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魔術の謎を紐解く学者が望む日常  作者: 咲月 sc
第1章 過去の面影と変わる日常
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第17話 現状と発表

――日は少し遡る。


 迷宮と思わしき場で2対の飛龍が奮闘していた。その眼前には三百を優に越える不死者(アンデット)が犇めいている。

 大嵐飛龍(テンペスト・ドラゴン)は風を燃炎飛龍(バーン・ドラゴン)は炎の息吹(ブレス)を放つ。風は炎を長し、炎は敵を灰に還す。

 存在した不死者(アンデット)は一瞬にして消えた。が、間髪をいれずに再誕(リポップ)する。その数は五百。

 2対の飛龍も身体には数多の傷を負い、精神的にも限界がきていた。


『くそっ!スパンが速すぎるだろ!まだ100年もたってねえぞっ』


『口を動かす前に少しでも時間を稼げ。もう、ここの守護龍は我らしかおらんのだぞ。』


『んなこたぁわかってるよ!……だあぁぁもうっ!』


 倒しても倒しても敵は沸き続ける。灰が山となり飛龍の視認を妨げる。だんだんと2対の意識が遠のいていく。


『だめだ……もたねぇ。』


 何度目か解らない炎と風が放たれる。

 また一瞬にして不死者(アンデット)が灰になる。


 が、再誕(リポップ)……しなかった。

 既に意識を失った飛龍らはこの事を知らない。その2対の飛龍は黒く混沌とした気を纏い始めた。瘴気だ。

 飛龍による攻撃で再誕が止まったのか。それとも“これ”が目的だったのか…



「なるほどな…とりあえず、今は収まっているっていう解釈でいいのか?」


『おそらくな。我らが相見えたときよか幾分魔力の流れが弱い。お主の言う解釈で当分は問題ないだろう。』


「しかしだ、わしはこれでもこの町のギルド長だ。もう少し皆が安心できるような理由はないかのォ?」


『ない…と言うしかないな。我らが対処できたのは、常にここの近くにおったからだ。あの暴走じたい、いつ起きるか分かったもんじゃない。』


 龍いわく、この氾濫は最近に起きたものであり、過去例があるのかすらわからないそうだ。

 しかし、龍同士にも言い伝えのようなものが存在し《強き力を持つ者は護るべき場所に留まれ》と伝えられている。この教えはもかしたら“氾濫”に関係しているかもしれないと言うことで、2対の龍の一体、テンペストは全ての龍を束ねる【龍王】に会いに行くそうだ。


「龍王……本当に存在するんだな…。だが、全ての龍を統率すると言うくらいだ、テンペストみたいな普通の龍が会えるのか?」


 やばい、私の中の価値観がだんだん壊れていくような気がする…。

 龍を目にするだけで人は畏怖し、心を病む。

 龍に遭うことは人生の終わりを意味する。

 龍の数は少ないが、災害級の力を持つ。

 三つ目に関しては本当かもしれないが、一つ目や二つ目に関しては信じられない。だって実際に目にして話しても、私たちは生きているから。


『おそらく会ってくれるだろう。我らは龍王にとって子供のようなものだからな。』


 龍王の子供?…もし会えるなら是非ともあってみたいものだが…おそらく無理だろうな。いろいろと問題がありすぎる。


『……懸命な判断だ。……だが、この命を救ってくれたのもまた事実だからな…考えておこう、レインよ』


 そう言った後、テンペストはどこかへ飛んでいった。しばらくすると、テンペストの姿が見えなくなり驚いた。


「おいおいずるいぜェ?レインちゃんよ。まぁ、多忙の身で旅行に行く時間はないのだがのォ」


「ん…そういえば、何でお前らはここに来たんだ?」


 私のいる場所を知っていたのはミクトぐらいのはず。彼はおちゃらけた性格をしても口は硬い。特に友との約束などは誰にも言わない…はずだ。

 早急に私に伝えなければならない事なら納得はできる。


「おおっ、すっかり失念しとったわ!…って言うのはいらないな。」


 ミクトはふざけた態度を一変し、真剣な表情で話し始めた。


「お前に対する用件があるんだ、3つの。その一つの総冒険者組合長についてから話す。」


――わしがここに来る前にアリシアの魔写の手紙(マジック・レター)に総ギルド長からの言葉が書かれた。内容は『アリシアのもとに行こうとしたのだが、自分の補佐官を含めたいろんな輩から止められた。すまんが、そちらに行けそうにない。』と言うものだ。それに対してアリシアは“じゃあ、そっちに向かう”と返した。

 しばらくたってから返事か来たのだが、『どうも周りの様子がおかしい。そちらの町に関係のある言葉を言ったとたんに皆が“無”になる。まるで人形のようだが、魔術の類いはない。それに、町のことを口に出さなければ特に問題はないのだ。…ミクトよ、至急王都に来い、頼む。』と、明らかになにかが起こっているような内容だった。

 だから、わしはしばらくこの町を空ける事になる。アリシアを連れてな。これが一点目だ。


「……分かった。それで私はどうすればいい?」


「その事についてが二点目だ。そろそろ例の“祭り”が行われるだろう?わしの不在のせいで今回は冒険者組合で匿うことはできん。じゃけん、レインはこの迷宮付近でなんとかやりくりしてくれ…頼んだぞ。」


「ん……もうそんな時期か。バーンはここに残って迷宮付近を護るんだよな?」


『ん?あぁ、もちろんそうする。…!我らがお主をかくまうと言うことか?レイン』


「そういうことだな。」


『……よし、分かった。だが、少なからず我の手伝いはしてもらうぞ?』


「もちろんだ。無償で何て言わないよ。さて、三点目は?」


「三点目は……レイン、お前の“研究成果”を聞かせてくれ。やっとできたんだろ?」


「おお、それは本当かい?ぜひとも私に聞かせてもらいたいねえ。」


『研究成果とな?ほほう……たまに人間は面白いことを考えるからな。我もぜひききたいところだ。』


 ちゃっかりバーンまで聞く気になっている。


「はぁ、龍のお気に召すかどうかはわからないけどな。」


 ため息をつくが、しょうじきうれしい。

 私はこれでも学者だ。自分が研究したことを発表できる事が楽しみなのだ。

―――それが誰かのためになるのならもっと嬉しい。だから話す、語る、説明する。私の長年の研究成果を旧知の仲に。


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