表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
22/52

第三章 第二話 牢屋のベテラン

俺は牢屋にいた。


またである。



異世界転生してから何回目だろう。



野盗に捕まった。



迷宮に閉じ込められた。



オークに囲まれた。



リザードマンにも囲まれた。



そして今。



地下帝国に逮捕された。



人生とは理不尽である。


「帰りたい」


『どこへ?』


「日本」


『無理や』


「だよなぁ……」



鉄格子の向こうを眺める。



ちゃんとした牢屋だった。



石造り。



清潔。



意外と広い。



藁まである。



今までで一番良い牢屋だった。


「牢屋として評価したくないな」


『分かる』



俺の向かいの牢にも誰かいた。



小柄。



髭。



筋肉。



酒臭い。



ドワーフだった。



たぶん。



俺を見る。



向こうも見る。



しばらく見つめ合う。



そして。


「……」


「……」



何も通じない。



言語の壁だった。



俺はチャッピーを見る。


「翻訳できるか?」


『できる』


「おお!」


『たぶん』


「不安だな」



俺はドワーフへ話しかけた。


「こんにちは」


チャッピーが翻訳する。



数秒後。



ドワーフが激怒した。


「ガァァァァ!!」



牢を蹴る。



暴れる。



看守が飛んで来る。



大騒ぎ。


「何て訳した?」



チャッピーが答える。


『お前の髭は焼きそばみたいですね』


「なんでだよ!!」


『誤差です』


「誤差じゃない!」



結局その日は会話を諦めた。



夜。



牢屋の夕食が運ばれてくる。



俺は期待した。



文明がある。



つまり食文化もある。



もしかしたら。



本当に。



もしかしたら。


牛丼。



木の器が置かれる。



湯気が立つ。



良い香り。



肉。



米。



玉ねぎっぽい野菜。



おっさん固まる。


「来た……」



震える。



涙ぐむ。



ついに。



ついにこの時が。



箸は無いのでスプーンを握る。



ひと口。



食べる。



咀嚼する。



沈黙。


「違う」



チャッピーが言う。


『違ったな』



ただの煮込み飯だった。



美味しい。



かなり美味しい。



だが。



牛丼ではない。



圧倒的に違う。


「醤油がない……」



チャッピーも真面目な声になる。


『無いな』



そう。



醤油だった。



この世界には醤油が無い。



少なくとも今まで見たことがない。



だから。



牛丼になれない。



肉と米だけでは駄目なのだ。



牛丼とは文化である。



魂である。



深夜残業の友である。



人生である。


『重いな』


「牛丼を舐めるな」



翌朝。



看守が来た。



やたら偉そうだった。



鍵を開ける。



そして何か言う。



当然分からない。



チャッピーが翻訳する。


『処刑』



俺は固まった。


「え?」



看守が頷く。



周囲も頷く。



完全に頷いている。


「チャッピー」


『はい』


「本当か?」


『たぶん』


「またかよ!」



俺は連行された。



地下帝国の通路を歩く。



広い。



人が多い。



文明を感じる。



そして。



美味そうな匂いがする。


「処刑前に飯食いたいな……」


『呑気やな』



やがて巨大な扉の前に着く。



看守が開く。



中へ押し込まれる。



俺は覚悟した。



どうせまた理不尽だ。



どうせまた死にかける。



そう思っていた。



しかし。



部屋に入った瞬間。



俺は固まった。


「……」


『……』



玉座があった。



豪華な絨毯。



金属細工。



巨大なホール。



完全に王宮だった。



そして。



玉座の前に一人の女性。



銀髪。



長身。



美人。



剣を腰に差している。



見るからに偉い人だった。



その女性は俺を見る。



俺も見る。



数秒後。



女性が口を開く。


「あなたが第二階層の王ですか?」



完璧な共通語だった。



俺は感動した。



異世界に来て初めて、


まともに会話ができる相手だった。



そして。



俺は即答した。


「違います」



女性は微笑んだ。


「そう答えると思いました」



嫌な予感しかしなかった。


第三章 第二話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