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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第四章 王立学園編

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95 主人公を脅して出馬させよう! ②

 ダンジョン実習当日。

 俺は目論見通り、ルークのグループを担当することができた。

 本来であれば原作においてこの役目を果たすのはアベルのはずだが、既に奴は出馬を取りやめている。

 ストーリー改変の観点からすれば、担当者が俺であっても大した問題はないだろう。


 集合場所は攻略予定の【ラックダンジョン】前。

 そこに集まった15人ほどのグループへと目を向けると、さっそくルークの姿を見つけることができた。


 そんな彼はというと、隣に立つ少女と言葉を交わしていた。


「初めてのダンジョン攻略ね。頑張りましょう、ルーク!」


「うん。そうだね、シャーリィ」


 金髪ボブに蜂蜜色の目をした少女――シャーリィ・ディザイア。

 彼女もまた原作のメインヒロインの一人。貧しい男爵家の娘ということで平民であるルークとも意気投合し、相棒ポジションに収まるのだ。

 ソフィアとの出会いのイベントは崩壊してしまったが、どうやら彼女との関係性は原作通りに築けているようでひとまず安堵する。


 俺は集まった一年生たちの前に立つと、威風堂々と告げる。


「本日の案内を務める、クラウス・レンフォードだ」


 直後、一年生たちの間から、わっと声が上がる。


「まさかレンフォード侯爵に担当してもらえるなんて」


「俺たちラッキーだな!」


「こうして間近で見ると、より偉大さが伝わってくるようですね!」


 俺の噂は彼らの間にも広まっているようで、さらには合同授業での活躍を直接目にしているとなれば、こういった反応になるのも仕方ない。

 称賛されること自体への不満はあるが、これからその評価が地に落ちる瞬間が楽しみで仕方なかった。


 そう内心でほくそ笑みながら、俺は続ける。


「探索中の情報伝達をスムーズに行うため、貴様たちの中からリーダーを立ててもらう。そうだな――」


 言いながら、俺は集団の中にいるルークへと視線を向けた。

 合同授業などでその姿は遠くから眺めていたが、直接関わるのはこれが初めてだなと思いつつ、俺は続けて言う。


「――貴様に任せるとしようか」


「僕……ですか?」


 俺に名指しされたことに、ルークは目を丸くした。


「そうだ。何か不満か?」


「い、いいえ、分かりました!」


 戸惑いながらも頷くルーク。

 周囲の学生たちは各々に反応を見せていた。


「なんで平民のアイツが任されて……」


「ソフィア様には敗北したけど、実力的にはこの中でトップクラスだからな」


「もしかして、合同授業だけで私たちの実力を把握しているってこと? すごい……!」


 ルークへのリアクションが中心の中、なぜか俺に対する称賛の声まで混ざっているが今は無視だ。


 その後、さっそく説明に入っていく。

 今日は学園が所有するこの【ラックダンジョン】を案内しながら、内部に存在するギミックの解除と魔物の討伐を行ってもらうと。

 それを聞いた学生たちは一気に湧き上がった。


 それも当然の反応だろう。

 原作における【ラックダンジョン】は、このタイミングでしか入場できないチュートリアルダンジョンだ。

 プレイヤーの興味を煽るためか、出現する魔物の経験値は莫大で、ギミックを解除するたびに優秀な報酬が獲得できるという仕様になっていた。


 それらはこの現実となった世界にも反映されているようで、毎年このダンジョン実習では学生たちが大きく成長できる最高の機会として知られているらしい。

 同じ仕様の【ラックダンジョン】は学園内に複数存在しており、その数に合わせて一年生のグループが分けられているというわけだ。

 自分たちだけでこのダンジョンの報酬を独占し、成長を実感できるのが楽しみで仕方ないのだろう。


 だが、


(甘い……甘すぎるぞ!)


