第22話 少女の家出
「そうか…もうヴォルクはいないのか。」
そう…独りごちた。
「お前は本当に従順なやつなんだな……これからお前はどうしたい?」
ヴォルクの一番の従属魔物である手紙蜂に尋ねる。答えが返ってくることに期待はしていなかった。おそらく、“最後の命令”を受けたため従属紋が消えても仕事を全うできたと考えていた。
アピスは私の服にすり寄ってきた。その行動は決して敵対しているものではなく、甘える行動だった。理解していた。従属紋が消えた理由を、私の質問の意味を。
「賢いんだな…本当に私についていくことでいいのか?」
アピスは脚を大きく開いて威嚇した。
「一度決めたことは変えない…か。わかった。……私は魔物使いじゃあないはずなんだけどなぁ。」
そう言いつつも笑っているのは照れ隠しだ。この二体の魔物が理解できているかは……知らない。
「さて、とりあえずこの冒険者証で身分証明ができるか試しに行くか!……といっても今ギルマスが不在なんだったか。」
『レイン!なんと、龍王様が自らこの地に赴いてくれるそうだぞっ!』
いきなりの魔力を通した言葉に少し頭がくらくらした。が、すぐに元に戻る。
(ん?それってそんなに慌てるようなことなのか?)
『あったりまえだ‼まず、全ての龍を統べる者が人里に降りてくるんだぞ?!人族が龍王と対面するなんて事例は初め(ということはテンペストが話を通してくれたってことかな?)t……って!まぁ、いい。ところで、龍が降りても問題ない場所はあるか?』
(ん~、なら龍墓地かなぁ?)
『龍墓地?……まぁ、我はここの地理に疎いからな。お前が大丈夫というならそうなんだろう。ただし!…くれぐれも下手な真似はするなよ?いくら我ら属性龍が二対いたとしても1秒たりとも止めることはできんだろうからな。』
(お前らも私につくのか……とりあえず転移門をバーンのところに開いておく。それをくぐれば私の言う場所につくから、行ってくれ。)
◇
『な、なんだ……ここは?』
「これが龍墓地だ。だいぶ龍の魔力による瘴気の量がすごくてな…生半可な強さじゃこれに中てられて死ぬ。」
私とバーンが向かった場所“龍墓地”山の頂点近くの横穴に、魔力によって生み出された瘴気が蔓延している空間。その魔力の質と量が物質化するほど桁違いに多く、その中は魔力瘴気によって3mと見えない。
『生半可な者とは言うが……これでは大概の生物は死ぬんじゃないか?』
「かもしれないなー。ちなみにだが、ここの魔力に中てられるだけでだいぶ鍛えることができるぞ?魔法技術が主だけど…」
『そ、そうか…なんというか、ハードな訓練だな…。』
しばらく、魔力瘴気に中てられながら訓練をして待っていると
『そろそろ龍王様が着く。わかりやすい目印の様なものを準備しておいてほしい。』
との言葉が来た。
『目印と言ってもな……こんな魔力の瘴気で溢れとる場所で魔法なんざ使えんぞ?』
「んー……そうか‼魔法を使えばいいのか!…んふふっ、そうだよ…魔法だよ、ま・ほ・う。」
そう!魔法を使うには何が必要か?答えは魔力が必要。
ならなぜここで魔法が使えないか?答えは別の魔力によって支配された魔力圏だから。
「この二つの問いを解決するなら、この空間の魔力を使えばいいってことだ。」
『あぁ?自分以外の魔力圏に干渉するのは難しいんじゃないのか?』
「まぁ、魔法技術の常識だな。けど、それは自分の魔力を使って干渉する場合だろ?」
『ああ、だからここの魔力を使うのか……だがそんなことができるのか?ってか出来たら世の中の魔法に関する考え方が大きく変わるぞ?』
まぁ、できるかできないかでいうとできない。けど、やるしかないのが実情だからなぁ。普通に考えて、自分とは別の魔力を操るということは他人の魔力を自在に動かして魔法を暴発させることができるということだから………うん、死ぬ危険性がなく練習できるならしておくべきだな。
「とりあえずやってみる。」
ふぅぅぅ……まずは相手の魔力を感じること。魔力の特性は人それぞれだがその本質は一緒……本質そのものが一緒ということは違うのはその特性。違うのなら、その違いに慣れればいい。理解し、学ぶ。学んだあとは実践だ。
