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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
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第三章 第三話 牛丼に最も近付いた日

俺は豪華な部屋にいた。


牢屋ではない。



昨日まで牢屋だった。



今日は客室だった。



意味が分からない。


「どういうことだ」


『知らんけど』



いつも通りだった。



目の前には銀髪の女性。



地下帝国第一皇女。



ミリア。



名前だけは昨日教えてもらった。



そして。



俺の話を全く信じていない。


「私は第二階層の記録を読みました」



ミリアが言う。


「大地竜討伐」


「違います」


「種族統一」


「事故です」


「食糧改革」


「保存食です」


「王」


「違います」



ミリアは頷いた。


「なるほど」



理解した顔だった。



全く理解していない顔だった。


『あかん』


チャッピーが言う。


『全然信じてへん』


「だろうな」



ミリアは微笑む。


「謙虚な方なのですね」



違う。



本当に違う。



だが。



説明が面倒になった。


「そういうことで」


『諦めた』



昼になった。



ミリアが立ち上がる。


「まずは歓迎しましょう」



歓迎。



良い言葉だった。



非常に良い言葉だった。



そして。



歓迎には大体ついてくるものがある。


食事。



俺の目が輝いた。


「飯か」


「飯です」



素晴らしい。



文明万歳。



王宮万歳。



地下帝国万歳。


『現金やな』


「うるさい」



巨大な食堂へ案内される。



豪華だった。



非常に豪華だった。



長いテーブル。



大量の料理。



肉。



魚。



パン。



スープ。



酒。



そして。



俺は見つけてしまった。


「……」


『……』



茶色い。



どんぶり。



肉。



玉ねぎっぽい野菜。



米。



湯気。



完璧だった。



あまりにも完璧だった。


「チャッピー」


『はい』


「見えるか」


『見える』


「見えるよな」


『見える』



震える。



手も震える。



涙も出そうだった。



転生してから初めてだった。



牛丼に見えるもの。



本当に牛丼に見えるもの。


『落ち着け』


「無理だ」



ミリアが首を傾げる。


「どうしました?」



俺は指差した。


「あれだ」


「はい」


「あれをくれ」



ミリアが少し驚く。


「地底牛の煮込み飯ですか?」



煮込み飯。



その単語が少し気になった。



だが。



もう止まれない。


「それだ」



運ばれてくる。



目の前へ置かれる。



完璧。



見た目は完璧。



本当に完璧。


『いけるか?』


「いける」


『牛丼か?』


「牛丼だ」



スプーンを持つ。



肉をすくう。



米と一緒に口へ入れる。



咀嚼する。



沈黙。



さらに咀嚼する。



そして。



涙が出た。


「違う」



チャッピーも頷く。


『違うな』



味は良い。



かなり良い。



むしろ美味い。



しかし。



違う。



決定的に違う。


「醤油がない……」



静まり返る。



ミリアが首を傾げる。


「ショウユ?」



知らないらしい。



当然だった。



俺は説明する。


「黒い調味料だ」


「黒い?」


「しょっぱい」


「しょっぱい」


「美味い」


「美味い」



説明になっていなかった。


『語彙力終わっとる』


「仕方ないだろ!」



しかし。



ミリアは興味を持った。


「そんな調味料があるのですか?」



俺は遠い目をした。


「たぶん無い」



それが問題だった。



材料が分からない。



作り方も分からない。



この世界で見たこともない。



つまり。



牛丼への道は再び閉ざされた。


「終わった……」


『終わったな』



二人で落ち込む。



その時。



ミリアが突然言った。


「作りましょう」



俺は顔を上げる。


「何を?」


「ショウユです」



沈黙。



チャッピーも沈黙。



ミリアだけ真顔だった。


「材料を探せば良いのですよね?」



その笑顔は美しかった。



そして。



非常に嫌な予感がした。


『始まったな』


チャッピーが呟く。


「何が?」


『新しいトラブルや』



その予感は正しかった。



なぜなら。



三十分後。



ミリア姫が王宮内で迷子になったからである。


「姫様が行方不明です!!」



大騒ぎだった。



俺は頭を抱えた。


「ここ王宮だよな?」


『王宮やな』


「なんで迷子になるんだ?」


『才能やろ』



こうして。



牛丼への道と。



迷子姫との道が。



同時に始まった。


第三章 第三話 完

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