85 領都を完全破壊しよう! ①
「領主様、今日出発されるんですよね! 王都でもご活躍をお祈りしております!」
「この町のことはお任せください! 必ず盛り立ててみせます!」
「どうかお体に気をつけて! 私たちはいつでもここで応援していますから!」
翌日早朝。
領都は盛大な賑わいを見せていた。
しかし今回ばかりは、いつものように領民たちが勝手に集まってきたわけではない。
他ならぬ俺自身が、領民全員に外へ出るよう指示を出したのだ。
城壁の上からその光景を眺めつつ、俺はニヤリと笑みを深める。
(よし、いいぞ。コイツら全員に生き証人となってもらうとしよう)
ちなみに俺の隣には、見知った面子が揃っていた。
専属メイドのマリー、執事のオリヴァー、妹のリーゼロッテ、その護衛メイドのカミラ、そして(元)邪神のミリカトル。
なお、ローラやレインといった騎士・警備兵組は、賑わいが過剰になることを警戒し周辺警備に回っている。
「お兄様の呼びかけ一つで、まさか本当に領民全員が応じてくれるだなんて……素晴らしいです、お兄様!」
リーゼロッテが目をキラキラと輝かせながら言うと、なぜかマリーが「ええ、まさにご主人様らしいお振る舞いですよね」と自慢げに賛同する。
するとリーゼロッテがさらに「本当にその通りです!」と強く同意して、二人が視線を交わして微笑み合っていた。
どうやらこの一週間、マリーからリーゼロッテに俺に関する様々な情報が流れていたようで、その際にすっかり仲良くなっていたらしい。
もっとも、記憶がほとんどないからどんな話をしていたかまでは分からないが。
そんな二人の会話を聞きながら、俺はほくそ笑む。
今はそれでいい。
二人を含め、すぐにこの歓声が阿鼻叫喚に変わるのが楽しみで仕方がないのだから。
そんな中、オリヴァーが問いかけてくる。
「それでクラウス様、どうしてこのように領民全員に招集をかけられたのですか?」
「出発の前に、昨夜作り上げたこれを披露してやろうと思ってな――ミリカトル」
「うむ」
目の下に隈を作ったミリカトルが、人の高さを超える巨大な固定砲台を取り出す。
「そ、それは……!」
その姿を見て、オリヴァーが息を呑んだ。
そう、これこそ昨夜から今朝にかけてミリカトルに命じ一晩で作り上げさせた、【特殊固定砲台・改】をさらに進化させた新バージョン。
その名も――
「【特殊固定魔力砲台・改改】だ!」
「相変わらずネーミングセンスがださ……って痛い痛い! 角を掴むでないわ! これを一晩で作り上げてやったのが誰と思っておるんじゃ!?」
「うるさい」
ふんがー! とミリカトルが怒鳴り散らす。
もっと痛めつけてやりたいところだが、完成時に名前を発表した際にもまったく同じ反応をしたためさんざん痛めつけた記憶が新しい。今回は許してやることにする。
と、そういったやり取りはさておき、改めて【特殊固定魔力砲台・改改】の性能について振り返っておこう。
通常版の【特殊固定砲台】は火力と連射性のバランスが取れた標準仕様。
続く【特殊固定砲台・改】は圧倒的火力を有する代わりに連射能力を失い、単体攻撃特化の仕様となっていた。
対してこの【特殊固定魔力砲台・改改】はというと、【特殊固定魔力砲台・改】と同等の破壊力を持ちつつ、一度放った魔力砲撃を空中で分散させ複数の対象に同時攻撃できるという、圧倒的な汎用性を有している。
なぜわざわざこれを生み出したのか。理由は単純。
そう――今からこの【特殊固定魔力砲台・改改】を使い、この領都を完全に破壊するのだ!
特大の砲撃を空中に解き放った後、各施設や家屋に目標を設定し分散させる。
するとどうなるか。 凄まじい火力を持った数百のレーザーが流れ星のように降り注ぎ、この領都を端から端まで焼き尽くすのだ。
これぞまさに悪事中の悪事。原点極致の体現だ。
ちなみに領民たちを外に呼び出したのにも理由がある。
屋内にいた場合の巻き込みによる大量虐殺となれば王都が黙っておらず、逮捕されて学園に通えなくなるリスクがあるためだ。
その点、施設の破壊に留めればそういった横槍も封じられる。
まさに完璧な作戦だ!
「お兄様」
そのタイミングで、リーゼロッテが問いかけてきた。
「それはもしかして、領民たちが話していた【特殊固定砲台】と【特殊固定砲台・改】をさらに改良したものですか? 一体どのような効果を……」
「気になるか? ならばすぐに見せてやろう」
「は、はい!」
リーゼロッテの目が輝く。
その期待に満ちた眼差しに応えるように、俺は【特殊固定魔力砲台・改改】に大量の魔力を注ぎ込み充填させていく。
そして、眼下に集まった領民たちに向けて大きく叫んだ。
「よーく見ておけ! これが俺の本当の姿だ!」
次の瞬間、解き放たれた砲撃が遥か上空へと飛翔する。
そして俺の目論見通り、宙で無数のレーザーへと分裂した。
すると、歓声を上げていた領民たちに疑問の声が混じり始める。
(――よし、あとはあれが降ってくれば……)
勝利を確信した次の瞬間だった。
領都とレーザーの群れの間に、突如として大量の黒い影が現れる。
そしてその直後、
「大変です! Aランク魔物アブソーブ・ドレイクの群れが襲撃してきました! アブソーブ・ドレイクは周囲の魔力を自身に誘導し吸収する超強力な魔物! 並大抵の攻撃では通用しないばかりか敵の強化に繋がってしまうため、超火力の一撃で倒し切るのが必須となります! そんな火力をこの群れの数だけ同時に発動する手段などあるはずがないのは重々承知! それでも、それでも主様なら――!」
城壁の外で警備に務めていたはずのローラの叫び声が響き渡った。
こ、このパターンは……!
次回は8月30日(日)12時頃、更新予定です。
どうぞ楽しみにお待ちください!!
それから本作のコミカライズ版が、現在ガンガンONLINE様にて連載中となっております。
村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいているので、楽しめること間違いなしです!
この機会にぜひご一読ください!