「んっ!……くぅぅ……」
他の人がこれをできないのは、相手の魔力を理解できる処理能力がないからだ。どんな生物でも持てる魔力の性質(特性)が一つなのは、魔力そのものの力の大きさに魂の器が耐えられないから…そして、その性質を理解できる頭の処理能力がないからと考えられる。
『おいおいおい、マジでできるのかよ……』
喋る余裕は無いんだけどなぁ……さて、処理が完了した。これでしばらくの間はここの魔力を使いたい放題になる。
「まぁな、これならまだできる(いま出来るようになったんだが)私がこのことに気が付いたのは、多頭竜とか双頭獣の存在からだな。」
『お、おぉ…そうか。まぁ我には真似できんな。つまらん質問だが、その状態で自分の元の魔力は使えるのか?』
「おっ!いいところに気が付くねぇ!答は“使える”だよっ。まぁ、既に私の頭はオーバースペック状態だから、二種類の魔力の性質を持つだけで精一杯かな?とりあえず、ここの魔力を外に流して狼煙みたいな感じにするね」
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・龍王ギアラーダの視点
「ふむ、では冥龍ミラは死んだのだな?」
『い、いえ…まだ死んだとは限りませんぞ龍王様。』
「そうか、ありがとうな…まずは冥龍の喪を服した後、お主等の誕生式を行わなければな。」
『礼には及びませんぞ…あの時に我ら共々冥龍様についていっておれば……いや、足手まといでしたな。』
「晴れて龍になれたのだ、まずは喜べ。……それと暫く一人にしてくれないか?先程お主が言った人の子について考えたい。」
『わかりました。考えがまとまりましたら、我を呼んでください。』
はぁ…あいつは去ったか……これで気兼ねなく泣けるものよ。のう?ミラよ。主が解決できなかった事件か……もしかするとこのことを言っていたのかもしれぬなぁ……。
「ふむ、会ってみないことにはわからんか…おーい!テンペスト!とりあえず会いに行ってみることにするぞっ!」
『えっ!……それは真ですか?』
◇
『そろそろ、目印の様なものがあるはずなんですが…』
『ふむ、何も見えぬnっ‼』
何だこれは?!こんな強大な魔力は……私と同じくらい…いや、それ以上だぞ?
『まさか…こんなのがお前の言うレインとやらなのか?』
『い、いや…そんなはずはありません。少し強いくらいの少女です…が……バーンでもありません』
行かないとわからない、か。
『どうやってやったかわからんが、あれが目印なのだろう。なら、あそこめがけて行けばいいはずだ。』
『では私が先行し(あー、あ、あー…聴こえる~?)まs……ってええ?!』
この距離から“念話”だと?これでも上空1000m近くにいるのだが…それに龍の波長に合わせるなど……
『ああ、聴こえるぞ。私が龍王ギアラーダだ。とりあえずその目印に向かうが、どこにいるんだ?』
(え~と、まずは自己紹介なのかな?私の名前はレイン。一応箱入り娘だったね。んで、場所なんだが、その狼煙の根元に結構広い洞窟があるんだけど、その中に入ってほしいかな。入り口にはバーンがいるから一目でわかる筈。)
『わかった』
◇
………確かにバーンは居た。ものすごく気分が悪そうな顔をして臥せっていた。
「おいバーン。どうしたんだ?」
『こ、これは龍王様。何とも情けない姿をお見せして……とりあえず、レインはこの奥にいます。何やら見せたいものがあるとかで…おそらくこの場所が龍墓地と呼ばれていることと関係があるんでしょう。』
「わかった。しばらく休んでいるといい」
バーンが臥せっていた理由は単なる魔力酔いだ。そう、龍が魔力酔いをしたんだ。一体どれだけの強さを持つ小娘がいるのd「すいません、少し待たせてしまいましたか…私がレインです。よろしく。」
「あ、ああよろしくな。」
見た目もその力も感じられる範囲ではただの小娘だった。
次話は来週のこの時間に出ます。
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