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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第三章 冥府の大樹林編

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75 レンフォード防衛戦

 数日前。

 彼、オルト・ウィンダムはクラウスからの言葉――


『そうか、ならば一つだけ忠告だ。その目から光を失わぬよう、せいぜい気を付けることだな』


 ――その忠告を受けた後、秘密裏に調査を進めていた。


 彼はその地位と立場を利用し、マルコヴァール辺境伯の周辺に位置する貴族たちから無数の情報を集める。

 その中で、とある動きを発見した。辺境伯を中心とした勢力がレンフォード領へ攻め込もうとしているというのだ。


 問題はこの情報をどう扱うかという点だった。

 初めはクラウスに直接伝えるべきかと考えたものの、ウィンダムはすぐに考えを改めた。


(当然、レンフォード卿が知っているということは、レンフォード領に待機している領主代理のオリヴァー様も知っていることでしょう。しかし......)


 妙な直感が働き、レンフォード領に赴いた際に知り合っていたオリヴァーに伝達魔術を送ってみる。

 すると驚くことに、彼らはその件について初耳だという。

 そこでウィンダムは、自分がクラウスから試されていたのだと悟る。


(やはり、あの時感じたことは間違っていなかったのですね)


 問題はどうやって対処するかだったが、さらに驚くことにオリヴァーは――正確には伝達魔術に混ざっていた何者かの声が、『問題あるまい! わらわに任せよ』といった形で、既に対処法があると言い始めた。

 随分と幼い少女の声だったが、果たして誰のものだったのか。

 いずれにせよウィンダムはそれを聞くや否や、彼らに合流し、侵攻へ対応することになるのだった。


 その後、事態は瞬く間に進んでいった。

 ウィンダムがレンフォード領都に到着し細かい事情を説明すると、なぜかミリカトルという名前のリボンを二つ付けた赤髪の少女を中心に迎撃部隊が発足される。

 なぜ彼女が中心であるのかは分からなかったが、彼女の言葉が絶大な説得力を持ち、周囲も素直に従うという不思議な状況だった。


 結果、侵攻が始まると予測された当日。

 レンフォード領とマルコヴァール領の境界線には大量の領民が集まっていた。

 領主代理のオリヴァー、赤髪の少女ミリカトル、レンフォード騎士団、さらには冒険者を含む有志が大量に集結していたのだ。


(まさか、貴族や平民問わず、これだけの人数が集まるとは……)


 不在ながらも、クラウスの徳の高さと信頼ぶりが窺えるほどだった。

 そうして様子を窺っていると、予想通り――マルコヴァール領から大量の貴族や騎士、それから巨大な人型の魔導騎兵が数十体やってくる。

 かくして、それぞれ領主不在のまま、レンフォード領とマルコヴァール領の戦いが幕を開くのだった。



 ◇◆◇


 