 あえてこの状況を利用してやろうと考えている俺は、学生たちのはしゃぎようを眺めながら笑みを深めるのだった 




 その後、学生たちを引き連れてダンジョンの奥へと進んでいくと、仄暗い洞窟の奥にさっそく一体目の魔物が現れた。

 金色の体が特徴的なスライム――ゴールドスライムだ。


(……ん? ゲームで見た時より、少しサイズが大きい気がするな)


 しかしすぐに、気のせいだろうと結論を出す。


「ゴールドスライムだな。実力は低いが、獲得できる経験値は莫大。さらに討伐時、体内の全魔力が圧縮されることで生み出される魔石は高値で売却できるありがたい魔物だが――【ファイアボール】」


 簡単な説明を添えながら、俺はそのまま躊躇いなく魔術を放った。

 ゴールドスライムは呆気なく討伐され、魔石が床に転がる。

 俺はそれをさっさと懐に収めた。


 すると当然、自分たちに任されるはずだと思い込んでいた学生たちがざわつき始める。


「ど、どういうことだ? 俺たちが倒すんじゃなかったのか?」


「1体目だから、見本を見せてくれたってことだろ?」


「そ、そうだよな……」


 呟く学生たちに応えることなく、俺は案内を再開した。


(愚かな、この程度で済むと思っているとは――)




 同様のことは、その後も続いた。

 出現する魔物は学生たちが動くよりも早く俺が討伐し、ギミックも俺が全て攻略して報酬を回収する。

 道中、出現する魔物がやはりゲームの印象よりひと回りほど大きい気がしたが、まあそれは気のせいだろう。


 そんなことよりも、だ。

 こういった行為が何度も繰り返されると、さすがに学生たちも不満を抱き始めたようで――


「……また自分で倒したぞ」


「ギミックも全部解除されてるし、俺たちの出番が全くないんだが」


「もしかして俺たち、ただついてきてるだけか?」


「おかしいだろ、これ。せっかく俺たちが成長できる機会だって話しなのに……」


「でも、レンフォード卿に逆らうなんて……」


「だよな。合同授業であの魔術を見た後だと、さすがに怖くて何も言えないぞ」


 ――と、口々に怒りを呟いていた。


 それでも、俺という圧倒的実力者に逆らうことなど怖くてできないという空気が場を支配しており、誰も直接は物申してこない。

 そんな異様な空気が蔓延する中、ついに動いたのは外でもないルークだった。



「どういうことですか、聞いていた話と違います! 魔物との戦闘は僕たちに任せてもらえるんじゃ……それに報酬だって――」



 ニヤリと笑みを浮かべ、俺は満を持したとばかりに振り返る。


「ほう、ようやく気付いたのか。随分と遅かったな」


「っ、どういう意味ですか!?」


「まだ分からないのか? 俺がなぜ、今回貴様たちの案内を引き受けたかを」


「っ!? まさか……!」


 そうだ、そのまさかだ。

 満を持して、俺は己の企みを余すことなく披露する。


「貴様たちも知っての通り、このダンジョンは一年をかけて内部で成長しており、豊かな報酬が獲得できるのは一年を通してたった一回――すなわち今回のみ。本来であれば、それらは全て貴様たちのものになるはずだった。それを知った上で、俺は案内人として参加することに決めたんだ。貴様たちから全ての報酬を奪い、独占するためにな」


「っ!」


 予想はしていても本当にそうだったとはと言わんばかりに目を見開くルーク。

 同時に、俺の答えを聞いた学生たちが騒然となる。


「酷い……! 聖人だという噂は全部嘘だったのか!」


「なんて悪辣な……!」


「同じ人間と思えねぇよ!」


 口々に飛び出す非難の声。

 それを受け、俺の胸に湧き上がる暖かい気持ちがあった。


 ――この感触、これだ! これこそが俺の求めていたものだ!


