第21話 王都の異変
「そうか……あのときのか……。」
『ガウ…』
あのとき、こいつらさえ来なければクレムは生きていた。結果論だというのはわかってる。理解している。でも、
「人は感情の生き物なんだよ…!」
『そうだな。』
念話か…言葉が通じるのか…。
『俺らを殺したければそうすればいい。死なんて俺らからしたらただの概念にしか過ぎん。』
「…………私は……殺しなんてしないさ。今回はなにか用があって来たんだろ?……前みたいに無理矢理呼ばれたわけじゃなくてさ。」
そう、人は感情の生き物だ。だから、私は感情で行動しない。人でいることはとうの昔にやめたから。
『ああ、私は無理矢理呼ばれてはない。』
「私は?……ということは他のやつらは…」
『その通りだ。おそらく何かの実験に使われているのだろうな。この空に広がる空間転移技術も、俺らが使える技のひとつだからな。』
ティンダロス…別次元に住む生き物。空間を支配することを得意としている……か。
『その落とし前…というわけではないが、この空の空間を俺の空間で支配の上書きをする。謙遜しても、俺は仲間の誰よりも強い。もう一度支配されることはない。』
これで脅威は無くなったと考えていいか。だけど……空間の支配の強さは弱くても、範囲がこれだけの広さなら…
『明らかに人の仕業ではないわな。かといって俺らの同胞でもない。この事は俺が調べておく。……あとこれを』
小さな球状の結晶を渡してきた。
『これはお前がクロムのもとへ還りたくなったときに使え。』
「クロムの…もと?……ありがとう。」
『使うべきときに使え。……俺はもう行く。』
ここの空一帯を支配した後、煙のように消えていった。
「クロムのもと……か。」
◇
あれから2日が経った。前回の祭りに比べて、私を殺しに来るものは少なかった。まぁ、殺しに来るものと言っても、善行のためと思ってやっているので……何とも言えないんだよなぁ。
「そう思ったら、この人たちは宗教の教えのために行動してるのか、自分の善意から行動しているのかわからんな…ん?」
――コツン―― 窓に何かが当たる音が聞こえた。
「何だ?また祭りのやつらか?」
窓をサッとあけると、一匹の蜂がやってきた。魔物だ…と言ってもヴォルクの従属魔物なのだが。
「ん、ヴォルクの手紙蜂か……おいで。」
手紙蜂が私の手に下りて、手紙を置く。
「ん、ありがと」
さっそく手紙の封を切った。
~ヴォルクの手紙~
よう、元気にしてっか?とりあえずこの手紙が読めてるってこたぁ、俺の蜂が無事そっちに届いたってことだ。まずそのことについて俺は喜ぶ。
今、俺は王都でこの手紙を綴ってるんだが、おそらく王都は陥落している。表じゃあ気づかねえかもしれねえが、確実に何者かによって傀儡状態だ。先日お前さんが言ったミクトとアリシアの件だが、まだ王都についてねえ。というか、総冒険者組合長とその孫娘さんがこっちでは行方不明になってる。
おかしいだろ?確実に何者かの手が絡んでる。
だから、そのことをお前に伝えようと思ってこの手紙を出したわけだ。それと、しばらく王都に近づかない方がいいということを言っておく。
後、しばらく俺はこのことについて調査するつもりだ。だから、しばらくの間俺に手紙を出さなくていい。ついでと言ってはあれだが、その手紙蜂はお前が預かっておいてくれ。一番最初に従属させた魔物だからか、変に愛着を持っちまってな。それに、そいつがお前に従順でいれば俺の生存証明になるだろ?俺が死んだら、従属紋が消えて元の凶暴な魔物に戻っちまうからなぁー。
もし、俺が死んでそいつが魔物に戻ってしまったら、お前の住む山に帰してやってくれ。
……さて!俺はこれから潜入任務を開始する。これが終わったらまたおもしれえ話をしてやるから、それまで…またな。
追記:手紙と一緒に冒険者証(ランク:下級中位)を同封しておいた。これはお前の物だ。ミクトが前々から用意していたんだ。しばらく王都に近づかずに冒険者として生きていくのをお勧めする。
◇◇◇________________◇◇◇
手紙を読み終えてしばらくぼけぇ~っといていると、ある違和感に気付いた。
ハッとした。
なぜなら、既にその蜂には
「従属紋が消えている……」
次回は来週のこの時間にあがります。
第22話【少女の家出】
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