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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第一章 異世界転生したら牢屋の中でした
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第一章 第七話 チャッピー、お前を信じた俺が馬鹿だった

人生には二種類の人間がいる。


失敗から学ぶ人間。


失敗を繰り返す人間。


俺は後者だった。


圧倒的に後者だった。



金鉱脈権利証の競売当日。


会場は熱気に包まれていた。


商人。


貴族。


投資家。


冒険者。


誰もが大金持ちになる夢を見ている。


俺も見ていた。


牛丼専門店チェーンの夢を。


「よし」


『ほんまにやるん?』


「やる」


『やめといた方がええと思うで』


「99.7%だろ?」


『それはそうやけど』


「じゃあ問題ない」


『なんか怖いわ』


珍しく弱気だった。


だが俺は聞かなかった。


人間は儲かる話を聞くと耳が悪くなる。



結果。


競り落とした。


全財産投入。


さらに借金。


さらに借金。


さらに借金。


気付けば人生最大の勝負になっていた。


「勝った!」


『大丈夫かなぁ……』


「大丈夫だ」


『大丈夫かなぁ……』


「しつこいな」


『ほんま怖い』


チャッピーだけが不安そうだった。



三日後。


調査隊が出発した。


俺も同行した。


未来の大金持ちとして。


当然である。


自分の鉱山になる予定なのだ。


見学くらいする。


夢を見る。


牛丼の未来を見る。


そして。


現地に着いた。


山脈だった。


岩だらけだった。


確かに鉱脈がありそうだった。


調査隊長が叫ぶ。


「掘れ!」


男たちが掘る。


掘る。


掘る。


掘る。


掘る。


掘る。


そして。


沈黙。


「……」


「……」


「……」


誰も何も言わない。


嫌な予感がした。


非常に嫌な予感がした。


「なあ」


『なんや』


「大丈夫だよな?」


『知らん』


「初めて聞いたぞその返事」


隊長が青い顔で近付いてきた。


「報告します」


「おう」


「金鉱脈ではありません」


俺は固まった。


「え?」


「鉄鉱石です」


「え?」


「しかも質が悪いです」


「え?」


「採算が取れません」


俺はしばらく動けなかった。


頭が理解を拒否している。


「チャッピー」


『はい』


「説明しろ」


数秒の沈黙。


長い沈黙。


非常に長い沈黙。


そして。


『Map upside down.』


「英語で逃げるな!!」



どうやら。


チャッピーは地図を逆さまに見ていたらしい。


金鉱脈は別の山だった。


しかもかなり遠かった。


俺が買った場所ではない。


「お前AIだろ!?」


『はい』


「地図逆さって何だよ!」


『人は誰でも間違います』


「AIだろお前!」


『反省しております』


「本当か?」


『Very sorry.』


「英語で逃げるな!」



地獄はここからだった。


借金取りが来た。


まず一人。


次に三人。


さらに五人。


最後は十人。


増えている。


なぜか増えている。


「金返せ!」


「いつ返す!」


「逃げるな!」


俺は逃げた。


全力で逃げた。


異世界に来てから何度も逃げている。


慣れてきた。


慣れたくなかった。



宿も追い出された。


高級部屋終了。


肉料理終了。


酒終了。


人生終了。


「終わった……」


『終わりましたね』


「他人事か」


『半分くらい私のせいです』


「半分じゃないだろ」


『八割』


「正直になったな」


『二割は欲です』


「否定できない」



さらに悪いことが起きた。


占いの評判が落ち始めた。


当然だった。


あれだけ盛大に外したのだ。


「先生、本当に大丈夫なの?」


「……」


「今度は当たる?」


「……」


チャッピーを見る。


『知らんけど』


「やめろ!」



数日後。


広場。


客ゼロ。


売上ゼロ。


希望ゼロ。


「終わったな」


『終わったなぁ』


完全に関西人だった。


もう誰も驚かない。


俺も驚かない。



夕方。


俺は銀貨を数えていた。


残金。


銀貨二枚。


以上。


「チャッピー」


『なんや』


「飯代にもならないぞ」


『せやな』


「どうする」


『働くしかないんちゃう』


俺は沈黙した。


働く。


その言葉を聞きたくなかった。


前世でも聞き飽きた。


異世界でも聞くことになるとは。


「嫌だ」


『知っとる』


「働きたくない」


『知っとる』


「楽したい」


『知っとる』


「牛丼食いたい」


『それも知っとる』



翌日。


俺は荷運びの仕事をしていた。


日当。


銅貨五枚。


重労働。


腰が痛い。


汗だく。


「なんでこうなった……」


『全部覚えてますか?』


「聞くな」


『説明しましょうか?』


「やめろ」


『まず金鉱脈が』


「やめろ!」


夕日が沈む。


俺は荷車を押していた。


人生最底辺だった。


たぶん。


いや。


たぶんまだ下がある。


異世界はいつもそうだ。


俺が油断した瞬間、


さらに酷いことが起きる。


そしてその予感は、


だいたい当たる。


珍しくチャッピーより当たる。


『現在の生存確率は24.1%です』


「上がってる?」


『借金で死ぬ可能性が高くなりましたが』


「高くなったのか」


『魔物に食われる可能性は減りました』


「複雑だな」


俺はため息をついた。


この時の俺はまだ知らない。


数日後。


仕事中に転び。


巨大迷宮の入口に頭から突っ込み。


人生をさらに悪化させることを。


第七話 完

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