 全員から敵意を向けられるという、待ち望んでいた展開に満足感を抱いていると、ルークが剣を抜き、真っ直ぐに俺へと向ける。


「ふざけるな! そんなことは絶対に許さない! せめて他の人たちが魔物を倒せるよう、何としてでも僕が時間を稼いでみせ――」


「残念だが、決断が遅かったな」


「何……っ!」


 言いながら、俺はゆっくりと魔力を練り上げる。

 その威圧感に、ルークを含めた全員がその場に圧倒されていく。


「この間にも既に、ダンジョン内に存在する全魔物の位置は把握してある――どういう意味か、分かるな?」


「や、やめ――――」


「【駆け巡る雷光《サーキュレイト・ライトニング》】」


 唱えた瞬間、俺の手から放たれた雷魔術が、学生たちを避けながらダンジョン中を駆け巡っていく。

 火力はある程度抑えているとはいえ、この程度のダンジョンに出現する魔物を仕留めるには十分。

 雷光が瞬く間に討伐した魔物は、おそらく100体を優に超えるだろう。


 しかも、なんと遅れてレベルアップの感覚までやってくる。

 低ランクダンジョンとはいえ、15人が入手する予定だった経験値を全て独占できたのが大きかったのだろう。これは嬉しい誤算だった。


「これで無事に全て討伐できたようだな」


「そ、そんな…………」


 絶望に打ちひしがれるルークと学生たち。

 非難の言葉が次々と飛び出してくる。

 これだけでもまさに望外な結果だが、作戦の本命はここからでもある。


「哀れだな、ルーク。貴様は今後一年、そのように這いつくばり続けることとなるだろう」


「……どういうことだ?」


「決まっているだろう? 貴様たちも知っての通り、俺は会長選に出馬している。俺が会長になった暁には、この学園に存在する全資源を俺のものとして独占させてもらう」


「なっ!?」


 目を丸くしたルークは、続けてキッと俺を睨みつけてくる。


「クラウス・レンフォード、貴方はいったい、どれだけ邪悪な心をしているんだ……!」


 ほう、邪悪な心の持ち主という評価にまで至ったか。

 かつてない手応えを感じながら、俺はさらに続ける。


「どうしても防ぎたいのであれば、そうだな――貴様も会長選に立候補し、俺から会長の座を奪ってみせるといい。もっとも、そのような有様では到底不可能だろうがな」


 一拍置いて、俺は踵を返す。



「それでは俺の役目はこれで終わりだ。まだこのダンジョンに用があるのなら、好きに探索でも討伐でもするがよい――もっとも、お前たちにそれが可能ならばの話だがな」



 それが不可能だと分かっていながら言い残したのち、俺はその場を後にする。

 すると、全員の憎しみの籠った視線が背中に突き刺さる。

 ああ、なんと心地よい感触だろうか。


 まさに完璧な対応だった。

 悪逆非道の宣言、ルークへの挑発、そして会長選を通じた因縁の種まき。

 全てが計画通りだ。


 充実感に満たされたまま、俺はそのままダンジョンの出口へと向かっていき――


「が、はっ……」


「ん?」


 ――不意に、仄暗い洞窟のどこかから痛みを堪えるような声が聞こえた気がした。


 しかしルークたちには直接ダメージを与えたわけではないし、大方、あれだけの絶望を味わわされて誰かしらの声が漏れてしまったというところだろう。

 そう結論を下した俺は、「はーはっはっは!」と高らかに笑いながら、ダンジョンを後にするのだった。

皆様に大切なお知らせがございます!


一昨日、9月11日(金)、本作のコミカライズ版第1巻が発売されました!

村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいており、皆様にも楽しんでいただけること間違いなし!

紙版、電子版、どちらでも嬉しいので、ぜひ手に取っていただけると幸いです!


さらに昨日、9月12日(土)には、小説版第3巻が発売!

『第四章 王都編』の清書版が先行して掲載されており、もきゅ先生による素晴らしいイラストも載っています!

ぜひぜひWeb版とあわせ、小説版、コミカライズ版も楽しんでいただけると幸いです!


次回は来週、9月20日(日)更新予定。

どうぞお楽しみにお待ちください!

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コミックス第1巻発売中!

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