第12話 違和感の原因と解
――どうもおかしい。
あれから数十分程度戦い続けているが、奴らの攻撃に違和感しか感じない。
普通、龍というのは姿形こそいろいろだが、決まって知性を持っているのが当たり前なのだ。その知能は人に劣らず、優るものもいる。
そのような龍に勝つことができる亜龍種のこいつらは、当然知能を持つ…はずなのだが。先程からの攻撃には知能の欠片も感じられない。ましてや、知性を失って本能で動いているようにかんじる。
その理由の一つとして、攻撃が単調で躱しやすい事が挙げられる。
「おーい!聴こえてるか~!」
声をかけてみるが、やはり反応はない。
いや……少しばかり奴らから聖気を感じるな。これは先ほどまでなかった事象だ。
そもそも聖気とは、その源である聖力が外に溢れた状態のことを指している。地方によっては聖力と聖気を同一視しているようだが。
ここで少しおかしなことが起きた。
自らが発した聖気に自らが苦しんでいるという。
「どういうことだ?………ん!」
私が行っていた実験にこういうものがある。
聖力を身に付けるには、精霊以上の存在から加護として受け取るか、すでに聖力を持つ人に分け与えてもらうかの二パターンしかない。
そこで私は、魔物に無理やり聖力を持たせるとどうなるかを試してみた。
その結果、スライムは一時的に聖力を持ったが、しばらくすると自らの聖力の力に耐えられなくなり、消滅した。ちょうどそこの二体の飛竜のように苦しんでから。
――ここで考えられる可能性は主に二つ。一つは飛竜の形をした別のなにかが私の聖気に反応して自滅。
もう一つは、この飛竜に何かしらの魔物が寄生or取り憑いていて、その魔物が苦しんでいるパターン。
「んー、ちょっと実験。」
試しに聖力を込めた刀で斬ってみる。大嵐飛竜の方を。
「グガアアァァッ!」
龍種とされる魔物(飛竜の上位種は含む)は基本的に自分の聖力を持つ。
そのため、聖力による攻撃を得意とし、逆に聖力による攻撃はほとんど効かない。
「ん?何で聖力が効くんだ…」
だが、効いた。これが事実なのだ。
――少し考えるとするか……
まず、こいつらのおかしい点は主に3つ
一つ目は知性を失って本能で動いていること。
二つ目は何故か聖力が効くこと。
三つ目は私が来るまでおとなしかったこと。
(そうだ…何で私が来るまでおとなしかったんだ?これだけ殺す気に満ち溢れているのであれば、迷宮から出ればいいはず。出たら出たで問題だが。となると、迷宮から出ることが目的でなく、迷宮に入ること、留まることが目的となる。)
次に、ここに来るまでにおかしかった点……は二つか。
一つは私がここに来るまでの間、一匹たりとも魔物が居なかったこと。
一つは戦った形跡が見当たらなかったこと。
(……ん、ここは不死の迷宮のはず。となると、倒された魔物は不死系だけ……違う、二つ目は[戦った形跡が見当たらなかった]じゃなくて、[迷宮内がきれい]だった。だからこそ私は違和感を感じたんだ。)
「不死系に対する有効打は聖力による攻撃……そういうことか!」
やっと、この事象に納得の行く答えを見つけれたが、私の答えが正しければこいつらを殺してはいけない。
「殺さずに浄化する……か」
これがこの2対の飛竜を倒す、唯一の方法だと解った。




