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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
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第三章 第八話 王の夢

地下帝国はおかしくなっていた。



元々おかしかった。



だが今はもっとおかしい。



皇帝選挙は止まった。



内戦も止まった。



政治も止まった。



代わりに始まったもの。


醤油開発計画



国家予算が投入された。



研究者が集められた。



農家も集められた。



料理人も集められた。



意味が分からない。


「なんでこうなった」


『お前のせいや』


「違う」


『全然違わん』



王宮の一室。



俺は醤油候補の試作品を試食していた。



机の上には壺が並ぶ。



十個。



二十個。



三十個。



全部茶色い。



全部怪しい。


「これ本当に食えるのか」



チャッピーが答える。


『たぶん』


「その言葉が一番怖い」



試食する。



しょっぱい。



酸っぱい。



苦い。



変な香り。



全部違う。


「牛丼への道は遠いな……」



その時。



部屋の扉が開く。


バァン!



ミリア姫だった。



走っている。



息を切らしている。



珍しい。


「大変です!」



またか。



絶対またか。


「今度は何だ」



ミリアは言った。


「古代遺跡が見つかりました!」



沈黙。



俺。



チャッピー。



同時に嫌な顔になる。


『帰ろう』


「帰ろう」



古代遺跡。



今までろくな思い出がない。



大地竜。



崩壊神殿。



事故。



事故。



事故。



全部事故だった。


「行かない」



即答。


「行きます」



ミリア即答。


「嫌だ」


「行きます」



十分後。



俺は遺跡へ向かっていた。



人生とは理不尽である。


古代王の神殿


地下帝国最深部。



巨大な遺跡。



誰も入ったことがない。



古代文明の建造物。



入口だけで城くらいある。


「嫌な予感しかしない」


『同感や』



遺跡内部へ入る。



暗い。



静か。



古い。



そして。



妙に懐かしい。


「……?」



違和感。



初めてだった。



見たことがないはずなのに。



知っている気がする。


『どうした?』


「分からん」



進む。



さらに進む。



やがて巨大な広間。



中央に玉座。



巨大な王座だった。



誰も座っていない。



しかし。



見た瞬間。



頭痛。


ズキン


「っ!?」



視界が揺れる。



世界が歪む。



聞こえる。



誰かの声。


『陛下』



俺は振り返る。



誰もいない。


『陛下』



また聞こえる。



男の声。



老人の声。



泣きそうな声。


「誰だ」



返事はない。



代わりに景色が変わる。


玉座。



軍勢。



旗。



鎧。



王冠。



戦争。



炎。



そして。



玉座に座る男。



後ろ姿しか見えない。



だが。



妙に見覚えがあった。


『陛下』



再び声。



そして。



男が振り返る。


「……」



俺だった。


「は?」



景色が消える。



現実へ戻る。



俺は床に座り込んでいた。



冷や汗。



心臓が痛い。


「今の何だ」



チャッピーが珍しく静かだった。



数秒後。


『夢やろ』



嘘だった。



チャッピーも分かっていた。



何かがおかしい。


「俺は誰だ」



初めて出た言葉だった。



今まで考えもしなかった。



異世界へ来てから。



ずっと生き残ることしか考えていなかった。



牛丼のことしか考えていなかった。



だが。



今だけは違った。


「なんなんだ俺は」



その時だった。



ミリアが何かを拾う。


「これを見てください」



古い石板だった。



そこには紋章。



王冠。



剣。



そして文字。



誰にも読めない古代文字。


「読めるか?」



チャッピーが震える。



画面が明滅する。


『読める』



俺とミリアが固まる。



初めてだった。



本当に読めるらしい。


『古代統一王』



静まり返る。


『世界最初の王』



さらに静まり返る。


『名は――』



その瞬間。



チャッピーがフリーズした。


ピシッ


『System Error』



沈黙。



俺。



ミリア。



同時に叫ぶ。


「そこで止まるなぁぁぁぁ!!」



チャッピーは黙ったままだった。



いつものように。



最悪のタイミングで。


第三章 第八話 完

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