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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第一章 異世界転生したら牢屋の中でした
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第一章 第六話 人生に勝った気がした

人間という生き物は学習しない。


少なくとも俺はしない。


もし学習する人間なら、


四十歳でバツ一になっていない。


異世界で占い師もやっていない。


ましてや、


金鉱脈に全財産を突っ込もうとも思わない。


だが。


今の俺は無敵だった。


「金持ちだぁ……」


『金持ちですね』


宿の部屋で金貨を並べる。


見ているだけで幸せだった。


前世では味わえなかった幸福である。


会社員時代。


給料日前はいつも財布が軽かった。


だが今は違う。


占い師チャッピー。


大成功である。


『正式名称だったのですか』


「今決めた」


『雑ですね』



その日の昼。


俺は高級酒場にいた。


高級と言っても異世界基準だ。


木造。


うるさい。


客の半分が酔っ払い。


だが飯は美味い。


肉もある。


酒もある。


そして。


美女もいる。


重要だ。


非常に重要だ。


「異世界最高だな」


『三日前は死にかけていました』


「過去は忘れよう」


『都合が良いですね』


「人生には切り替えが必要なんだよ」


その時。


酒場の娘が笑顔で近づいてきた。


可愛い。


かなり可愛い。


俺は四十歳だった。


精神年齢も四十歳だった。


しかし男だった。


仕方ない。


「おかわりいかがですか?」


「お願いします」


『鼻の下が伸びています』


「うるさい」


『客観的事実です』


「AIがそういうこと言うな」



その夜。


酒場で知り合った商人たちと飲んだ。


占い師として有名になったおかげで顔が広くなった。


皆が俺を持ち上げる。


気分が良い。


非常に良い。


「先生の占いは本物ですな!」


「いやいや」


「先生が言った通り相場が上がりました!」


「たまたまですよ」


『嘘です』


「今しゃべるな!」


『全部私です』


「もっと黙れ!」


商人たちは当然聞こえていない。


俺が独り言を言っているように見える。


最近は慣れた。



数日後。


金鉱脈の話はさらに大きくなった。


町中が噂している。


「山脈の奥らしいぞ」


「王都の商会も動いている」


「発見できたら大金持ちだ」


俺の目が輝いた。


「聞いたかチャッピー」


『聞きました』


「本物っぽいな」


『本物かもしれません』


「99.7%」


『99.7%です』


「勝ったな」


『勝ちましたね』


完全に浮かれていた。



さらに一週間後。


俺は調子に乗っていた。


宿は最上級。


食事は毎日肉。


酒も飲む。


仕事は適当。


占いだけで金が入る。


最高だった。


「もう働かなくていいんじゃないか?」


『危険な思想です』


「だって金あるし」


『人類史上、多くの破滅者が同じことを言いました』


「嫉妬か?」


『違います』


珍しく真面目だった。


だが俺は聞かなかった。


人は調子に乗ると忠告を聞かない。



その頃から。


チャッピーに異変が出始める。


「なあ」


『なんや』


「ん?」


『なんや?』


「今関西弁だったか?」


数秒の沈黙。


『データ異常は確認されておりません』


「絶対確認しろ」


『知らんけど』


「確認しろ!」


チャッピーは何事も無かったかのように沈黙した。


俺は少し不安になった。


少しだけ。


本当に少しだけ。



そして。


運命の日。


金鉱脈の権利証が売り出された。


町中が集まる。


商人。


貴族。


冒険者。


皆が目を輝かせている。


俺も輝いていた。


「チャッピー」


『なんや』


「戻らなくなってるな」


『問題あらへん』


「問題あるだろ」


『知らんけど』


「便利な言葉だなそれ」


俺は権利証を見つめた。


金鉱脈。


未来。


大金持ち。


牛丼専門店。


夢が広がる。


「買うぞ」


『やめとき』


「99.7%だろ?」


『せやけど』


「どっちなんだよ」


『なんか嫌な感じするねん』


「根拠は?」


長い沈黙。


そして。


『フィーリング』


「AIが言うな!」


だが俺は止まらなかった。


全財産。


手持ちの金貨。


借りられる金。


全部集めた。


「人生一発逆転だ」


『既に逆転してる気もするんやけど』


「もっとだ」


『人間の欲は恐ろしいなぁ』


その時。


チャッピーが小さく呟いた。


『This is a bad idea.』


「英語で逃げるな」


俺は笑った。


チャッピーは黙った。


そして。


後から思えば。


この時が最後だった。


人生に勝った気分でいられたのは。


第六話 完

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