 マルコヴァール領側のリーダー――普段はマルコヴァールのイエスマンとして働く文官のゴードンは、予想していなかった光景に眉を潜めた。


「なっ、迎撃の準備を整えているだと!? いったいどこから情報が漏れた……否、いずれにせよ問題はない!」


 言いながら彼が取り出したのは、円盤状の特別な魔道具。

 魔導騎兵ゴーレムと同様、マルコヴァールが秘密裏に研究を進めていた周囲の魔物を操ることができるアイテムだった。

 【冥府の大樹林】のような濃密な魔力が支配する空間では使用できないが、この程度の平原であれば問題ないと、今回の襲撃の溜めに手渡されていた。


「まずは数を減らさせてもらうとしよう。ゆけ!」


 男の言葉と共に、背後から大量の魔物がひしめき出てくる。


「ガルゥ!」


「シュー!」


「ルァァアアアアア!」


 一体一体の実力は決して高くないとはいえ、数百を超えると厄介であることは間違いない。

 しかしそれだけの驚異的な数を前にして、ミリカトルは落ち着いたまま状況を観察していた。


「ふむ。以前の魔物大暴走(スタンピード)でわらわが使った魔術と似ておるな」


 その呟きに反応したのは金髪の青年、レインだった。


「なら、逆にこちらが支配権を奪うことも?」


「無論、わらわの手にかかれば可能じゃ! ……もっとも、そうする必要はないかもしれんが……」


 呟きながら、ミリカトルは前方に視線を向ける。

 するとそこには、領主代理のオリヴァーや、参謀役であるミリカトルの判断を待たずしてすでに戦闘を始める面々の姿があった。


「主様の名を語る栄誉を頂いておきながら、外敵の侵入を許すわけにはいかぬ! レンフォード騎士団一同、気合を入れろ!」


「「「はっ!」」」


 レンフォード騎士団長であるローラの檄によって士気を上げながら、騎士たちが猛攻を仕掛けていく。

 さすがは領内きっての戦力というべきか、瞬く間に魔物たちを斬り倒していった。


「俺たちも続くぞ! 俺たちのような冒険者(荒くれ者)をここまで大切にしてくれる領地なんて他にねぇ! 俺たちの居場所を全力で死守しろ!」


「「「おう!!!」」」


 続けて、元からレンフォード領にいた者、移住してきた者を問わず、冒険者たちが一斉に攻撃を仕掛けていく。

 対魔物においてはさすがの歴戦っぷりで、騎士団に匹敵する速度で魔物を葬っていった。


「僕も出るよ……それが、力を与えられた者の責務だと思うから」


「ヴァイス様、どうかご無事で」


「もちろんさ、リュディ。僕は君と、君のいるこの場所のために戦うと誓ったから……!」


 少し前、【特殊固定魔力砲台(キャノンバレル)】を使う中で自身が持つ魔術の才に目覚め、貴族令嬢と婚約するに至った青年が浮いた魔物を魔術で仕留めていく。

 そして最後には、


「確かに問題なさそうですが、ただ様子見しているわけにはいきませんね。私も参ります!」


 彼らに感化されたレインが参加し、一振りごとに十を超える魔物を葬るという一騎当千の活躍を見せ始めた。

 その光景を前にミリカトルは感心と驚きが入り混じった様子で頷いていた。


「うーむ。初めて見た時から思っておったが、やはりあやつだけ実力が飛びぬけておらぬか? ポテンシャルだけなら、クラ――」


「ば、馬鹿な! 領主本人だけならともかく、なぜ片田舎に過ぎないレンフォード領にこれだけの戦力がいるというのだ!?」


「――む?」


 ミリカトルが言い終わるより早く、次々と魔物が葬られるのを見た敵陣が声を上げていた。

 ここまで圧倒されるのは、彼らにとっても想定外だったのだろう。

 しかし、敵は諦めてはいなかった。


「い、いや、まだだ! 我らの手にはまだ、マルコヴァール様から下賜された魔導騎兵ゴーレムがあ――」


「最後の魔物を倒し終えたぞ!?」「これで敵は全部か!?」「いや、まだ変なデカブツが残っているぞ!」「かかれ!」


「――なぁぁぁあああああ!?」


 これだけの過剰戦力を前に、もはや量産機ごときでは相手にもならなかった。

 戦況はそのまま一方的に進行する。

 そして決着がついたかと思われた次の瞬間――


 ドドドドドドドドドドド!


