第三章 第四話 姫様を探せ
地下帝国第一皇女。
ミリア。
◇
美人。
◇
天才。
◇
剣聖。
◇
政治家。
◇
完璧超人。
◇
そう聞いていた。
◇
しかし今。
「姫様が行方不明です!!」
◇
王宮中が大騒ぎだった。
◇
兵士が走る。
◇
侍女が走る。
◇
役人も走る。
◇
全員走る。
◇
理由。
◇
姫様が迷子になった。
◇
王宮の中で。
「意味が分からん」
『ワシも分からん』
◇
チャッピーは今日は広島弁だった。
◇
もう突っ込まない。
◇
疲れるからだ。
◇
俺は近くの兵士へ聞いた。
「よくあるのか?」
◇
兵士は真顔で答える。
「週三回ほど」
◇
俺は黙った。
◇
チャッピーも黙った。
『重症やな』
◇
結局。
◇
捜索隊が編成された。
◇
そして何故か。
◇
俺も参加だった。
「なんで?」
◇
兵士が答える。
「姫様が貴方をご指名です」
◇
嫌な予感しかしなかった。
◇
非常に嫌な予感だった。
「俺、昨日会ったばかりだぞ」
『気に入られたんやろ』
「最悪だ」
◇
こうして。
◇
地下帝国第一皇女捜索作戦が始まった。
◇
国家規模で。
◇
本当に意味が分からない。
王宮探索
王宮は広かった。
◇
異常に広かった。
◇
地下帝国の中心。
◇
巨大な石造建築。
◇
廊下だけで迷宮並み。
◇
部屋数は数千。
◇
おっさんは思った。
「これ設計した奴馬鹿だろ」
『おるな、たまに』
◇
一時間経過。
◇
見つからない。
◇
二時間経過。
◇
見つからない。
◇
三時間経過。
◇
全く見つからない。
「本当にいるのか?」
『実在するんか?』
◇
その時だった。
◇
遠くから声。
「助けてくださーい!」
◇
全員が止まる。
◇
兵士たちが走る。
◇
俺も走る。
◇
チャッピーは揺れる。
『酔うわ』
「スマホが酔うな」
◇
声の先。
◇
そこは王宮地下倉庫だった。
◇
巨大な食糧庫。
◇
そして。
◇
山積みの樽。
◇
その頂上。
◇
ミリア姫がいた。
「……」
『……』
◇
姫様。
◇
樽の上。
◇
なぜか座っている。
◇
本人も困惑している。
「降りられません」
◇
兵士全員が頭を抱えた。
◇
俺も抱えた。
「どうやって登ったんだ」
「覚えていません」
◇
完璧超人とは。
『何やろな』
◇
とりあえず助ける。
◇
梯子を持ってくる。
◇
降ろす。
◇
終了。
◇
かと思った。
「そうだ」
◇
ミリアが突然言う。
「見てください」
◇
樽を指差す。
◇
大量にある。
◇
食料だろう。
「何だ?」
◇
ミリアの顔が曇る。
「これです」
◇
樽を開ける。
◇
穀物。
◇
さらに別の樽。
◇
干し肉。
◇
さらに別。
◇
豆。
◇
何の問題も無い。
◇
ように見えた。
「食料じゃないか」
◇
ミリアは首を振る。
「足りません」
◇
空気が変わる。
◇
少しだけ。
◇
初めて姫の表情が真面目になる。
「地下帝国は人口が増え続けています」
◇
さらに樽を開く。
◇
数字の書かれた帳簿。
◇
大量の帳簿。
◇
チャッピーが覗き込む。
『うわ』
「何だ?」
『本当に足りん』
◇
意外だった。
◇
珍しくチャッピーがまともだった。
◇
帳簿を見る。
◇
難しい。
◇
数字だらけ。
◇
頭が痛くなる。
◇
だが一つだけ分かる。
◇
食料消費量が増えている。
◇
毎年増えている。
◇
かなり危険なペースで。
「生産は?」
「増えていません」
◇
ミリアが答える。
「貴族たちは争っています」
「予算を奪い合っています」
「責任を押し付け合っています」
◇
俺は遠い目をした。
「会社だな」
『会社やな』
◇
異世界なのに。
◇
結局やっていることは同じだった。
◇
縄張り争い。
◇
派閥争い。
◇
責任転嫁。
◇
人類はどこでも変わらない。
「面倒だな」
◇
思わず呟く。
◇
ミリアが苦笑する。
「そうですね」
◇
その笑顔だけは少し寂しそうだった。
◇
そこで。
◇
俺はふと思った。
「農地は?」
◇
ミリアが首を傾げる。
「あります」
「増やせば?」
◇
静まり返る。
◇
嫌な予感。
◇
非常に嫌な予感。
「……」
「……」
「……」
◇
全員が俺を見る。
◇
やめてほしい。
◇
本当にやめてほしい。
「何だよ」
◇
ミリアが呟く。
「その発想はありませんでした」
◇
また始まった。
◇
第二階層で何度も見た流れだった。
◇
俺は頭を抱える。
『王様ムーブやな』
「違う」
『皇帝ムーブやな』
「もっと違う」
◇
その時。
◇
王宮の外から鐘の音が響く。
ゴォォォン
ゴォォォン
◇
兵士たちの顔色が変わる。
◇
ミリアも振り向く。
「始まったようですね」
◇
嫌な予感しかしなかった。
「何が?」
◇
ミリアはため息をついた。
「皇位継承会議です」
◇
チャッピーが呟く。
『面倒くさいやつや』
◇
正解だった。
◇
とても。
◇
とても面倒くさいやつだった。
第三章 第四話 完




