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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第四章 王立学園編

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88 プロポーズ

 エレノア・コバルトリーフ。

『アルテナ・ファンタジア』に登場するメインヒロインの一人だ。


 一子相伝のコバルトリーフ流を扱う剣士であると同時に、主人公と並び作中最強キャラの一人に数えられる存在である。

 そして何を隠そう――俺が使用する剣技もまた、原作の彼女を参考に磨き上げたものだった。


 エレノアはメインヒロインの中で唯一の先輩キャラ。

 なればこそ、クラウスと同い年でありこの教室にいるのも納得だ。

 ただ、理解できない点が一つあった。


「お、おい、エレノア様がいきなり話しかけたぞ」


「あの剣姫が自分から異性に話しかけるなんてめったにないのにな。しかもめちゃくちゃ親し気だし」


「あの二人、いったいどういう関係だ?」


 俺がそこにいた人物を認識した直後、教室中に疑問の声が広がっていく。

 奇しくもそれは、俺が抱いた疑問と全く同じものだった。


 必死に記憶を遡ってみても、王立学園に通っていたほんの一週間の中で、クラウスがエレノアと深く関わった記憶はない。

 にもかかわらず、どうして『待っていた』などという言葉が出てくるのか。

 そう考えているうちにもエレノアはこちらに迫り、テンションの上がった様子で話しかけてくる。


「私はずっと、君に感謝を伝えたかったんだ」


「なに?」


「覚えているだろうか? 数か月前、君がブラゼク伯爵を倒した時のことを」


「……いや?」


「なっ!?」


 驚いた声を上げるエレノアだが、ブラゼク伯爵なんて言われても心当たりがない。


(……いや、待てよ?)


 しかしここで俺は、似た名前を見た覚えがあることに気付いた。

 確か原作メインヒロインの一人、クロエルートに登場する、邪神に体を乗っ取られて敵対することになる無様な小ボスの名前がブタデブ伯爵とか、そんな感じだったような――


「ほ、本当に覚えていないのか!? 君が刃の潰れた剣一本で、少女を救ったあの日のことを!」


「っ」


 言われて思い出す。

 確かに前回、王都にやってきた時に貴族らしき男をボッコボコに倒したことがあった。その時のことを言っているのだろう。


 ようやく誰のことを言っているのか分かったが、もはやそんなことはどうでもよかった。

 それよりも重大なことがある。


「なぜ、それをお前が知っている?」


「簡単な話だ。私は見ていたんだ――君がコバルトリーフ流剣術を使い、相手を圧倒する姿を!」


「………………」


 やはりそうだったか、と腑に落ちる。

 となると、一子相伝のコバルトリーフ流剣術をなぜ俺が使えるのか、問い詰めようとしているのだろう。


 それに対し、俺が動揺する――――わけがなかった!


 なぜか。そもそも俺が学園にやってきたのは、未来のラスボスとして主人公陣営と因縁を生み出すためだ。

 そう考えれば、これはむしろ大チャンスではないか!

 返答次第では、俺は一子相伝の秘伝を横から掠め取った最低最悪な人間だと思ってくれるはず!


 となると、さっそく相応しい返答を考えなくては。

 確かコバルトリーフ流剣術は代々秘伝書を引き継いでいるはずなので、それを奪い去ったと主張するのはどうだろうか?

 ……いや、残念ながら秘伝書は今手元にない。この案は通用しないだろう。


 くそっ、こんなことになると分かっていたら、昨夜のうちにでも侵入して奪っておいたのに!


 そんな風に必死に頭を回転させていた最中、俺は「ん?」と一つの違和感を覚えた。


「待て、なぜそれが俺への感謝に繋がる?」


「決まっているだろう。君の使うコバルトリーフ流剣術――その洗練された剣技を参考にすることで、私も強くなることができたからだ! 父上から秘伝書も引き継ぎ、今では最終奥義も3つ使えるのだからな!」


「なんだと?」


 衝撃的な内容だった。

 まさかの理由により感謝されていたことにショックを受けるが。しかしそれと同時に、確かな歓喜がこの胸に湧き上がるのを感じていた。


 というのもだ。

 俺がこれまで、わざわざ自分自身の手でソフィアを鍛え上げてきたのはなぜか。

 それは将来、最強のヴィランとして君臨する俺に立ち向かってくるであろう主人公陣営の彼女たちが、相応しい実力を持っていてほしかったからだ。


 当然、それはソフィアだけでなくエレノアも同様。過程はどうあれ、彼女が強くなっているという事実は素直に喜ばしい。

 そう考えている俺の前で、エレノアは続ける。


「とはいえ、この程度で満足する私ではない。この調子で鍛錬を重ね、最後には君がコバルトリーフ流剣術を知ることになったきっかけであろう試練も受けるつもりだ。秘伝書によると、あそこの試練はトップクラスの難易度みたいだからな」


(俺がコバルトリーフ流剣術を知ることになったきっかけ? 何のことだ?)


 よく分からないが、何やらエレノアが盛大な勘違いをしていることだけは分かった。

 どう訂正すべきかと考えかけた、その時だった。



「だからこそクラウスくん、君に一つ大切な頼みがある。私が他の最終奥義を全て手にし、資格を得たその暁には――――君のいるレンフォード領へ向かうことを許してくれないか」



 一瞬の沈黙が教室を満たす。

 のちに、これまで固唾を呑んで様子を眺めていたはずの生徒たちが堰を切ったように沸き立ち、


「「「わぁああああああああああああああああ!!!」」」


 教室全体が一瞬にして賑わいに包まれるのだった。

わーい。

次回、新キャラ登場です!


次回は9月5日(土)12時頃、更新予定です。

どうぞ楽しみにお待ちください!!


それから本作のコミカライズ版が、現在ガンガンONLINE様にて連載中となっております。

村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいているので、楽しめること間違いなしです!

この機会にぜひご一読ください!

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