第三章 第九話 皇帝爆誕
翌日。
地下帝国は大混乱だった。
◇
理由。
◇
古代王の遺跡。
◇
謎の石板。
◇
そして。
◇
チャッピーの途中で止まった翻訳。
『古代統一王』
『世界最初の王』
『名は――』
◇
そこで止まった。
◇
本当に止まった。
◇
人類史上最悪の止まり方だった。
「役に立たねぇ……」
◇
ベッドの上で呟く。
◇
チャッピーは沈黙。
◇
画面は真っ黒。
◇
完全にフリーズしていた。
「おーい」
◇
反応なし。
「チャッピー」
◇
反応なし。
「牛丼」
◇
反応なし。
「無料アップデート」
◇
画面が光る。
『どこや』
「起きた!」
◇
相変わらずだった。
『腹減った』
「スマホが腹減るな」
◇
そこへ扉が開く。
◇
ミリア姫だった。
◇
珍しく真面目な顔。
「大変です」
◇
最近毎日聞いている。
「またか」
◇
ミリアは頷く。
「またです」
◇
嫌な慣れ方だった。
緊急会議
巨大な会議室。
◇
貴族。
◇
将軍。
◇
神官。
◇
商人。
◇
全員集合。
◇
空気が重い。
「何があった」
◇
俺が聞く。
◇
ミリアが答える。
「食料倉庫です」
◇
帳簿が並ぶ。
◇
大量の帳簿。
◇
数字。
◇
数字。
◇
数字。
◇
見ただけで眠くなる。
「無理」
『分かる』
◇
チャッピーも同意した。
◇
珍しく役に立たない。
◇
すると将軍が言う。
「倉庫が空でした」
◇
沈黙。
「は?」
◇
さらに商人代表。
「各地でも同様です」
◇
神官代表。
「備蓄も消えています」
◇
ミリア。
「誰かが隠しています」
◇
空気が凍る。
◇
横領。
◇
隠匿。
◇
買い占め。
◇
誰かが食料危機を利用している。
「犯人いるじゃん」
◇
思わず言う。
◇
全員が振り向く。
「え?」
◇
貴族たちがざわつく。
「確かに」
「その通りだ」
「犯人がいる」
◇
俺は固まった。
「今さら?」
『今さらやな』
◇
地下帝国。
◇
意外と駄目だった。
犯人捜し
数日後。
◇
地下帝国中を調査する。
◇
俺も連れ回される。
◇
なぜか。
◇
本当に意味が分からない。
「俺いらなくない?」
『全員お前必要やと思っとる』
「やめて」
◇
調査中。
◇
偶然だった。
◇
本当に偶然だった。
◇
俺は市場で転んだ。
ドン!
「痛っ!」
◇
ぶつかった。
◇
荷車だった。
◇
大量の荷物。
◇
木箱。
◇
食料。
◇
隠し倉庫向けの積荷だった。
「ん?」
◇
荷車の男が青ざめる。
◇
逃げる。
「あ」
◇
兵士が追う。
◇
捕まる。
◇
尋問。
◇
さらに捕まる。
◇
さらに捕まる。
◇
次々捕まる。
◇
結果。
◇
巨大な汚職組織発覚。
「……」
◇
俺。
◇
チャッピー。
◇
同時に呟く。
『また事故や』
◇
本当に事故だった。
◇
しかし。
◇
結果だけ見れば。
食料危機解決
だった。
伝説誕生
数日後。
◇
地下帝国の食料不足が改善する。
◇
市場価格安定。
◇
備蓄回復。
◇
民衆歓喜。
◇
俺だけ困惑。
「なんでだ」
『お前のせいや』
「転んだだけだぞ」
◇
その頃。
◇
貴族たちは結論を出していた。
「もう決まりだ」
「彼しかいない」
「地下帝国を救った」
「民も支持している」
◇
やめてほしい。
◇
非常にやめてほしい。
皇帝即位式
そして。
◇
運命の日。
◇
巨大な広場。
◇
数万人の民衆。
◇
旗。
◇
楽隊。
◇
花吹雪。
◇
大歓声。
「帰りたい」
『無理や』
◇
玉座の前。
◇
ミリア姫が立つ。
◇
優雅だった。
◇
美しかった。
◇
そして。
◇
完全に逃がす気がない顔だった。
「皆様」
◇
広場が静まる。
「新たな皇帝を紹介します」
◇
嫌だ。
◇
非常に嫌だ。
◇
だが誰も聞いていない。
「地下帝国を救った男」
◇
違う。
「第二階層の王」
◇
事故だ。
「古代王の再来」
◇
知らん。
「我らの皇帝」
◇
大歓声。
◇
逃げ道なし。
◇
完全終了。
「おっさん皇帝陛下万歳!」
◇
誰だ今叫んだの。
即位
王冠が運ばれる。
◇
巨大。
◇
重そう。
◇
絶対被りたくない。
「嫌だ」
◇
本気で言う。
◇
しかし。
◇
ミリアが微笑む。
「諦めてください」
◇
その笑顔。
◇
妙に可愛かった。
◇
だから余計に腹が立つ。
『惚れた?』
「違う」
『顔赤いで』
「黙れ」
◇
王冠が乗せられる。
◇
歓声。
◇
拍手。
◇
祝福。
◇
こうして。
◇
第二階層の元王は。
◇
第三階層の皇帝になった。
◇
本人の意思は、
今回も一切考慮されなかった。
◇
その夜。
◇
豪華な晩餐会。
◇
大量の料理。
◇
酒。
◇
肉。
◇
魚。
◇
そして。
◇
おっさんは呟く。
「ところで牛丼は?」
◇
ミリアがため息をついた。
「明日です」
◇
おっさんの目が輝く。
◇
読者も嫌な予感がする。
◇
チャッピーも嫌な予感がする。
『絶対食えんやろ』
◇
そして。
◇
その予感は正しかった。
第三章 第九話 完




