第18話 祭りの始まり?
「はぁ…明日にはお祭りかぁ…。」
例年通りの慣例行事に私は憂鬱な感情を抱いていた。
中央都市である王都が企画・実行している祭り。国民の疲れを解消しつつ政治をより良く回していく…なんてことをスローガンとして掲げて行われているそうだ。
王都が企画・実行をしていると言っても、これの実権を持つのはとある一つの宗教団体であったりする。
《生命の護手》
今やどの場所に行ってもこの宗教が存在し、何人もの“勇者”を排出し続けているため、この国の王から贔屓にされている。それのお陰で、この宗教が国の行事を担えるのかもしれない。
「とりあえず一週間は持つな……ミクトがいないだけでこんなにも大変だとは…思ってもなかった。」
いつもなら、この祭りの時期に合わせてミクトが予定を開けてくれるので、冒険者組合のギルド長室で匿ってくれる。が、今年はアリシアと言う総ギルド長の孫娘がここに迷い込んでしまったため、ギルド長が不在となってしまった。
……非常に面倒なことになった。
「そういえば…いつからあの宗教は出来たんだ?私が封印される前は無かったはずなんだけど…。」
《生命の護手》がどんな宗教かと言うと、簡単だ。勧善懲悪の一言で終わる。
日頃から良い行いをするものには報酬を、悪に手を染めたものはそれ相応の罰を、と言うことらしい。
だが、決して命を奪うことはしない。だからタチが悪いのだ。一度でも悪しき事をしたと認められれば、死ぬまで働かされる。処刑などのように無作為に殺さない。だから、“更正所”と呼ばれるこの宗教が管理している場所には常に
『こ、殺…せ…。』
『誰か、もういいんだ…さっさと殺してくれよぉ……』
『……へへっ…へっ……死…死ねっ!』
死を待ち望む叫喚が溢れ返る混沌の場となっていた。
そんなことをしてまで命を奪うような行為をしない宗教が定めた、唯一他者の命を奪ってもいい時。それが明日からの一週間。
“咎人の粛清”だ。
「なぁアクア~、暇だよー。かまってー」
誰もいないところに話しかけた私は、決して頭がおかしくなったわけではない。ちゃんと話し相手はいる……人ではないが。
「……ピィ…」
綺麗な透明の水色をしたスライムが身体を震わした。私の話しかけた相手であり、相棒である。
「そうかそうか。はぁ……やっぱりアクアはかわいいなぁ」
今日日、スライムがいない生活をおくる人はほとんどいない。下水の処理や水の洗浄、ごみ処理には欠かせない存在となっているからである。
人工的に色を変えることができるため、家のアクセサリーや観賞生物としても一躍を買っている。光るスライムなどは、光源として机の上におかれていることが多いそうだ。
魔物なのに一般市民まで大きく広がっているのは従属する必要がないからで、その理由に知能の無さが挙げられる。
「……ピィッ!」
私がこのスライムを捕まえたのがいつだったか覚えていない。だけど、孤児院にいたときの英雄と呼ばれる前には私の手元にいた。当時の院長も、私が大切に抱えていたからスライムケースに入れたらしく、私が捕ってきた経緯を知らない。
「ん、どうした?私とまた外にいきたいのか?」
「ピィっ!」
「即答したな…よし、じゃあ行こう!」
私はアクアを手にのせ玄関へと向かう。明日からお祭りが始まるため、しばらく外にでない方がいいのだがアクアが望んでいるのだから仕方ない。
そう、私はアクアをスライムケースに入れていないのだ。魔物であるスライムは捕まえるのは簡単でも飼うのは危険である。攻撃をするからだ。しかし、スライムケースに入れている間は決して攻撃しない。従属魔法を加えた一種の魔術具であるからだろう。
「……まだ…誰も来てないか。半の時鐘がなるまでには帰るぞ?」
私は外に出て安全を確かめると、アクアに問いかけた。
「…ピィ。」
どうやら了承してくれたようだ。外に出ると言っても軽く家の近くを回るだけだ。家の周りなら盾の魔法を使っているため魔物は湧かない。安全なのだ(フラグではないぞ?)。
「ん?……魔力が発生した…のか?」
おかしい。魔力が発生するのは、何かが魔法を放つとき以外ないからだ。もし魔物を倒すために使ったのであれば、その使い手に私は気づく。この山に入ったものは魔力・気力を持たないもの以外、私が感知できるからだ。
「…ピッ!!」
「っ!…魔物が空からだと?!」
しまった、武器をおいてきてしまった。魔法のみの戦いになる…が、
「ルーンウルフとソリッドベアか……どっちも魔法耐性が高いんだよな。さて、どうしたものか。」
これもまたおかしい。この2体の魔物は迷宮の奥にてポップする。すなわちこの山には存在しない魔物であると言うことだ。ならば、なぜここにいるのか?おそらく誰かがこの魔物を私の下へ飛ばしたんだろう。
「となると…だ。さっきの魔力は転移魔術系のものか。それも遥か上空から。」
遠ければ遠いほど発生した魔力は感知しにくくなる。そう、距離さえ放せばいい。たとえ上空であったとしてもだ。
「ピィッ!ピィッピッ!」
「おっ、アクア!急に前に出てくるな、危ないから。」
空から降ってきたとはいえ、体勢が崩れるのは一時的なものだ。おそらく、落下による負傷は無いと考えた方がいいだろう。
『ガウッッ!!…グルルル』
ルーンウルフが隊列をなして近づいてきた。総数は……ざっと20はいるんじゃないかな?しかし、魔法が効きづらい…となるとだ。
「魔法でなければいいわけだ…《流化した鉄》……あっ!アクア、こっちにおいで」
「ピィ」
“魔法”が効きづらい=魔力を通しにくい、と言うことだ。この世界において私は魔力の通っていないものは見たことがない。その為、魔力を外側からは通しにくいのであれば、どんな攻撃もあまり効かないと言うことになる。だが、生き物だ。周囲の環境が適さなければ生きられない。
「そう、どんな生物も“急激な温度変化”には耐えることはできない!…例外は無い…はずだ。」
「ピィッ!」
私は魔法で液体化した鉄を生み出した。魔法によって造り出した鉄で攻撃したのなら効かなかっただろう。おそらく、液体化した鉄が流れてくるだけならばルーンウルフは無傷のはずだ。前提条件として、攻撃する物質が常温であることが必要だけど…
「鉄が液体になるにはだいたい1500℃あればいいわけだが、あいにくここは山だ。気温が平地よりかは幾分低い、だから1600℃の液体鉄にしてみたが…」
基本的に魔法で金属を造り出すのは無理だ。皆が使う、魔法陣を理解して使用する魔術であるのならば。
『『ガアアァァッ!!……グッ…』』
ルーンウルフ達の断末魔が響きわたる。生きているものはほとんどいないだろう。いたとしても、溶けた体の隙間から液体の鉄が内部に流れ込み、いずれ死ぬ。
前に出てきたソリッドベアも何体かやられてくれたようだ。
「さて、次はどうしようかな…アクア」
「ピィッ?」
遅れてごめんなさ~い!!
次はこんなことは起こらないはずだ!!
(これはフラグかも?)
これからもよろしくお願いします