「っ、なんだ!?」


「地面がいきなり揺れて……」


 突如として地響きが生じた。

 それも少しずつ規模と音量が増していく。

 この場にいる全員が一斉に音のする方向を見ると、そこには一体の巨大な魔物――全長20メートルを超える、全身が鉱石に覆われた地竜。


「あれはまさか……地核竜ちかくりゅう!? 鉄壁の防御力を誇ると言われているSランク魔物! 硬さだけならあの紅竜クリムゾン・ドラゴンにも優ります!」


「「「なっ」」」


 ローラの叫びに全員が絶句する。

 これまでの魔物とは明らかに格が違う相手だからだ。


(ここでこれだけの魔物が登場するとは想定外じゃが……)


 ミリカトルは落ち着いたまま、邪神時代の自分の封印が解けたこと、前回の魔物大暴走(スタンピード)、そして今回の戦いで発生した魔力につられてあの地核竜がやってきたのだと推測していた。

 しかし彼女のように冷静さを保っているのはほんの少数であり、さすがに味方陣営も困惑し、逆に敵側は「もうどうにでもなれ!」と竜を応援する始末。


 誰もが絶望する中、ミリカトルは笑った。


「驚いたぞ、クラウス。まさかさっそく、《《これ》》の出番がやってくるとはのう!」


 言いながら、ミリカトルは準備していた兵器を取り出した。

 それはクラウスから命令され嫌々作っていた、【特殊固定魔力砲台(キャノンバレル)】を強化させた魔導兵器。

 連射はできないが、一発だけなら超強力な一撃を放つことができ、魔物どころか周辺一帯を更地に変えてしまう程の火力を持つ。


 ちなみに本来のクラウスの目算では、その破壊力を領民に見せつけ恐怖を抱かせるために開発を命じていた領民支配用兵器だったが――


「ここら一帯に出現する魔物を倒すだけであれば【特殊固定魔力砲台(キャノンバレル)】で十分、オーバースペックにも程がありすぎる故、何かよからぬことに使おうとしているのかと企んでいたが......この状況を予測していたとは!」


 ぶるりと身震いしながら、クラウスの狙いを勘違いしたミリカトルは新兵器――【極・特殊固定魔力砲台(ジオ・キャノンバレル)】の発動準備を整える。

 発動には大量の魔力が必要となるが、今、おあつらえ向きに魔物の死体が大量に並んでいた。


「そならら! 今すぐ魔石を回収し、ここに持ってくるのじゃ――クラウスが発明したこの対Sランク魔物用兵器の元に!」


「「「はっ(おう)!!!」」」


 クラウスの名を聞いた全員が協力し、驚くほどの勢いで魔力が注されていく。

 そして100以上の魔石を使用した結果、見事に魔力は限界まで充填され――ミリカトルは迷うことなくレバーを引いた。


放射(ファイア)!!!」


 ――放たれた極太のレーザーは、見事に地核竜の胴体を貫いてみせた。


『グ、グォォォォォ』


「そ、そんな……」


 ぽとりとその場に崩れ落ちる地核竜。

 それを見届けた敵陣は、最後の希望を失ったかのように膝をついていた。

 完全に戦意を喪失していたのだ。


 その様子を確認したミリカトルは、自陣営に向けて高らかに宣言する!


「最大の脅威を排除し、敵は戦意を失った! わらわたちの完全勝利じゃ!」


「「「うぉぉぉおおおおおおおおお!」」」


 かくしてしばらくの間、この場には勝鬨が響いた。

 そして、その一部始終を眺めていたウィンダムはというと、


「何という強さ、統率力、そして気高さ……レンフォード領は決してレンフォード卿だけの領地ではなかった! この一連の出来事を陛下にご報告せねば!」


 意気揚々とそう決心し、彼はさっそく伝達魔術の準備を整えていた。


 何はともあれこんな風にして、領主クラウス不在のレンフォード防衛戦は圧勝で幕を閉じるのだった。

次回、第三章エピローグ。

8月6日(木)12時頃、更新予定。

その後は一週間ほどお休みをいただき、8月15日(土)から第四章が開始予定となります!


それから本作のコミカライズ版が、現在ガンガンONLINE様にて連載中となっております。

村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいているので、楽しめること間違いなしです!

どうぞよろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
ここまで戦力が大きいと他の貴族から危険視されて暗殺者山盛りにならね?
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