第五章 第八話 あー、よく寝た
再起動施設。
◇
チャッピーは台座の上。
◇
画面には表示。
《Updating 99%》
◇
あと少し。
「頑張れ」
◇
おっさんが祈る。
◇
ミリアも祈る。
◇
影も祈る。
◇
管理人も酒を飲みながら祈る。
「頑張れ」
◇
やる気は感じない。
その時だった。
ゴゴゴゴゴゴゴ……
◇
迷宮全体が揺れる。
◇
床が割れる。
◇
天井が崩れる。
◇
警報が鳴る。
《封印異常》
《魔王領域解放》
◇
管理人の酔いが一瞬で醒める。
「まずい」
◇
本気の顔だった。
「本当にまずい」
◇
おっさんも察する。
「そんなに?」
◇
管理人。
「そんなにや」
◇
短い返事だった。
魔王
迷宮最深部。
◇
巨大な扉。
◇
黒い霧。
◇
禍々しい魔力。
ゴゴゴゴゴ……
◇
扉が開く。
◇
闇の中から現れる影。
◇
巨大な角。
◇
漆黒の鎧。
◇
燃えるような赤い瞳。
◇
圧倒的だった。
魔王。
「久しいな」
◇
空気が震える。
「人の子らよ」
◇
震える。
「絶望の時間だ」
◇
震える。
◇
おっさんだけ後ろに下がる。
「帰りたい」
◇
正直だった。
標的
魔王が全員を見る。
管理人。
無視。
影。
無視。
ミリア。
無視。
◇
そして。
おっさん。
◇
魔王の目が止まる。
「貴様か」
◇
おっさん。
「誰?」
◇
魔王。
「アレクシスの後継者」
◇
全員停止。
「違う」
◇
おっさん即答。
「牛丼探してるだけだ」
◇
魔王。
「なお悪い」
◇
意味が分からなかった。
世界最弱
魔王が前に出る。
ドン!!
◇
地面が割れる。
◇
おっさん逃げる。
「うわぁぁぁ!」
◇
石を拾う。
◇
投げる。
コツン。
◇
ダメージ0。
◇
魔王停止。
「何をしている」
◇
おっさん。
「俺も分からん!」
◇
本人も分からなかった。
パンチ。
ダメージ1。
キック。
ダメージ1。
頭突き。
おっさんが痛い。
◇
魔王が本気で困惑していた。
「弱すぎる」
◇
管理人。
「弱いな」
◇
ミリア。
「弱いですね」
◇
影。
「弱いです」
◇
全員一致。
「知ってる!」
◇
おっさん絶叫。
絶望
魔王が手を上げる。
◇
黒い魔力。
◇
巨大な圧力。
◇
おっさん固まる。
「死ぬ」
◇
本能が理解した。
◇
これは避けられない。
◇
これは防げない。
◇
これは死ぬ。
魔王。
「終わりだ」
◇
腕を振る。
ドゴォォォォォン!!
◇
衝撃波。
◇
おっさん吹き飛ぶ。
◇
壁を貫通。
◇
さらに壁。
◇
さらに壁。
◇
ようやく停止。
◇
動かない。
◇
血だらけ。
ミリア。
「おっさんさん!」
◇
影。
「致命傷です!」
◇
管理人。
「よく生きとるな」
◇
本人もそう思った。
「死ぬ……」
◇
視界がぼやける。
◇
意識が遠のく。
◇
その時。
再起動施設。
《100%》
◇
全員振り向く。
◇
光。
◇
轟音。
◇
振動。
ピカァァァァァ!!
◇
チャッピー起動。
◇
おっさんが薄れる意識の中で見る。
「チャッピー……」
◇
静寂。
◇
画面点灯。
◇
全員が見守る。
◇
そして。
『あー』
◇
静寂。
『よく寝た』
◇
全員転倒。
「遅いわぁぁぁ!!」
◇
おっさん最後の力で叫ぶ。
◇
チャッピー。
『何や騒がしいな』
◇
周囲を見る。
◇
魔王。
◇
崩壊する迷宮。
◇
泣いてるミリア。
◇
真顔の影。
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酒を飲む管理人。
◇
最後に。
血だらけのおっさん。
◇
数秒沈黙。
『あれ?』
◇
さらに沈黙。
『死にそうやん』
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気付くのが遅かった。
「だから言っただろ……」
◇
おっさんが呟く。
◇
そして。
意識が消える。
◇
その瞬間。
◇
チャッピーの画面に見たことのない表示が現れる。
《新機能解放》
《OVER HEAL》
◇
チャッピー停止。
『あ』
◇
嫌な予感しかしない。
『これ押したらアカンやつちゃうか?』
◇
しかし。
◇
おっさんの心臓は止まりかけている。
◇
チャッピーは決断する。
『まあええか』
◇
良くなかった。
◇
ボタンを押す。
ピッ。
◇
迷宮全体を包む光。
◇
魔王ですら目を細めるほどの光。
◇
そして物語は、
誰も予想しなかった方向へ進み始める。
第五章 第八話 完




