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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第四章 王立学園編

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90 先達の期待に応えよう!

 進級初日から、授業はフルスケジュールで進行した。

 午前中は主に座学となっており、本日の内容はソルスティア王国の歴史について。

 建国神話やそこに登場する伝説のアイテムにまつわる話が延々と続いていたが、退屈のあまり脳内で今後の計画について考えていたら、いつの間にか終わっていた。


 具体的には、どうやって学園内に恐怖を広めるか、どのボスキャラと先に関係を持つべきか、天空ダンジョンの攻略をいつ行うか、そういった重要事項を検討していたわけだ。

 有意義な時間の使い方だったといえるだろう。


 そういえば、建国神話の途中でエレノアが「もしかして、あの指輪は……」みたいに意味深なことを言っていたような気もしたが、まあ大したことではないだろう。

 どちらにせよ授業を聞いていなかった俺には何のことか分からないため、即座にそう判断を下した。


 午後からは選択講義となっており、武闘鍛錬と魔術演習のうち、俺は後者を選択した。

 すると、



「そんな、せっかく再びクラウスくんの剣技を見れる機会だと思っていたのに!」



 武闘鍛錬を選択したエレノアが廊下で嘆いていたが、それはさておくとして。

 魔術演習の講義は屋外の巨大演習場で行われた。

 内容は長期休暇でどれだけ成長できたか――あるいは鍛錬をサボっていたかを調べるため、一人ずつ得意の魔術を的に向けて放つというものだ。


 俺は腕を組みながら、次々と魔術を発動していく他の学生たちに視線をやった。


「【ファイアボール】!」


「【ウィンドカッター】!」


「【アイスランス】!」


 しかし、それらを観察する俺の率直な感想はといえば――


(……平均的に、火力がかなり低めだな)


 ゲームで主に舞台となるのが主人公のいる一学年であり、二学年にネームドキャラが数人しかいないという理由も影響しているのだろう。

 とはいえ、そんな中でも群を抜いた存在はいるというもの。


「次はアリエル様だぞ」


 誰かの声に応じるようにして、アリエルが演習場の中央へと歩み出る。


「ふぅ」


 彼女はしばし目を閉じ、静かに魔力を練り上げた後、両手を前に差し伸べた。


「【聖域の光(セイクリッド・フレア)】」


 刹那、眩い白銀の光が演習場に満ちる。

 放たれた魔術は的に命中すると同時に、周囲の大気を清めるような残光を散らしながら消えていった。


 さすがは武闘部門1位のエレノアに対し、魔術部門1位のアリエルというべきか。

 その美しさと火力の両立に、周囲がどっと沸いた。


「さすがアリエル様……!」


「なんて美しさなのかしら……!」


「やっぱり次期生徒会長はアリエル様で決まりだな!」


(……生徒会長か)


 その言葉を耳にした瞬間、俺の頭の中に第一章のメインイベント――【生徒会長選】が浮かび上がってくる。


 王立学園の生徒会長は前期に選ばれる。

 基本的に立候補を行うのは二年生なのだが、原作では幾つかの理由から主人公も参加することになっていた。

 聖女アリエルや、他にも強力なライバルたちと凌ぎを削りつつ、最後には会長選当日にアリエルを乗っ取った邪神を討伐したことで全学生から歓迎を受け、見事会長に就任するのだ。

