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ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜  作者: 八又ナガト
第三章 冥府の大樹林編

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73 特別機をお披露目しよう!

 数分前。

 俺――クラウス・レンフォードはゲームにも登場していた特別機の操縦席に乗り、心ゆくまで聖地巡礼を楽しんでいた。


「おおっ! 実際に乗るとこんな感じなのか……!」


 ゲームをプレイしていた時には分からなかった感覚にテンションが上がる。

 地下空間に誰もいないということで魔が差してつい登場してしまったわけだが……こうなったからには、実際に操縦してみたくなってきた。


「ちょっとだけならいいよな?」


 具体的にどうすれば動くか分からなかったので、ひとまず目の前にあるそれっぽい球体型の魔石に魔力を注いでみる。

 するとそこを軸に魔力が機体全体へと拡散されていくのが分かった。


「なるほど、こうして魔力を注いで動かすんだな!」


 そんな風に、気分が上がっていた直後――


「なぜ特別機がひとりでに起動して――いや、待て! そこにいるのは誰だ!?」


「む」


 誰かの声が響いた。

 どうやら俺がここに侵入し、特別機によって遊んでいることがバレてしまったみたいだ。

 ここにいるということは、マルコヴァールの配下であるのは間違いないだろう。


(さて、どうするか。普段なら評判を下げるべく、魔導兵器を盗むために侵入したとでも主張するところなんだが……)


 残念ながら、今目の前にいるのはマルコヴァールの関係者。悪役である彼らからの評価が下がったところで何も嬉しくはない。

 かといって、他にすべきことが思いつかない。


 どうしたものかと右手を上げて、こめかみを押そうとした直後だった。


 ポチッ


「……ん?」


 その拍子に右ひじが何かのボタンを押した。

 かと思えば、直後――


 キィィィィィィン


 特別機全体が淡い魔力を纏い、起動し始めた。


「っ! これはまさか管理者(マルコヴァール様)の元へ向かう強制システム!? 起動には大量の魔力が必要だというのにいったいどこから……! い、いや、それよりも命令もされていないのに勝手に動かすわけにはいかぬ! 待――ぐわぁぁぁぁぁ!」


 何かを言いながら、制止しようとでもしてるのかこちらに駆け出してくる男だったが、それよりも早くに特別機は魔力を周囲に拡散。

 男の体を勢いよく吹き飛ばしたかと思えば、そのまま浮上――天井を突き破り、いつの間にか空に浮かんでいた。


「おおっ! すごいじゃないか!」


 細かいことは置いておくとして、俺は特別機が無事に起動したことにテンションが上がる。

 その時、遥か下で「マルコヴァール様、申し訳ありません。侵入者の手によってたった今、特別機スペシャル・ワンがそちらに向か――」といった声が響いていたのだが、


(適当に辺りを飛んで満足したら返してやるか!)


 俺はその声に気付くことなく、自由飛行に身を任せた。




 ――しかし、その一分後。

 驚くことに目的地は俺が滞在している館だった。

 しかも館はなぜか半壊状態であり、周囲には戦いの痕が見える。


 着地後、とりあえず周囲の様子を確かめるべく、飛行中に覚えた機体操作をした次の瞬間、


「ごふぁっっっ!?!?!?」


「……ん?」


 何やら派手な音とともに、何かが勢いよく館に飛んでいった。

 どうやら動かした右腕が誰かに命中したようで、目を凝らしてみるとそれはこの魔導騎兵の開発者でもあるマルコヴァールだった。


(そういえば特別機スペシャル・ワンが飛ぶ前、男が管理者の元に向かうとか言っていたような気が……)


 いきなり動き始めたかと思えば、マルコヴァールの元に自動で向かう機能が働いていたようだ。

 そして、その本人をいきなり殴り飛ばしてしまったと。


 さらに、


「クラウス様……?」


 周囲を見回してみると、そこにいたのはソフィアや騎士たち、マリーや諜報部隊、セディーアたちエルフ族一行という大所帯だった。

 そんな中で突如として特別機に乗ったまま降り立ち、配下に加えると宣言していたマルコヴァールを殴り飛ばしてしまったわけだ。


「違うんだ」


 思わず口から零れたのは自己弁護の言葉。

 いや、その、あれだ。新しく手に入れたばかりのおもちゃで遊んでいたのを家族や友達に見られた時のような、妙な気恥しさがあったのだ。

 悪のカリスマを目指す俺らしくない言葉だとは思うが、これも仕方ないことだろう。


 そんな風に考えていた直後、


「っ、なるほど!」


 何かに思い至ったように、突如としてリンシアが声を上げた。


「私の報告を聞くや否や飛び出していかれたのは、害敵マルコヴァールの狙いを完全に読んだ上で、事前に最大の脅威である魔導騎兵を無力化するためだったのですね! いえ、無力化だけで満足することなく自身の物として運用し害敵を倒してしまうとは、さすがは我が主(マスター)です!」


 事実とは全く異なる推測。

 しかしリンシアの発言に納得してしまったのか、この場にいる者たちが次々に賛同と称賛の声を上げ始めた。


「クラウス様は初めから全てを見通していたというのか!」


「我々が敵の攻撃を受けている最中、すでに逆転の一手を打っていたとは......!」


「クラウス殿に仕えることができて光栄に思います。剣と魔術の腕前だけでなく、抜きん出た知略をも持ち合わせておられるとは!」


 そんな言葉の数々を聞きながら、俺は気が気ではなかった。


(くそっ、いい加減にしてくれ! これじゃまるで、俺が計画的にマルコヴァールを倒すために特別機を奪ったように見えてしまうじゃないか!)


