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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第一章 異世界転生したら牢屋の中でした
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第一章 第三話 森で死にかける

人生には何度か、


「終わった」


と思う瞬間がある。


俺の場合。


異世界に来てから三日で十五回くらいあった。


そして今もその最中だった。


「はぁ……はぁ……」


森を走る。


逃げる。


走る。


逃げる。


転ぶ。


走る。


転ぶ。


逃げる。


また転ぶ。


『転倒回数二十七回です』


「数えるな!」


俺は木の根に躓きながら叫んだ。


後ろでは赤い目の集団が追いかけてきている。


狼だ。


たぶん狼。


正確には狼っぽい魔物。


体がデカい。


牙もデカい。


俺は小さい。


勝てる気がしない。


『生存を優先してください』


「優先してる!」


『ではもっと速く』


「無理だ!」


その瞬間。


足を滑らせた。


崖だった。


「うわああああああっ!」


落ちた。


見事に落ちた。



気が付くと川を流されていた。


「ぶくぶくぶく!」


『溺れています』


「見れば分かる!」


必死に手足を動かす。


流される。


流される。


流される。


やがて岸に打ち上げられた。


「げほっ!」


肺が痛い。


全身が痛い。


精神も痛い。


『おめでとうございます』


「何が?」


『狼の追跡圏外です』


「初めて役に立ったな」


『ありがとうございます』


珍しく素直だった。



問題は腹だった。


とにかく腹が減っている。


最後に食べたのは。


日本で食べ損ねた牛丼だった。


正確には食べてない。


食べ損ねた。


思い出したら余計に腹が減った。


「牛丼……」


『牛丼ですね』


「食いてぇ……」


『同感です』


「お前味覚ないだろ」


『ありません』


「だろうな」


俺は森を歩き始めた。


何か食べ物を探さなければ死ぬ。


その時だった。


キノコを見つけた。


大きい。


白い。


美味しそう。


危険そう。


非常に危険そう。


「これ食えるか?」


チャッピーが沈黙する。


数秒後。


『食用の可能性が高いです』


「高い?」


『たぶん』


「たぶん?」


『おそらく』


「どんどん怪しくなってるぞ」


『九十%』


「おお」


『くらい』


「雑だな!」


しかし腹は減っている。


死ぬほど減っている。


俺は覚悟を決めた。


「いただきます」


食べた。


味は悪くない。


むしろ美味しい。


少し甘い。


きっと食べられるキノコだ。


俺は安心した。


三分後までは。



腹が痛い。


死ぬほど痛い。


「ぎゃああああ!」


森に悲鳴が響く。


『訂正します』


「今かよ!」


『食用ではありませんでした』


「知ってる!」


俺は地面を転げ回った。


苦しい。


痛い。


死ぬ。


これは死ぬ。


『現在の生存確率は』


「聞きたくない!」


『7.2%です』


「下がってるじゃねえか!」


数時間後。


ようやく回復した。


死ぬかと思った。


本当に死ぬかと思った。


『申し訳ありません』


「本当に反省してる?」


『少し』


「少しか」


『三%ほど』


「具体的だな」



夕方。


森を歩いていると。


異変に気付いた。


鳥がいない。


虫もいない。


風も止んでいる。


妙だった。


「なあチャッピー」


『はい』


「これ危なくないか?」


珍しく即答だった。


『非常に危険です』


「理由は?」


『分かりません』


「いつものやつか!」


その瞬間だった。


ドゴォォォォン!


地面が揺れた。


木々が倒れる。


森の奥から巨大な影が現れる。


黒い体。


四本足。


巨大な角。


家くらい大きい。


「でけぇぇぇぇ!」


『危険です』


「見れば分かる!」


巨大な魔物だった。


俺は本能で理解した。


あれはダメだ。


関わったら死ぬ。


絶対死ぬ。


「逃げるぞ!」


『賛成です』


走る。


全力で走る。


すると。


また転んだ。


「痛っ!」


顔面から落ちる。


その瞬間。


巨大な魔物の足が俺の頭上を通過した。


ほんの数センチ。


あと少しで踏み潰されていた。


「……」


『……』


「また助かった?」


『また助かりました』


「なんなんだろうな俺」


『分析不能です』



夜。


俺は木の上で震えていた。


下には巨大魔物。


まだいる。


寝ているらしい。


帰ってくれ。


本当に帰ってくれ。


その時だった。


遠くに光が見えた。


「ん?」


火だった。


松明だ。


人工の光だ。


「人だ!」


『文明です』


「町か!?」


『可能性があります』


俺は思わず立ち上がった。


木から落ちそうになった。


危なかった。


「助かった……」


異世界に来て初めて。


希望が見えた気がした。


町がある。


人がいる。


宿もあるだろう。


飯もあるだろう。


風呂もあるかもしれない。


牛丼は。


たぶん無い。


でもそれでもいい。


「明日だな」


『はい』


「明日、生きてたら行こう」


『生きていれば』


「縁起でもないな」


チャッピーが少し沈黙した。


そして。


『現在の生存確率は15.4%です』


「上がった!」


『二桁です』


「すげぇ!」


『快挙です』


「そんなレベルだったのかよ!」


俺は苦笑した。


異世界三日目。


まだ死んでいない。


明日には町へ行けるかもしれない。


その希望だけを抱いて。


俺は木の上で眠りについた。


もちろん。


翌朝さらに酷い目に遭うことなど、


まだ知らなかった。


第三話 完

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