 会長としての特権や責務がその後の主人公の強化に繋がるため、非常に重要なイベントだ。


 そんなことを考えていると、演習を終えたアリエルがこちらに戻ってくる。

 俺は素直な気持ちで称賛の言葉を口にする。


「なかなかの魔術だったぞ」


「ありがとうございます。とはいえ、クラウスさんの前で披露するには拙かったかと……」


「……ふむ」


 アリエルが照れくさそうに微笑みながらそう告げるが、ラスボスとして君臨する(予定の)俺に対し、最初のボスであるアリエルが劣っているのは当然のこと。

 そう考えていると、続けてすぐに俺の名前が呼ばれた。

 アリエルは両手を胸の前で組み、期待するような視線を向けてくる。


「ぜひ後学のため、クラウスさんの魔術を拝見させていただきますね」


「――ほう」


 本来ならこのような授業、適当にやり過ごそうと考えていたところだ。

 しかし、偉大な先達からの要請とあってはそうもいくまい。


 俺は気を引き締め直すと、眼前の的を見据えた。


「【地を割る落雷エクスプロード・サンダー】」


 俺が力強くそう唱えると、上空から降り注いだ極太の雷柱が、目標の的を中心に轟音とともに着弾する。

 直後、目標はおろかその周囲に並んでいた的までことごとく消し飛ばした。


 一瞬の沈黙の後、演習場が騒然となった。



「嘘だろ!? なんて威力だよ!」


「しかもただでさえ高難度な雷魔術を、こんな晴天の下で成功させるなんて……」


「こりゃ、会長選の先行きも分からなくなってきたな!」



 盛り上がる面々を横目に、俺は元の場所へと戻る。


「……素晴らしいです、クラウスさん。あのような規模の雷魔術を、これほど容易く……」


 アリエルが柔らかな笑みとともに称賛の言葉を送ってくる。

 こちらとしてはただ魔術の力を最大限に引き出したまでだが、彼女の反応を見るに、ラスボスとしての威厳は十分に伝えられたようだ。


 俺は満足感と共に頷くのだった。



 ◇◆◇



 そのまま流れるように魔術演習が終わり、放課後へと移る。

 別棟で従者用の授業を受けていたマリーと合流した俺は石畳の通りを歩きつつ、簡単に今日あったことを伝えていったのだが――


「エレノア様に、アリエル様ですか……」


 どういうわけかその二人の話題になった途端、マリーはピクリと肩を震わせたかと思えば、どこか遠くを見据えるように目を細めた。

 何やら異様な圧を放つ彼女を見ながら、俺はその理由を推測し――ようやく一つの答えに辿り着く。


 エレノアとアリエルの共通点といえば、学年2トップを誇る実力者たち。

 そして先日の【冥府の大樹林】にて、マリーはソフィア、セディーア、リンシアといった実力ある協力者を集い、夜襲を仕掛けてきたことがあった。

 恐らくはあの時のように、エレノアやアリエルも協力者にできないか考えているのだろう。


 暗殺者として相応しい思考回路だと感心していた、次の瞬間。


「こんなところにいたのか、クラウスくん! こちらの講義を終え教室に戻ったら既に帰ったとのことだったので、随分と探したぞ! さあ、一緒に鍛錬を――む?」


 その声と共にやってきたのは外でもない、たった今話題に出ていたエレノアだった。

 しかし彼女はマリーを見た途端、何かに気付いたように眉を潜める。


「君は確か……マリーくんだったか?」


「……はい。お久しぶりです、エレノア様」


 驚くことに、二人は既に既知の仲のようだった。


(まさか俺の知らぬ間に、既にマリーからコンタクトを取っていたということか……!?)


 これはさすがに、俺の予想を上回る展開だ。

 マリーの暗殺者としての圧倒的成長に内心で驚愕する。

 これは今後、さらに警戒を強める必要がありそうだ……


 そう気を引き締め直したその時、



「――――お会いしたかったですわ、クラウス様!」



 畳み掛けるように、もう一つの声が空高く響く。

 振り返ると、そこにいたのは純白の長髪と宝石のような青色の瞳を持つ少女――ソフィア・フォン・ソルスティアだった。

王女様も再登場!

どんどん盛り上がってきましたね!



そして幾つか告知がございます。

今月、なんと本作の小説版第3巻および、コミックス第1巻が発売となります!


小説版第3巻は9月12日(土)発売予定。

コミックス第1巻は9月11日(金)発売予定となっております。

小説版は早めに並ぶところも多いようなので、11日に両方揃っている書店様も多いと思います!


小説版、コミックス版、ともに最高のクオリティに仕上がっております!

小説版はエレノアとアリエルの嬉しい番外編が(カラーイラスト付き!)、コミックス版は村上メイシ先生による嬉しいおまけ要素が満載となっております!

紙版、電子版、どちらでも嬉しいのでぜひお手にとっていただけると幸いです!!



最後にWeb版ですが、次回は9月8日(火)12時頃、更新予定です。

どうぞ楽しみにお待ちください!!

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