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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
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第三章 第七話 皇帝になる条件

地下帝国は揉めていた。



とても揉めていた。



貴族同士が揉める。



将軍同士が揉める。



商人同士も揉める。



全員揉める。



理由。



皇位継承問題だった。


「だから俺は関係ない」


『誰もそう思っとらん』



チャッピーが冷静に言う。



最近少しだけ調子が戻っていた。



今日は標準語だった。



それが逆に怖い。



地下帝国中央議会。



大広間。



数百人の貴族。



数千人の観客。



そして俺。



なぜか最前列。


「帰りたい」


『諦めろ』



ミリア姫が立ち上がる。



場が静まる。


「諸君」



凛とした声。



さすが皇女。



こういう時は格好いい。


「地下帝国は岐路に立っています」



全員が頷く。



俺もなんとなく頷く。


「そこで提案があります」



嫌な予感。



非常に嫌な予感。


「この方に皇帝になっていただきます」



全員拍手。



大歓声。



俺だけ立ち上がる。


「嫌です!」



即答だった。



一秒も迷わなかった。


「嫌です!」


「嫌です!」


「嫌です!」



三回言った。



重要なので三回言った。



会場静寂。



ミリア姫だけが微笑む。



嫌な笑顔だった。


「理由を伺っても?」



俺は立ち上がる。



そして地下帝国全員の前で宣言した。


「牛丼だ!」



沈黙。



完全な沈黙。



全員が固まる。


『始まった』



チャッピーが呟く。



俺は止まらない。


「俺は牛丼が食いたい!」



会場困惑。


「牛丼とは何だ!」


「知らん!」


「食べ物か!」


「たぶん!」



議会崩壊。



ミリア姫だけが真面目だった。


「つまり」



彼女は考える。



そして結論を出した。


「本物の牛丼を作れば良いのですね」


「そうだ」



俺は頷いた。



地下帝国の未来が今決まった。



たぶん。


「本物の牛丼を作った者が現れたら」



全員が聞く。



俺も聞く。


「貴方は皇帝になりますか?」



俺は考えた。



三秒。



五秒。



十秒。



そして言った。


「なる」



会場大歓声。



俺だけ気付いていない。



完全に罠だった。


『馬鹿や』


「うるさい」


牛丼トーナメント開催


翌日。



地下帝国史上最大の祭りが始まった。


第一回


地下帝国牛丼選手権



なぜか国民が熱狂した。



なぜか新聞が特集した。



なぜか賭けまで始まった。


「なんでこうなった」


『知らん』



参加者三百六十七名。



料理人。



貴族。



商人。



農家。



鍛冶屋。



なぜか将軍。



意味が分からない。


予選


キノコ丼。


失格。



魚丼。


失格。



巨大芋丼。


失格。



岩トカゲ丼。


論外。



ドラゴン丼。


高価すぎる。



謎の青い丼。


危険なので失格。


「食い物なのか?」


『分からん』



そして決勝戦。



最後に残ったのは、


王宮料理長だった。


「これが私の答えです」



運ばれてくる。



会場静寂。



俺も固まる。



チャッピーも固まる。


『おい』


「おい」



見た目。


完璧。



肉。


ある。



玉ねぎ。


ある。



米。


ある。



香り。


近い。



あまりにも近い。


「来た……」



震える。



涙が出そうになる。



故郷。



日本。



牛丼チェーン。



深夜の明かり。



全部蘇る。


『落ち着け』


「無理だ」



ひと口食べる。



会場全員が見ている。



俺は咀嚼する。



ゆっくり味わう。



そして。



静かに箸を置いた。


「美味い」



料理長が震える。



観客も震える。


「では!」



全員が期待する。



俺は首を振った。


「違う」



絶望。



会場全体が絶望する。


「何が違うのですか!」



料理長が叫ぶ。



俺はゆっくり答える。


「醤油だ」



静まり返る。


「ショウユ?」


「そうだ」



俺は再び食べる。



確かに美味い。



とても美味い。



だが。



決定的に違う。


「これは魚醤だ」



料理長が驚く。



正解だった。



地下帝国には醤油文化がない。



魚を発酵させた調味料で代用していた。


「素晴らしい料理だ」



料理長が涙ぐむ。


「だが」



全員が息を呑む。


「牛丼じゃない」



会場大号泣。



料理長も泣く。



貴族も泣く。



将軍も泣く。



なぜかチャッピーも泣いている表示になる。


『感動した』


「何にだ」



結果。


優勝作品


失格



皇帝就任


延期



地下帝国


大混乱



しかし。



その時。



ミリア姫だけは笑っていた。


「なるほど」



嫌な笑顔だった。


「ならば作りましょう」



全員が振り向く。



ミリアは堂々と言った。


「本物の醤油を」



会場静寂。



俺も固まる。



チャッピーも固まる。


『始まったな』


「始まったな……」



こうして地下帝国は、


皇帝選びを放置して、


国家総力を挙げた


醤油開発計画


へ突入することになった。



後に歴史書には、


『第一次醤油戦争前夜』


と記されることになる。


第三章 第七話 完

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