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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
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第三章 第十話 キノコ丼と第四階層の門

皇帝になった。



なってしまった。



正確には。



勝手になっていた。



朝起きたら皇帝だった。



理不尽である。


「辞めたい」


『就任一日目やぞ』


「だからだ」



豪華な寝室。



豪華な服。



豪華な朝食。



全部いらない。



俺が欲しいもの。



ただ一つ。


牛丼。



三章かけて追い続けた夢。



もう目前だった。



醤油研究も進んでいる。



料理人たちも頑張っている。



地下帝国の国家予算まで投入された。



そろそろ報われてもいいと思う。


『死亡フラグやな』


「やめろ」


本物の牛丼計画


王宮大食堂。



料理人たちが並ぶ。



研究者たちも並ぶ。



ミリア姫もいる。



なぜか大臣たちもいる。



皆緊張している。


「完成しました」



料理長が震えている。


「ついに」



全員が固唾を飲む。


「完成しました!」



運ばれてくる。



どんぶり。



湯気。



肉。



玉ねぎ。



米。



香り。



限りなく近い。



今までで一番近い。


「……」



おっさん沈黙。



チャッピー沈黙。



ミリア沈黙。


『行け』



俺はスプーンを握る。



震える。



人生で一番震えている。



そして。



ひと口。



食べる。


「!!」



立ち上がる。



全員も立ち上がる。


「どうですか!?」



料理長絶叫。



研究者も絶叫。



地下帝国の未来が懸かっている。



たぶん。


「……」



俺は静かに目を閉じる。



故郷を思い出す。



学生時代。



会社員時代。



離婚後。



牛丼だけは味方だった。



深夜二時。



疲れた心。



安い牛丼。



温かかった。


「美味い」



歓声。



会場爆発。



料理長号泣。


「やった!」



ミリアも嬉しそう。



チャッピーも画面で拍手している。


『Congratulations』



珍しく英語が正しい。


「だが」



会場静止。



全員凍る。


「違う」



絶望。



再び絶望。



料理長失神。



研究者失神。



大臣失神。


「なぜですかぁぁぁ!」



料理長号泣。



俺も泣きたい。


「惜しい」



本当に惜しい。


「九十九点だ」



全員が息を飲む。


「何が足りませんか」



俺は遠い目をした。


「牛」



沈黙。


「え?」



料理長が固まる。


「牛じゃない」



再び沈黙。


「何の肉なんですか?」



料理長が答える。


「地底キノコ豚です」



会場崩壊。



誰も気付かなかった。



地下帝国に牛が存在しなかった。


「なんでだよ!」



俺が叫ぶ。



料理長も叫ぶ。


「地下なんです!」



それはそうだった。


『盲点やな』



チャッピーまで納得していた。



こうして。



第三章最大の希望は。



キノコ豚丼になった。


皇帝退位未遂


その夜。



俺は退位届を書いていた。


「もう無理」


『早い』


「牛いないじゃん」



皇帝の仕事より、


牛がいない事の方がショックだった。


「俺の夢終わった」



その時。



扉が開く。



ミリアだった。


「聞きました」



少し笑っている。


「退位するのですか?」


「する」



即答。


「牛がいない」



ミリアは数秒考える。



そして。



爆弾を投下した。


「第四階層にはいるかもしれません」



沈黙。


「何?」



ミリアが地図を広げる。



古い地図。



迷宮全体図。



第三階層の先。



さらに下。


第四階層



未知領域。



未踏破。



危険地帯。



誰も知らない世界。


「古文書に記録があります」



ミリアが言う。


「巨大な草原」



草原。



地下に?


「そして巨大な獣たち」



俺が固まる。



チャッピーが固まる。


『牛か?』


「牛か?」



二人同時だった。


「分かりません」



ミリアが微笑む。


「だから確かめに行きましょう」



嫌な笑顔。



非常に嫌な笑顔。



だが。



今回は少し違った。



俺も笑っていた。


「牛いるかな」


『おるとええな』



その時だった。



チャッピーの画面が突然光る。


ピカッ



強烈な光。



見たことがない。



そして。



古代文字が表示される。


『統一王アレクシス』



沈黙。



俺が固まる。



ミリアも固まる。


『記録一致率』


『九九・九八%』



さらに表示。


『転生個体確認』



空気が変わる。



世界が止まる。



そして。



次の瞬間。


『System Error』



全部消えた。


「……」


『……』


「今の見たか?」



ミリアがゆっくり頷く。


「見ました」



チャッピーは黙る。



またフリーズ。



いつも通り。



本当に肝心な時だけ壊れる。


「アレクシス?」



知らない名前。



聞いたこともない。



だが。



なぜか胸が痛んだ。



懐かしいような。



悲しいような。


「誰なんだ」



答える者はいない。



ただ一人。



フリーズしたチャッピーだけが、


画面の隅に小さく表示していた。


『Loading Ancient Memory...0.1%』



誰も気付かなかった。



こうして。



地下帝国編は終わる。



牛丼はまた遠ざかった。



皇帝にはなった。



古代王の伏線も動き出した。



そして。



おっさんの次の目的は決まった。


牛を探す。



世界の命運でも。



皇帝の責任でもない。



ただ牛丼のために。


「ああ……」



おっさんは夜空のない地下世界を見上げた。


「ああー、僕の牛丼生活」



それはまだ。



とても遠かった。


第三章 地下帝国編 完

次章予告


第四章 大草原編


牛を求めて第四階層へ


そして第四章終盤、


ついに迷宮最下層へ続く手掛かりが現れます。

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