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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第三章 地下帝国編
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第三章 第一話 第三階層へ

第二階層を出発して三日目。


俺は後悔していた。


「帰りたい」


『まだ三日やで』


ポケットのチャッピーが言った。


「もう十分だろ」


『何がや』


「冒険」



第三階層への通路は長かった。


ひたすら長かった。


本当に長かった。



石の階段。


石の通路。


石の壁。


石の天井。



景色が変わらない。



途中から自分が進んでいるのかも怪しくなる。



二日目には、


「同じ場所を回ってないか?」


と言い始めた。



三日目には、


「実はまだ第二階層なんじゃないか?」


と言い始めた。



チャッピーは答えた。


『知らんけど』


役に立たなかった。



だが。


四日目。


ついに階段が終わる。



巨大な石門が現れた。



第二階層の門よりさらに巨大。



高さ三十メートル以上。



古代文字が刻まれている。



何か書いてある。



当然読めない。


「チャッピー」


『はい』


「何て書いてある?」



チャッピーが震える。



数秒後。


『立入禁止』


「本当か?」


『知らんけど』


「絶対嘘だろ」



俺は門を押した。



当然開かない。



もう一度押す。



やっぱり開かない。



さらに強く押す。



開かない。



疲れた。


「駄目だな」


『諦めるんか』


「うん」



その瞬間。



壁にもたれかかった。



偶然。



石が押し込まれる。


カチッ



沈黙。



俺。



チャッピー。



そして。



嫌な予感。


「今の何?」


『知らん』



直後。


ゴゴゴゴゴゴゴ……



巨大な門が開き始めた。



いつものことである。



俺は何もしていない。



本当にしていない。



偶然だった。



しかし周囲に証人はいない。



もし誰か見ていたら、


「古代王の封印を解除した」


とか言われるところだった。



危なかった。


「助かった」


『何がや』


「目撃者がいなくて」



門が完全に開く。



その向こう。



俺は固まった。


「……」


『……』



そこには。



空があった。



いや。


空ではない。



空のようなものだった。



巨大な洞窟。



果てしなく広い。



天井は見えない。



遥か上空には無数の発光結晶。



星空みたいに輝いている。



地下とは思えなかった。



そして。



さらに驚く。



森がある。



川がある。



湖がある。



山まである。



全部地下だった。


「なんだここ……」


『地下や』


「それは分かる」



さらに遠く。



光が見えた。



大量の光。



人工的な光。



街だった。



巨大都市だった。



第二階層の集落とは比較にならない。



文明があった。



本物の文明だった。



その瞬間。



俺の脳内に一つの言葉が浮かぶ。


牛丼



希望だった。



第三階層に来て初めての希望だった。


「チャッピー」


『なんや』


「文明がある」


『あるな』


「文明には何がある?」


『文化』


「違う」


『歴史』


「違う」


『芸術』


「違う」



俺は真剣な顔で言った。


「牛丼だ」



チャッピーは長い沈黙の後、


静かに答えた。


『無いと思う』


「夢を壊すな」



俺は歩き始める。



目指すは地下都市。



文明。



食事。



宿。



そして牛丼。



しかし。



当然ながら。



そんな平和な話で終わる訳がない。



都市へ向かって数時間後。



俺は大量の武装集団に囲まれていた。


「動くな!」



知らない言語だった。



だが意味は分かる。



何故なら。



人生三度目だからだ。


「チャッピー」


『はい』


「また牢屋だな」



チャッピーは即答した。


『せやな』



こうして。



第二階層の王は。



第三階層到着初日に。



見事に逮捕された。


「牛丼への道は遠いな……」


『始まったばかりやで』



俺はまだ知らない。



この地下帝国で、


再び皇帝候補にされることを。



そして。



牛丼にあと一歩まで近付いて、


また逃すことを。


第三章 第一話 完

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