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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第四章 王立学園編

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99 メインヒロインを瀕死にしよう! ②

「クラウスさん?」


 廊下に出てしばらく歩いたところで、柔らかな声が耳に届く。

 振り向くと、そこにはアリエルがいた。

 手には幾つかの書類を抱えており、どこかへ向かう途中だったようだ。


「こんな時間にどうした?」


「それはこちらの台詞ですよ……教師の方から、明日の最終演説の段取りに関する資料の確認を頼まれていまして。もう少しかかりそうです」


 アリエルは苦笑しながら答える。

 聖女と呼ばれる彼女らしいといえば、らしい理由だった。


「クラウスさんは?」


「ソフィアとエレノアの特訓に付き合っていた」


「まあ、そうだったのですね」


 アリエルは目を丸くした後、柔らかく笑んだ。

 当然だが、その特訓の真の目的――すなわち明日のイベントに備えて二人の体力と魔力を消耗させておく、という算段だとは夢にも思っていないだろう。


 内心でほくそ笑んでいると、アリエルは何かを躊躇うように一度目を伏せた。

 そして、意を決したように口を開く。


「その……少し、お伺いしてもよろしいですか?」


「なんだ?」


「この一か月間、クラウスさんにまつわる様々な噂が耳に入ってきました。ダンジョンでの出来事や、演説会場でのこと、それから……学食での一件も」


「ほう」


 悪行の数々が、こうして聖女の耳にまで届いているとは。

 これは喜ばしい限りだ。


「こういう言い方が正しいのかは分かりませんが……どうして、そこまでできるのでしょうか?」


 歓喜する俺に対し、続けてそう問いかけてくるアリエル。

 俺はそれに対し迷うことなく答えた。


「決まっている――それは、(ラスボスとして君臨するために)俺がしなくてはならないことだからだ」


「……っ」


 俺の答えを聞いた途端、なぜかアリエルはわずかに表情を曇らせた。

 悲しむような、何か重いものを受け取ったかのような顔だ。

 大方、聖女と呼ばれ、他者に施すことを存在意義とする彼女にとって、俺が進んで悪行を行っているという事実を受け入れられなかったのだろう。


 しかし、ここでただ落ち込まれるだけでは困る。


 明日、アリエルは邪神界序列66位【炎撃者イグニス】に体を乗っ取られ、会長選最終演説の場で暴れることとなる。

 その後、責任を取る形で彼女は留学を打ち切り公国へと帰還する。

 すなわち、アリエルがルークたちに影響を与えられるのは明日が最後なのだ。


 最初のボスというのは特別な存在。

 主人公たちの成長のためにも、しっかりとその役目を果たしてもらう必要がある。

 だからこそ、俺は続けた。


「アリエル、今のお前がそんなことに気を割いている余裕はあるのか?」


「……どういうことでしょうか?」


 アリエルは静かに俺を見上げる。

 その瞳に宿るのは、困惑と、それでも聞こうとする真剣さだ。


 俺はまっすぐにその目を見据えながら告げた。



「お前にできるのは(残された主人公たちに)全てを委ねることだけ。それ以外に何も考える必要はない」


「――――!」



 決まった。

 ラスボスから最初のボスへと贈られる、最高のアドバイスだ。


 ボスとしての存在価値とは、自身の力を余すことなく発揮し、主人公たちにとって忘れがたい存在となること。

 そのためには、余計なことに心を乱されてはならない。

 うんうん、完璧な助言ではないか。

 我ながら素晴らしい気の利かせようだ!


「俺から言えるのはそれだけだ。ではな」


 言い残し、俺は踵を返す。

 背後では、アリエルが呆然と立ち尽くしているようだった。


 それだけ俺の言葉が深く刺さったのだろう。

 これで明日、最高のボスとして活躍してくれること間違いなしだ!


(さあ、存分にルークたちに立ちはだかってもらうとしよう!)


 満足感とともに、俺は訓練場の中に戻る。

 そして、改めて特訓を再開する運びとなった。


 ソフィアには限界の限界まで魔術を放ってもらい魔力枯渇状態に、エレノアには生死の境に何度もさまよってもらうくらいに鍛え上げる。

 地獄の特訓は、朝日が見え始める頃まで続くのだった。

次回は来週、10月18日(日)更新予定。

どうぞお楽しみにお待ちください!


それから最後に、↓の大切なお願いにもご協力いただけると幸いです!



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