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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
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第三章 第六話 姫様はどこへ行った

人生には嫌な予感が当たる日がある。



そして今がその日だった。



俺は地下帝国農業改革責任者になっていた。



昨日まで無職だった。



意味が分からない。


「帰りたい」


『毎日言うな』


「毎日帰りたいからだ」



朝。



俺は農業担当官たちと会議していた。



畑。



灌漑。



肥料。



種子。



知らない単語が飛び交う。



頭が痛い。


「なんで俺なんだ」


『王様経験者やから』


「事故だ」


『皇帝候補やし』


「もっと事故だ」



その時だった。



会議室の扉が勢いよく開く。


バァン!



兵士が飛び込んでくる。



顔面蒼白。



嫌な予感しかしない。


「大変です!」



来た。



絶対来た。


「姫様が!」



ほら来た。


「姫様が?」



兵士は叫んだ。


「行方不明です!」



会議室全員が頭を抱えた。



俺も抱えた。



チャッピーも画面が暗くなった。


『またか』



三日前にも聞いた。



昨日も聞いた。



どうやら定期イベントらしい。


「今度はどこだ」



兵士は答える。


「分かりません!」



堂々としていた。



全然良くなかった。


捜索開始


一時間後。



俺は捜索隊の先頭を歩いていた。



なぜか。



理由は知らない。



いや知っている。



押し付けられた。


「俺じゃなくていいだろ」


『姫様がおっさん指名や』


「なんでだよ」


『知らん』



地下帝国は広い。



本当に広い。



巨大都市。



人口数十万。



迷子になる場所は無限にある。


「見つかる気がしない」


『ワシもそう思う』



市場を探す。



酒場を探す。



図書館を探す。



鍛冶街を探す。



見つからない。



さらに二時間。



見つからない。


「どこ行ったんだ」



その時。



チャッピーが突然言った。


『腹減った』


「知るか」


『肉の匂いする』



確かにする。



香ばしい。



美味そう。



市場の奥からだ。



俺は吸い寄せられる。



人類の本能だった。


肉の屋台


市場の一角。



肉を焼いている。



行列ができている。



美味そうだった。



非常に美味そうだった。


「一個」



買ってしまった。



仕方ない。



昼だった。



腹も減る。


『仕事中やぞ』


「捜索中だ」


『同じや』



肉を食べる。



美味い。



感動する。



牛丼ではない。



だが美味い。



その時だった。



行列の先頭で聞き覚えのある声。


「もう一本ください」



俺は固まった。



チャッピーも固まった。


『おるな』



いた。



ミリア姫だった。



普通に並んでいた。



普通に肉を食べていた。



しかも変装ゼロ。



王族オーラ全開。


「何してるんだ」



ミリアが振り返る。



満面の笑顔。


「探していたのです」



俺は頭を抱えた。


「何を」



ミリアは真顔で答えた。


「食料問題の原因を」



一瞬。



おっさんは感心した。



さすが姫。



ちゃんと調査している。



そう思った。



だが続きがあった。


「市場を見ようと思ったのです」


「うん」


「王宮を出ました」


「うん」


「道に迷いました」


「うん」


「せっかくなので肉を食べていました」



全然駄目だった。


『通常運転やな』



ミリアは悪びれない。



むしろ嬉しそうだった。


「でも成果がありました」



そう言って帳簿を見せる。



数字。



大量の数字。



売買記録。



流通量。



価格推移。



びっしり書かれている。


「……」


『……』



俺もチャッピーも黙る。



理解できない。



しかし一つだけ分かる。



とんでもない量だった。


「これ全部調べたのか?」



ミリアは頷く。


「はい」



本物の天才だった。



方向音痴以外。


『方向音痴だけで全部台無しや』



その時。



ミリアの表情が少し曇った。


「おかしいのです」



初めて見る顔だった。



真剣な顔。



王族の顔。


「食料は足りているはずなのです」


「……」


「でも足りない」



嫌な予感がした。



今までとは違う種類の。



国家レベルの問題の匂い。


「誰かが隠してる?」



ミリアがゆっくり頷く。


「たぶん」



市場の喧騒が遠くなる。



チャッピーも珍しく黙る。



そして数秒後。


『横領やな』



珍しく正解だった。



そして。



その言葉は、


地下帝国の内戦へ繋がる火種だった。


第三章 第六話 完

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