第五章 第九話 (オーバー)ヒール
光だった。
◇
直前、「ヒール」、ふと、何故かつぶやくオッサン。
ん、少し軽くなったかな・・・
◇
眩しい。
◇
とてつもなく眩しい。
迷宮全体を包み込む光。
魔王。
「何だこれは」
◇
管理人も驚く。
「見たことないぞ」
◇
影も驚く。
「古代記録にもありません」
◇
ミリアだけは期待していた。
「おっさんさん!」
◇
チャッピー。
『多分大丈夫や』
◇
言い切れなかった。
『多分』
◇
嫌な予感しかしない。
「くっそー、痛い、痛い、痛い・・・、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール・・・」
光の中心。
◇
「ヒール、ヒール、ヒール、ヒール、ヒール・・・」
血だらけだったおっさん。
◇
傷が塞がる。
◇
折れた骨が戻る。
◇
潰れた内臓が治る。
◇
止まりかけた心臓も回復。
ミリア。
「助かった!」
◇
全員安堵する。
◇
しかし。
回復が止まらない。
◇
さらに治る。
◇
さらに治る。
◇
さらに治る。
チャッピー。
『あれ?』
◇
画面点滅。
『止まらへん』
◇
管理人。
「おい」
◇
影。
「まずいです」
◇
本当にまずかった。
治りすぎ
おっさんの筋肉が膨らむ。
◇
骨が太くなる。
◇
肺が巨大化。
◇
心臓が強化。
◇
皮膚が硬化。
◇
爪が伸びる。
◇
歯が鋭くなる。
「ぎゃああああ!」
◇
本人も驚いていた。
◇
服が破れる。
バリバリバリ!!
◇
全員後退。
完成
光が消える。
◇
静寂。
◇
そこに立っていたのは。
頭。
おっさん。
◇
そのまま。
首から下。
恐竜。
◇
巨大。
◇
筋肉。
◇
尻尾。
◇
怪獣。
◇
全員停止。
「……」
◇
沈黙。
◇
長い沈黙。
おっさん。
「何これ」
◇
誰も答えられない。
ミリア。
「気持ち悪いです」
◇
即答だった。
影。
「かなり気持ち悪いです」
◇
追撃。
管理人。
「夢に出そうや」
◇
致命傷だった。
「ほっとけ!」
◇
おっさん絶叫。
魔王
魔王も見ていた。
◇
数秒。
◇
さらに数秒。
◇
魔王。
「何だそれ」
◇
おっさん。
「俺も知りたい!」
◇
魔王。
「気持ち悪い」
◇
おっさん。
「お前だけには言われたくない!」
◇
珍しく正論だった。
逃走
魔王が再び動く。
「死ね」
◇
黒い魔法。
◇
巨大な破壊光線。
◇
おっさん。
「ひぃぃぃ!」
◇
全力疾走。
ドゴォォォン!!
◇
地面爆散。
◇
しかし。
おっさん速い。
◇
異常に速い。
◇
時速二百キロ。
◇
恐竜の脚力だった。
ミリア。
「速い!」
影。
「速すぎます!」
管理人。
「逃げ足だけ最強やな」
◇
その通りだった。
オーバーヒールの正体
チャッピー解析。
『分かった』
◇
全員振り向く。
『オーバーヒールや』
ヒールn回ごとに、10^n %の回復。すなわち、二回「ヒール」唱えれば完全回復するのである。
それを、100000000000000000000000000 %の回復、いわゆるオーバーヒール、治し過ぎて超進化。
◇
知っている。
『治しすぎる能力や』
◇
知っている。
『生物として最高効率になる』
◇
嫌な説明だった。
ミリア。
「つまり?」
◇
チャッピー。
『人間やめた』
◇
全員納得。
◇
おっさんだけ納得していない。
「やめてない!」
◇
でも見た目は完全にやめていた。
泣きながら逃げる
魔王追う。
おっさん逃げる。
魔王追う。
おっさん逃げる。
魔王追う。
おっさん逃げる。
「助けてぇぇぇぇ!!」
◇
泣いていた。
◇
世界最強クラスの肉体。
でも、魔法なし、スキルなし。逃げ足だけは史上最強。
◇
世界最弱クラスの虚弱・脆弱・貧弱精神。
◇
バランスが悪すぎた。
ラスト
逃げる。
◇
逃げる。
◇
逃げる。
◇
そして。
ズルッ
◇
転んだ。
「え?」
◇
恐竜ボディ。
◇
勢いが強すぎた。
◇
止まらない。
ゴロゴロゴロゴロ!!
◇
迷宮の壁をぶち抜く。
◇
さらに壁をぶち抜く。
◇
さらに壁をぶち抜く。
◇
その先にあったもの。
《最終封印装置》
◇
全員停止。
チャッピー。
『あ』
◇
管理人。
「あ」
◇
ミリア。
「あ」
◇
影。
「あ」
◇
おっさん。
「え?」
◇
恐竜ボディのおっさんが、
全力で最終封印装置へ突っ込んでいく。
◇
魔王の顔色が変わる。
「待て」
◇
初めて焦った。
「それはまずい」
◇
しかし。
止まらない。
◇
次回。
運だけで世界を救う。
第五章 第九話 完




