第6話 学者の資格
「そうか……あ~、大分長い話になるからそこのティーポット取ってくれ。」
「こ…れですかね?ティーポットにしてはずんぐりむっくりしてますけど……」
「実際はティーポットじゃなく薬罐だからな。」
「やかん?何ですかそれは?……はぁあ!今思えばここにあるのって、私がほとんど知らないものばかりじゃないですか!」
「いろんなものに興味を持つのはいいことだが…私の話はいいのか?」
これで話さずにすむのならうれしいのだが…アリシアの振る舞い方、私を気遣っているのか?…………。
「ってか、早く取ってくれ。喉が乾いてるんだ。…アリシアもあれ以来なにも飲んでないだろう?」
「え?私もいただいてもいいのですか?
―――では、お言葉に甘えさせていただきます!」
小さな家で二人はその茶を飲み、一時の休息を味わった後…レインは閉ざされたそれを初めて開いた。
―――あれは今から数えて76年と6ヶ月と12日と……そんな細かいことはどうでもいいか。まぁ幾分か昔に私は捨てられ、弧児院に拾われた。
孤児院はそれぞれが一人で生きられるように、親のいない子を指導する施設だ。そのためか、孤児院を出たものは冒険者になろうとするものが多かった。……いや、経歴も血縁も人格も問われない職業がそれしかなかったんだ。だから、勉強よりも、冒険者として活躍できるように三大人技とされる【気力・魔力・聖力】の才能を引き出すことに私たちは努力していたんだ。
私は気力が苦手だったが、全て3つを習得していた。
魔力・気力は生まれながらにして持つ力であり、聖力は精霊の類いに関わらなければ得られない力のため、これら全てを持つものは非常に少ない。それに加え、私は魔力の量・聖力の量が異常に多かった。それを駆使し、魔物を6歳位の時から駆っていたため…周りからは“英雄”と呼ばれたんだ。
「………ふぅ…皮肉だよな、殺人鬼が英雄って。…ここまでは大した事件は起きなかったんだ。」
“英雄”と呼ばれ始めてから3年程度の月日が流れた大雨の夜、私はある事件を起こした。
当時仲が良かった3歳年上の同性の友達が孤児院に居た16歳位のグループに暴力を振るわれていたんだ。
そのときの私は9歳だったから何をされていたのか理解できなかったが……今ならわかる。
殴る蹴るを繰り返しながら、無理矢理に自分のソレをその子の下腹部より下に、ねじ込んでいた。
私の友達は泣くのを止めていた。心はすでに死んでいたように思う。さっきも言ったが、私はその行動を理解できていなかった…
でも、理由も判らないのに怒っていた…憤激していた。そのあと私が何をやったのかは知らない。ただ、私が自我を取り戻して見た光景は…そのグループの奴らと思わしき形をしたなにかと、目に涙を浮かべてこちらを見る友達だった。
「…これが第一の…初めての人殺しだ。でも、これが原因であんな名前がつけ―――もう寝てくれたのか。どこまで聴いていてくれたんだろうな……。薬罐について知りたがってたな、これは薬を作るものなんだ。この茶は私が毎日常飲してる。これがないと眠れなくてな…。――さて、明日売りに出す物の製作を始めるか~……。」
―――ダメだなぁ、私は。……過去の事なんてとっくの昔に切り放したものだと思ってたのに………いまだに泣いちゃうんだ……過去から逃げようとするんだ……私に、泣いて誰かに助けを求める資格なんて…ないのになぁ。
そう、彼女は一人呟いた。




