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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第四章 大草原編
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第四章 第一話 皇帝失踪

皇帝になって三日目の朝。


俺は机に向かっていた。



皇帝らしく執務をしているわけではない。



遺書を書いているわけでもない。



退位届を書いていた。


「よし」


書けた。



完璧だった。



簡潔。



分かりやすい。



心がこもっている。


『辞めます。


牛を探しに行きます。


探さないでください。』



名文だった。



後世に残る。



残らない方がいい。


『アホや』


スマホの中からチャッピーが言った。



最近は関西弁率が高い。



故障が進行しているらしい。


「アホじゃない」


『皇帝やぞ』


「牛がいない」


『知らんがな』



地下帝国の未来より牛丼が大事。



それが俺という男だった。


皇帝逃亡計画


作戦は簡単。



城の裏門から出る。



そのまま第四階層へ向かう。



牛を探す。



牛丼を作る。



ニート生活へ一歩近づく。



完璧だ。


『絶対失敗する』


「するな」


『する』



チャッピーは最近辛辣だった。


城を抜ける。



誰もいない。



警備もいない。



簡単すぎた。


「勝ったな」


『まだや』



その瞬間。


「おはようございます」



聞き覚えのある声。



振り返る。



ミリア姫だった。


「なぜいる」


「皇帝陛下が逃げると聞きました」


「誰から」


「皆様から」



情報漏洩が早い。



国家機密とは何なのか。


「帰れ」


「嫌です」



即答だった。


「危険だぞ」


「大丈夫です」


「根拠は」


「何とかなると思います」



駄目だ。



何も考えていない。



相変わらずポンコツだった。


『お前もや』


「うるさい」



結局。



ミリアは付いてきた。



当然のように。



当然ではない。


第四階層への道


地下帝国のさらに奥。



巨大な門。



古代文明の遺跡。



誰も開けられなかった門。



なぜか俺が触ると開いた。


ゴゴゴゴゴ……



嫌な音。



毎回だ。



こういう時だけ主人公補正が働く。


『嫌な予感しかしない』


「同感だ」



門の向こう。



眩しい光。



風。



草の匂い。


そして。


大草原だった。



どこまでも緑。



空のような天井。



巨大な湖。



森。



山。



地下とは思えない。


「おお……」



ミリアが感動する。


「綺麗です」



確かに綺麗だった。



しかし。



俺が見ているのは景色ではない。


「牛いるかな」



それだけだった。


『病気やな』


「違う」


『病気や』


ピンクの影


その頃。



少し離れた岩陰。



何かがいた。


ピンクだった。



派手なピンク。



全身ピンク。



スーツまでピンク。



サングラスもピンク。


「影とは」



男が呟く。


「誰にも気付かれぬもの」



完全に見えていた。


「それが影」



全然影ではない。


地下帝国最強護衛。



秘密組織。



皇族直属。



伝説の男。


影。



今回の任務。


「ミリア様の護衛」



彼はプロだった。



超一流だった。



だからこそ。


「既に見失った」



五秒で見失った。


「影とは難しい」



駄目だった。


最初の危機


草原を進む。



気持ちいい。



平和。



牛はいない。


「平和だな」


『フラグや』



その時。



俺の足元。



古代遺跡の罠。



踏み抜いた。


ガコン


「ん?」



落とし穴起動。



巨大。



深い。



死ぬ。


「うわぁぁぁ!」



その瞬間。



どこからか石が飛んできた。


カン!



俺の靴に当たる。



体勢が変わる。



穴の手前に転ぶ。



助かった。


「……」



沈黙。


「運が良かった」


『違う』


「違うか?」


『後ろ見ろ』



振り返る。



遠くの岩陰。



何かピンク色。


「花かな」


『人や』


「花だろ」



興味を失う。



チャッピーは頭を抱えた。


『あかん』



野営。



焚き火。



干し肉。



スープ。



牛ではない。


「牛食いたい」


『寝ろ』



ミリアはすでに寝ている。



幸せそうだった。



危機感がない。


その夜。



巨大狼の群れ接近。



数十匹。



普通なら全滅。


しかし。



岩陰。



ピンクスーツ。


「影とは」



剣が光る。



狼が吹き飛ぶ。



三十秒後。



狼全滅。


「静かに消えるのも影」



全身血だらけ。



本人は満足そうだった。


翌朝


平和だった。



狼はいない。



危険もない。


「平和だな」


『平和ちゃう』



チャッピーだけが知っていた。



誰かが守っている。



とても目立つ誰かが。


そして。



丘の上へ登った時。



ミリアが遠くを指差した。


「あれを見てください」



巨大湖。



湖の中央。



小さな島。



そして。



島の上。



黒い巨大な影。


「……」


『……』



俺とチャッピー。



同時に固まる。


「牛だ」


『牛や』



第四階層。



到着初日。



ついに牛発見。



たぶん。


「行くぞ!」



おっさんは走り出した。



後にそれが、


人生最悪の勘違いだったと知ることになる。


第四章 第一話 完

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