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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第四章 王立学園編

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89 先達に敬意を示そう!


「おい、今の聞いたか? 資格を得たらレンフォード領に向かいたいって……」


「ああ、そういうことだよな」


「そんな、エレノア様……私たちの憧れだったのに……」



 教室中が一気に沸き立ち、様々な声が飛び交い始める。


「な、なんなんだ突然」


 その中心にいるエレノアはというと、想定外の反応に目を白黒させていた。


 一方、俺もまた、エレノアの発言の意図について考えていた。

 今の発言をそのまま受け取るなら、彼女は一つを除き最終奥義を全て会得した暁に、俺のいる領地へ押しかけるつもりだということになる。


(それはつまり、さらなる実力をつけた上で俺に剣で挑んでくるという意味か?)


 なるほど、喜ばしい話ではないか。

 将来ラスボスとして君臨する俺に、真正面から剣で挑んでくる剣姫――これ以上のヴィランとヒーローの関係があるだろうか。


 そんな考えに浸り始めていた、その時だった。



「いけませんよ、エレノア。クラウスさんが戸惑っているではありませんか」



 柔らかく透き通るような声が、騒がしい教室の空気を一瞬静めた。


 俺はその声の主に視線を向け――思わず目を見張った。


(コイツは……!)


 きらきらと輝くピンク色のロングヘア―に、ぱっちりと開かれた翠の瞳を持つ美しい少女。

 白と黒を基調とした改造制服からは豊かな胸元が浮かび上がる。

 綺麗な容姿と均整の取れた体を持った彼女に、俺は心当たりがあった。


 そんな俺の前で、少女はにこやかに語りかけてくる。


「こうしてお目にかかるのは初めてですね。私はアリエル・ジ・エル・フロレンツィアと申します。クラウスさん、どうかお見知りおきください」


 当然、その名前は知っていた。

 アリエル・ジ・エル・フロレンツィア。

 メインキャラクターの一人であり、エレノアの親友でもある。


 隣国フロレンツィア公国大公の娘であり、半年前より王立学園に留学中。

 『聖女』という二つ名を持つ圧倒的な実力者であり、学年成績はエレノアと並んでの2トップ。

 だが、俺がこの名前に反応した理由は、そのような当たり障りのない情報によるものではなかった。

 それ以外にもう一つ、俺にとって歓喜すべき情報があったからだ。


 ここで一つ、エレノアのことを振り返ってみよう。

 彼女は『アルテナ・ファンタジア』に登場するメインヒロインの中で唯一の先輩キャラ。

 ということはつまり、目の前にいるこれだけの美貌と実力を持った彼女が、メインヒロインには含まれないことを意味する。

 では、アリエルはいったいどのような役割を担っているのか。



 答えはズバリ――ボスキャラだ!



 それも第一章の最終ボスという、プレイヤーが初めて相対することになる強力な存在である。

 ボスとはいえ、現時点の彼女が邪悪な心を持っているわけではない。

 むしろ聖女と呼ばれるにふさわしい清らかな持ち主だが、それが問題だった。


 聖女として周囲の期待を一身に背負い、懸命に励む彼女。

 しかしその重さに押しつぶされそうになっているところに目を付けたのが、邪神の一人だった。

 奴はアリエルの体を乗っ取り、主人公たちへと牙を剥く。

 その実力たるや初期段階の主人公たちにとっては相当な難敵で、数あるボスキャラの中でも俺の記憶に強く刻まれた一人だった。


 さらに戦闘の最期には、敗北を悟った邪神の悪あがきで、学園中の施設が破壊されるという壮絶な幕引きまで演じてくれる。

 アリエル本人の意志ではないとはいえ、その一件の責任を取る形で彼女は留学を打ち切り公国へと帰還。

 第二章以降、その姿が学園に戻ることはなかった。


 ――――そんなアリエルに対し、俺が尊敬の念を抱くのは当然だった。


 一応、ボスキャラでいうと過去にはマルコヴァールとも出会ったことがある。

 奴は奴で邪悪な振る舞いがとても魅力的だったのだが、大きな欠点が幾つもあった。

 一つは、複数あるルートのうちたった一つのルートにしか登場しないこと。

 もう一つは、邪悪ではあるものの実力自体は低く、ボスとしての格が足りていなかったこと(それでもエピローグの一文で死ぬクラウスよりは圧倒的上だが)。


 対してアリエルは違う。

 本人の邪悪さは不足しているもの、全てのルートに登場し、圧倒的な力で主人公たちの前に立ちはだかるのだ。

 俺が最後のボスを担うのだとすれば、アリエルはいわば最初のボスを担う先達者。

 その存在に感謝と敬意を示すのは、ラスボスとして当然の礼儀というものだろう。


 俺は迷うことなく立ち上がると、アリエルの手をしっかりと握り、真剣な眼差しを向けた。


「クラウス・レンフォードだ。アリエル、ここで出会えたことに感謝する。少しでもお前に近づけるよう、尽力することをここに誓おう」


「え、ええっ!?」


 彼女の背中を負い、最後に追い抜かし、最高のラスボスとして君臨してやるという宣言。

 直後、なぜか周囲が再び賑わい始める。



「既に侯爵である身だって話だから横暴に振舞うかと思っていたら、聖女とはいえ一学生にこれだけ腰を低く接するなんて……偉大なお方だ」


「当然だろ、知らないのか? レンフォード侯爵がこれまで成し遂げてきた善行の数々を!」


「そんなまさか……レンフォード卿の本命はアリエル様だったのか!」


「となると、エレノア様とアリエル様による争奪戦になるのか!?」


「い、いえ、私は騎士エレノア様と聖女アリエル様、お二人が一緒になる可能性も捨てきれません……!」



 何やら盛り上がる声の数々。

 しかし、俺の意識はとっくに次のことへと向かっていた。


(そうだ。物語の舞台となるここならば、主人公たちの他にボスにも出会うことができる。最高のラスボスとして君臨するため、彼らかは色々と学ばせてもらうとしようではないか!)


 改めて、意識を新たにする。

 こうして、俺の王立学園生活が幕を開けるのだった。

新キャラ登場!

アリエルのビジュアルが気になる方は、ぜひ本作の書籍版第3巻の表紙を調べてみてください。めちゃくちゃ美しくて可愛い!


次回は9月6日(日)12時頃、更新予定です。

どうぞ楽しみにお待ちください!!


それから本作のコミカライズ版が、現在ガンガンONLINE様にて連載中となっております。

村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいているので、楽しめること間違いなしです!

この機会にぜひご一読ください!

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