第5話 誰かを知る覚悟
「えっ?……それって…65年くらい前に事件を起こした人の呼び名…だよね…?」
私は今、動揺しているんだとおもう…。
これだけでは無いのだけど、親族の意見を押しきって冒険者になったときから、いつ死んでもいいように覚悟を決めていたお陰で、私には死を恐れる感情がなかった…。
だから……こんなにも何かを恐れたのは初めてだった、
「ん、やっぱりまだ覚えている人が多いんだな…。まぁ、他にも化物とか外道とか、よく言われるのは、二つ名から取って、殺人鬼……だな。…まっ、好きな呼び方で呼べばいいさ。」
彼女…レインの顔を見る限り嘘はついてないみたい……でも、何故か哀しそうに見える。まるで、虚勢を張っているように……。
「ん~、いまいち信じられないなぁ~。だって65年も前の話だよ?生きていたとしても、レインのように若くないよ?」
…ひとまず、恐怖の感を表に出さないようにレインから事情を聞かなきゃ。過去の事件の張本人なら私を助けたりしないはず。それに―――
「ふむ…ここまで話を聞いたら大概の人は逃げるか、私を殺そうとするかのどっちかなんだが……恐すぎて脚が竦んでるのか?」
レインの聞き方は煽るようなものではなく、むしろ私のことを気遣っている聞き方だったからだ。
「…大丈夫です。少し驚きはしましたが。これは先生……いえ、私の持論なのですが……人は人の見易い事柄を観て、その人のすべてを見たきになりがちですが、相手のことを知るには観るのではなく聴くしかない―――」
「お前が言いたいことはわかった。……私が、私の過去を話すまで帰らないと言うことだな?……私が話す内容は、世の中で謳われてきた内容とは大きく違うし、嘘かもしれない。……もしかしたら全てを話した後で口封じのためにお前を殺すかもしれない………そういったことをすべて考えた上での決断ができるのか?」
私はこの時点で、レインは決して世に仇をなす人ではないと悟った。仮に世論が彼女を悪人とするのであれば、世論が間違っている。
そう思わせるほど、彼女は…レインは人を自分以上に大切にしているような眼をする。
「私は冒険者になったときから、常に死を受け入れてきました。人の、レインさんの素性を知るぐらいなんてことありませんっ。」
努めて笑顔……ではなく、本心から自然と笑みがこぼれた。
今回は話の区切り的に短いです。ちなみに今後、この話に出てくる「殺人鬼」はレインのみを指す言葉となります。そのところのご理解よろしくお願いします~




