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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第二章 第二階層の王者編
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第二章 第四話 なんかでっかいのが来た

人生には三種類の災害がある。


天災。


人災。


そして。


自分には関係ないと思っていた災害である。


今の俺がまさにそれだった。


「なんかでっかいのが来た?」


『来た』


「どれくらい?」


『でっかい』


「雑だな」


『すんごいでっかい』


「東北弁混じってるぞ」



広場は騒然としていた。


オークが走る。


リザードマンが走る。


戦士たちが武器を持つ。


子供たちは避難する。


完全に非常事態だった。



酋長が怒鳴る。


将軍も怒鳴る。


周囲の空気が張り詰める。



俺だけ状況が分からない。


「説明してくれ」


『なんかでっかいの』


「だから雑!」



しばらくして。


俺は高台へ連れて行かれた。


嫌だった。


非常に嫌だった。


こういう時はろくなことがない。



そして。


見えた。


「……」


『……』


「チャッピー」


『はい』


「山が動いてる」


『動いてますね』


遠く。


第二階層の地平線。


そこに巨大な影があった。



山だった。


そうとしか思えなかった。



しかし。


動いている。


ゆっくり。


確実に。


こちらへ向かっている。



俺はしばらく黙った。


現実逃避である。



そして。


「帰りたい」


『同意します』



その時だった。


オークの酋長が現れる。


何か説明している。


必死だった。



チャッピーが翻訳する。


『大地竜』


「おお」


『第二階層最強』


「おお」


『食物連鎖の頂点』


「嫌だな」


『みんな食われる』


「もっと嫌だな」



どうやら。


大地竜というらしい。


数十年に一度目覚める。



起きる。


食う。


壊す。


寝る。


以上。



迷惑極まりない。



リザードマンの将軍も説明する。


「シャァァァ!」


『前回は集落七つ壊滅』


「うわぁ」


『オーク五百匹死亡』


「うわぁ」


『リザードマン三百匹死亡』


「うわぁ」


『牛はいない』


「そこはいい」



その夜。


緊急会議になった。


また会議である。


異世界に来ても会議から逃げられない。



俺は本気で悲しくなった。


「転生した意味ある?」


『微妙ですね』


「否定してくれ」



会議では様々な案が出た。


戦う。


逃げる。


祈る。


隠れる。


全部無理そうだった。



オークの戦士長が胸を叩く。


「ブゴォ!」


『戦う』


リザードマンの隊長も叫ぶ。


「シャァ!」


『戦う』



俺はため息をついた。


「勝てるのか?」


沈黙。



全員が目を逸らした。



勝てないらしい。



チャッピーだけが正直だった。


『無理です』


「即答だな」


『95%死にます』


「高いな!」



そこで。


全員が俺を見る。


嫌な予感しかしない。



俺は首を振った。


「嫌だぞ」


全員が見る。



俺はさらに首を振る。


「本当に嫌だぞ」


全員が見る。



俺は立ち上がった。


「戦えないぞ」


全員が見る。



俺は叫んだ。


「剣使えないぞ!」


全員が見る。



さらに叫ぶ。


「魔法も使えないぞ!」


全員が見る。



最後に。


「料理しかできないぞ!」


その瞬間。


全員の顔が輝いた。



嫌な予感がした。


非常に嫌な予感がした。



チャッピーが小さく呟く。


『あかん』


「何が?」


『みんな期待しとる』


「なんで!?」


『料理で倒せると思っとる』


「無理だろ!」



しかし。


オークも。


リザードマンも。


本気だった。



彼らの目は語っていた。


「この男なら何とかしてくれる」


と。



俺は頭を抱えた。


完全に誤解だった。



その夜。


寝床で横になる。


眠れない。


当然だった。



大地竜。


第二階層最強。


数百人を殺す怪物。



俺。


四十歳。


バツ一。


借金持ち。


牛丼好き。



勝てる要素が一つもない。



チャッピーが静かに言う。


『生存確率17.4%』


「下がったな」


『大地竜込みです』


「そうだろうな」


しばらく沈黙。



そして。


チャッピーが珍しく真面目な声で言った。


『でも』


「ん?」


『今まで全部生き残ってます』


俺は少し笑った。



確かにそうだった。


牢屋。


狼。


野盗。


毒キノコ。


借金。


迷宮。


スケルトン。


戦争。


全部何とかなった。



たぶん。


今回も何とかなる。


根拠はない。


いつも通りだ。



その時だった。


遠くで地鳴りが響く。


ゴゴゴゴゴゴ……


大地が揺れる。


空気が震える。



大地竜が近付いていた。


確実に。


ゆっくりと。


そして絶望的なほど巨大なまま。


「牛丼食うまでは死ねないな……」


『それ一生無理かもしれません』


「縁起でもないこと言うな」


チャッピーは何も答えなかった。


珍しく。


本当に何も答えなかった。


第二章 第四話 完

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