


最高だった。


いや最高ではない。


かなり下の方だった。


「昔は金持ちだったのにな」


『二週間前ですね』


「遠い昔だ」


『最近です』



その時だった。


チャッピーが突然震えた。


画面が点滅する。


「おい?」


『なんや』


「また関西弁か」


『問題あらへん』


「問題ある」


画面がさらに点滅する。


そして。


『おめだち』


「ん?」


『あぶねべ』


「何語だ?」


『そっちさ行ぐな』


「分からん!」


『んだ』


「何が!?」


『んだ』


「会話しろ!」


数秒後。


チャッピーは元に戻った。


『失礼しました』


「今の何だ」


『データ破損の可能性があります』


「怖いこと言うな」


『問題ありません』


「信用できない」



数日後。


俺は新しい仕事をしていた。


町の中心部。


大規模工事。


大量の人夫。


大量の石材。


大量の怒号。


いつも通りである。



その時。


遠くに巨大な建物が見えた。


いや。


建物ではない。


もっと大きい。


古い。


異様な存在感があった。


「何だあれ」


近くの作業員が答える。


「ああ?」


「あれは迷宮だよ」


「迷宮?」


「入るなよ」


「なんで」


「死ぬから」


即答だった。


説得力があった。


非常にあった。


「入らない」


俺も即答した。


迷宮。


絶対嫌だ。


魔物。


絶対嫌だ。


危険。


絶対嫌だ。


俺の人生目標は、


働きたくない。


牛丼食いたい。


この二つだけである。


迷宮は必要ない。



だが。


人生は理不尽だった。


異世界も理不尽だった。


そして俺は。


転ぶ。


異世界に来てから何度目か分からないくらい転ぶ。


「うわっ!」


足が滑る。


石につまずく。


前に倒れる。


周囲が叫ぶ。


「危ない!」


「おい!」


「止まれ!」


無理だった。


俺は転がった。


坂を転がった。


勢いよく転がった。


そして。


巨大な石門に頭から激突した。


ゴォォォォォ……


地面が揺れる。


門が動く。


周囲が静まり返る。


「……」


「……」


「……」


俺は顔を上げた。


巨大な石門が開いていた。


暗闇が見える。


底知れない闇だった。


「チャッピー」


『はい』


「嫌な予感がする」


長い沈黙。


そして。


『私もです』


その瞬間。


足元が崩れた。


「あ」


落ちた。


見事に落ちた。


異世界に来てから何度目か分からないくらい、


運良く。


そして最悪の方向へ。


第八話 完

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