74 自領への襲撃を応援しよう!
「…………は?」
爆風の中、俺は思わず困惑の声を上げた。
少し考えれば何が起きたのかは分かる。
俺が限界まで注いだ魔力量に特別機自体が耐えられなかったのだろう。
「「「………………(ぽかーん)」」」
爆風が晴れたその場所には、まさかの光景に目を丸くする皆の姿があった。
それには敵味方問わず、なんならマルコヴァールが一番驚いているくらいだ。
「あ、ありえん……まさか、この状態で許容量を超える魔力を注いだとでもいうのですか……? いや、落ち着きなさい! 原因の解明はあと! いずれにせよ特別機を失った時点で、相手の敗北は決定したのです!」
何かを叫んでいるが、もはや周囲の反応など最早どうでもよかった。
俺の胸中はそれ以上の感情でいっぱいだったから。
(せっかく、原作でも見られなかった特別機の全力を発揮できる機会だったのに!)
原作では昏睡したクロードが核として使われていたためか、そのポテンシャルが全て活かされることはなかった。
それをせっかく俺が実現してやろうと考えていたのに……こんなのはあんまりだ!
思わず両手で頭を抱え、絶望に打ちひしがれる。
『ヴルァァァァァアアアアアアアアアア!!!』
するとそんな俺を見てチャンスとでも思ったのか、魔導生命体が雄叫びを上げながら迫ってくる。
それを前に、プッツンと俺の中の何かが切れた。
「【次元破砕】!!!」
かつてのオルトラム戦の経験から、自身でも生み出せるようになった断絶の魔力を使った奥義を発動する。
すると眩い光の奔流は、瞬く間に魔導生命体を呑み込み――呆気なく消滅した。
「ば、馬鹿なぁぁぁあああああああああ!」
響き渡るマルコヴァールの絶叫。
そして、
「これは、ゲートリンクを倒した時と同じ……なんと美しい輝きなのでしょう」
「さすがはご主人様です」
「なんという強さ……私はまだ、我が主の強さの一旦しか知らなかったのですね!」
「さすがはクラウス殿。我らが仕えるに値する存在だ!」
ソフィア、マリー、リンシア、セディーアが興奮した様子で口々に感想を零す。
それに伴い、騎士やエルフたちも「わぁぁぁぁ!」と歓声を上げ始めてしまった。
その様子を前にして冷静になった俺は、ようやく自身の失態を悟る。
怒りに身を任せて消滅させてしまったが、特別機で遊べなくなった以上、魔導生命体を支配下において一緒に街を壊した方が評価を下げられたはずだ。
このままでは、マルコヴァールの狙いを全て看破して打ち破った英雄になってしまう!
(まずいぞ……このままでは本格的にまずい!)
いったいどのように言い訳するのが一番なのか考えるも、良案が見つからない。
しかしその時、俺と同じように絶体絶命の死地に立たされているはずのマルコヴァールが、どこか吹っ切れた様子で声を上げた。
「くそっ! こうなったからには仕方あるません! せめて貴様の領地だけは我らのものとさせていただきます!」
「どういう意味だ?」
「私たちがここに攻める一方、量産機を引き連れた貴族たちをレンフォード領に向かわせているのです! さらに周囲の魔物たちに干渉して操るアイテムを渡し、今にも襲撃が開始されることでしょう!」
「……っ!」
もはや自身の敗北は確定的と悟った上で、最後の一矢を報いようとしているらしい。
しかしその言葉を聞いた俺は、むしろ喜びに満ちた気持ちを抑えきれなかった。
(これは……挽回のチャンスじゃないか!)
他領の支配に集中するあまり、自領がおろそかになったとなれば評判低下は免れないはず!
さらには領民たちが攻撃に晒されているという事実だけでも、俺の評判は地に落ちるはずだ!
マルコヴァールに心からの感謝を伝えようとした次の瞬間、
「……ん?」
突然どこから青色の鳥――伝達魔術の鳥がやってきて、俺の腕に止まる。
『届いておるか!? わらわじゃ!』
「この声は、ミリカトル……?」
そこから聞こえてきたのは、我がレンフォード家に居候している(自称)賢帝邪神ミリカトルの声だった。
いきなり何だと困惑した直後、続けて音声が鳴り響いた。
『クラウスよ、事情は把握してある! そして以前に貴様から言われていた通り、既に迎撃の準備は整っておるぞ!』
…………は?
本作はしばらく火・木・土・日の週4日更新の予定。
次回は8月4日(火)12時頃となります。
それから本作のコミカライズ版が、現在ガンガンONLINE様にて連載中となっております。
村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいているので、楽しめること間違いなしです!
どうぞよろしくお願いいたします!




