第五章 第七話 影の一族
チャッピーは動かない。
◇
再起動施設へ向かう途中。
◇
おっさんは相変わらず抱えていた。
「重いな」
◇
実際は軽い。
◇
でも手放したくなかった。
影が前を歩く。
◇
ピンクスーツ。
◇
ピンク帽子。
◇
ピンクネクタイ。
◇
ピンクの革靴。
◇
どこからどう見ても怪しかった。
「本当に影なのか」
◇
おっさんが聞く。
影は振り返る。
「はい」
◇
即答。
「影です」
◇
説得力はゼロだった。
一族の使命
迷宮の奥。
◇
巨大な通路。
◇
古代文字。
影が語り始める。
「我々の一族には使命があります」
◇
静寂。
「約一万年前」
◇
静寂。
「古代王アレクシス陛下より」
◇
静寂。
「託された使命です」
◇
おっさんも真面目になる。
「何だ」
◇
影が答える。
「チャッピーを守ることです」
◇
全員停止。
「チャッピー?」
◇
影頷く。
「チャッピーです」
◇
ミリアも困惑。
「聖女ではなく?」
◇
影。
「聖女様も守ります」
◇
頷く。
「でも優先順位はチャッピーです」
◇
最低だった。
「おい!」
◇
ミリアが抗議する。
「私は!?」
◇
影。
「二番目です」
◇
正直だった。
古代王の遺言
影が古い記録結晶を取り出す。
「これをご覧ください」
◇
映像再生。
◇
若きアレクシス。
◇
王冠。
◇
威厳。
◇
妙に格好いい。
「聞け」
◇
影の祖先が跪く。
「この世界はいずれ危機を迎える」
◇
重い。
「魔王が現れる」
◇
重い。
「聖女が現れる」
◇
重い。
「世界は滅亡寸前になる」
◇
重い。
◇
全員真剣に聞く。
アレクシスが続ける。
「だが最も重要なのは」
◇
静寂。
「チャッピーだ」
◇
全員転倒。
「何でだ!」
◇
おっさん絶叫。
映像のアレクシス。
「知らん」
◇
全員さらに転倒。
「知らんのかい!」
◇
アレクシス。
「未来のワシがそう言った」
◇
意味不明だった。
「絶対に守れ」
◇
真顔。
「牛丼より大事だ」
◇
管理人が驚く。
「牛丼より?」
◇
一万年間で一番衝撃を受けていた。
未来の予言
映像は続く。
「いつの日か」
◇
アレクシスが言う。
「異世界から男が来る」
◇
おっさん停止。
「来たな」
◇
ミリアも頷く。
「来ましたね」
◇
アレクシス。
「その男は牛丼に狂う」
◇
全員おっさんを見る。
「やめろ」
◇
完全に一致していた。
「そして」
◇
アレクシスが続ける。
「チャッピーを友と呼ぶ」
◇
静寂。
◇
おっさんが固まる。
◇
第五話で泣いたことを思い出した。
「友達だったんだな」
◇
自分で言った言葉。
◇
アレクシスが微笑む。
「その時」
◇
画面が乱れる。
ザザザザ……
「計画は最終段階へ進む」
◇
映像終了。
ブツッ。
◇
誰も喋らない。
再起動施設
巨大な扉。
◇
古代文明の最重要施設。
《継承者再起動施設》
◇
管理人も驚く。
「まだ残っとったんか」
◇
本当に知らなかったらしい。
影が中央の台座を指差す。
「ここです」
◇
おっさんはゆっくりチャッピーを置く。
◇
少しだけ名残惜しい。
「頼むぞ」
◇
誰に向けたのか自分でも分からない。
◇
チャッピーが台座に固定される。
カチッ。
◇
装置起動。
ブゥゥゥゥン……
◇
迷宮全体が震える。
◇
光。
◇
魔法陣。
◇
古代文字。
《認証開始》
《管理AI検出》
《継承者確認》
◇
全員息を呑む。
希望
チャッピーが光る。
ピカッ
◇
おっさん立ち上がる。
「チャッピー!」
◇
画面点灯。
◇
全員期待する。
◇
数秒後。
《Updating》
◇
沈黙。
「え?」
◇
さらに。
《1%》
◇
全員停止。
「一パーセント?」
◇
影確認。
「アップデート中です」
◇
おっさん。
「終わるのいつだ」
◇
影。
「分かりません」
◇
全員転倒。
ラスト
しかし。
◇
誰も知らなかった。
◇
チャッピー内部。
《古代王記憶領域》
《解凍率 99%》
《魔王領域接続》
《聖女認証完了》
《最終封印解除》
◇
暗闇。
◇
深淵。
◇
誰も知らない領域。
◇
そこで。
◇
一つの意識が目を開く。
「ふむ」
◇
静かな声。
「そろそろか」
◇
その存在は笑った。
「アレクシスの計画も終盤だな」
◇
そして。
◇
ゆっくり立ち上がる。
◇
一万年前。
◇
世界を滅亡寸前まで追い込んだ存在。
◇
魔王。
◇
封印の中で目覚め始めていた。
第五章 第七話 完