 これならいっそ、遊び目的で奪ったという事実がバレた方が何倍もマシだ。


「聞け、貴様ら! 俺が魔導騎兵ゴーレムに乗っている理由は別で――」


「まだ……まだ何も終わってなどおりません!」


 しかし、言い訳を始めたまさにその時、鋭い声が館の崩れた壁の隙間から響いた。

 マルコヴァールの姿が再び現れたのだ。


 身体のあちこちが傷だらけになりながらも、そのプライドだけは傷ついていないような威厳を保ちながら前に出てくる。

 特別機スペシャル・ワンによる一撃が攻撃目的の仕草でなかったおかげか、彼の決して高くないステータスでも辛うじて耐えられたようだ。


「レンフォード卿……どうやら私は貴方を侮っていたようです。こちらの狙いを先読みし、特別機スペシャル・ワンを奪ってみせるとは……!」


「いや、それはちが――」


「ですが! それだけで私を打ち破れるとは思わぬことです! こちらにはまだ別の切り札があるのですから!」


 否定しようとする俺の言葉を遮り、奴は力強く宣言した。


 するとその直後、マルコヴァールの周りにフードを被ったコート姿の三人が集まってくる。

 まるで事前に指示されたかのような動きで、彼らは一斉にフードを取った。


 そこに現れたのは――尖った角と黒色の髪を持つ、一目で魔族だと分かる男性たちだった。


「……っ!」


「魔族ですって!?」


「強力だとは感じていたが、そういうことだったのですか……!」


 騎士やエルフたちが口々に驚きの声を上げる。

 どうやら俺が来る途中、アイツらとも戦っていたようだ。


「御覧の通り、憎々しくも貴方が滅ぼした『幻影の手』の生き残りです!」


 もはや『幻影の手』との関係を隠す気もなくなったらしいマルコヴァールは、宣言するような口調で言った。

 すると、魔族たちはこちらを一瞥した後、マルコヴァールに対して一斉に頭を下げた。


「マルコヴァール様、我らをお使いください!」


「ええ! 同胞の仇を!」


「どうか私たちに復讐の機会を」


 彼らの言葉を聞いたマルコヴァールは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。そして胸から一枚の紙を取り出した。

 その紙には複雑な魔法陣が描かれており、不吉な魔力をまとっている。


 マルコヴァールが紙を地面に置くと、三人の魔族たちがそこに乗る。

 その瞬間、漆黒の光に包まれて三人の姿が消え、そして――――



『ヴォォォオオオオオオオ!!!』



 代わりに現れたのは、俺が乗っている特別機スペシャル・ワンと同じくらいの大きさを持つ、禍々しい漆黒の巨人だった。


「見なさい! これが私のもう一つの切り札――魔族たちの強力な魂を生贄に召還した魔導生命体です!」


「ほう」


 思わず声が出る。

 この存在は正直、俺にとっても驚きだったからだ。


 魔導生命体自体は『アルテナ・ファンタジア』にも登場していたが、、それはマルコヴァール戦でのことではなかったからだ。

 まさかここでお目にかかることになるとは思いもよらなかった。


「ふはは、さすがのレンフォード卿でもこれには恐れをなしましたか」


 思わず眉を寄せる俺を見てどのように勘違いしたのか、マルコヴァールの顔にさらに自信に満ちた笑みが広がる。


「もっとも、特別機の性能を最大限に発揮すれば、この魔導生命体をも倒せるかもしれませんが……残念ながらそれは不可能! 魔力効率の低い未完成の状態でそれだけの性能を発揮しようとすれば、瞬く間に魔力枯渇して貴方は死に至るでしょう! いくら抗おうとしても無駄なのですよ!」


 そう言ってマルコヴァールは勝ち誇ったように高笑いした。


「――――ほう」


 正直、舐められたものだと憤慨する。

 本当ならその辺りを適当に飛び回って満足すれば返してやろうと考えていたが……そこまで言うならば、俺の手で特別機の性能を限界まで引き出してやるとしよう。


 そう決心し、俺は自らの魔力を魔石に注ぎ込み始めた。

 それを目撃したマルコヴァールは勝利を確信したのか、得意げに口を開く。


「愚かにも程があります! 戦うまでもなく、無様に死になさい」


「果たして、死に絶えるのはどちらかな」


 軽妙にそう返したのち、俺はただひたすらに魔力を注いでいく。

 魔力効率の悪さがなんだ。そんな理屈が俺に通用するなどと思ってもらっては困る。


(この世界のラスボスとして君臨することになる俺に、不可能などない!)


 心の中の宣言と同時に、突如として特別機スペシャル・ワンの全身が眩い光を放ち始める。


「ば、馬鹿な! 不完全の状態で魔力を充填させるなど――!」


 ここまでの様子とは一転、驚愕の声を上げるマルコヴァール。

 どうやらこの期に及んで、奴は俺の実力を正しく認識していなかったようだ。

 膨れ上がる魔力量とその圧力に包まれる中、俺のテンションも最高潮に向けて上がっていく!



「ふはははは! いいぞ! どちらが愚かだったのか見せてやろう! さあ、特別機スペシャル・ワンよ! 俺の力を使い、愚かなる老害の野望を打ち砕いてみせ――――」


 ドガァァァァァァァァァン!!!



 それは突然だった。

 耳をつんざくような爆発音とともに吹き飛んだ。



 ――俺の乗っていた、特別機スペシャル・ワンが。

本作はしばらく火・木・土・日の週4日更新の予定。

次回は8月2日(日)12時頃となります。


それから本作のコミカライズ版が、現在ガンガンONLINE様にて連載中となっております。

村上メイシ先生の手によって最高のクオリティに仕上げていただいているので、楽しめること間違いなしです!

どうぞよろしくお願いいたします!

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魔力込め過ぎたんか(スットボケ
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