第13話 一瞬の攻防
といっても、人間が龍種に攻撃を当てることは決して容易いことではない。しかも、先の攻撃によって私をよりいっそう警戒している。おそらく生存本能が働いているのだろう。
「っ…とと、まだ攻撃が単調なだけありがたいと思うしかないか。」
それでも、だんだんと動きに無駄がなくなってきている。それに、二体で私を追い込んでいくような攻撃方法を取るようになってきた。
「…っと、本格的に不味いな……私も奴らも。」
遂には魔法まで放ってきた。
亜龍種の上位種、通称ドラゴン種は世界で【火・風・水・氷】の属性を扱う4種類しかおらず、その強さはお互いの連携の良さに大きく関係している。常に、互いの持つ属性をたてるもの同士でペアを組むため、2~4体で行動している事が確認されている。
例えば火と風。これは大嵐飛龍が燃炎飛龍の攻撃を強化している組み合わせだ。
例えば水と氷。これは氷結飛龍と流淼飛龍が互いの攻撃を強化している組み合わせで、一番強い。
それでもこの四種類が揃わなければ、龍と同等の力を持たない事から、龍がどれだけ強いかが伺える。
「ちょっと危ないかもな……コンビネーションを放たれたらどうしようもない。」
そういった矢先、レインを風の渦により閉じ込めた。魔法で言うなれば、竜巻といったところだ。
「っ!…ほんとにヤバいかもしれない。」
――おそらく…いや、確実に次が来る。だけど、ここから無理に脱出しようとすると体が引き裂かれることになる。もともと竜巻とはそう言う魔法だからな。ならば、耐えるしかない次の攻撃に……
そこまで考えた瞬間、燃炎飛龍が発生した竜巻に向かって大きな炎球を放った。
それはレインに当たる前に着弾し、大きな火柱が発った。そして、竜巻を一刹那にして朱色に染める。その名に恥じない連携技だ。
だが、あのとき考えていた時間もまた一瞬。行動を起こす余裕は十分にある。
炎球が来る直前、魔力そのものを込めた状態の刀を構えていた。自分の体と縦に平行にして。
(攻撃をくらうならば、それを受けてしまえばいい。なるべく威力を削いでしまってから)
炎球が着弾し、竜巻が焔の渦と変えようとしたそのわずかな一念。愛刀にて竜巻を斬った。
そう、竜巻を朱色に染め上げるのが一刹那であれば、レインが竜巻を斬ったのは一刹那より速い。そして、竜巻を朱色に染めたのは残影であったかのようにして、焔の勢いは落ちた。
「これでも十分暑いんだがな…そして、その隙を逃すほど私は甘くはない…はずだ!」
炎柱の陰でレインの姿が見えなかったのか、はたまた人とは思えない異常な動きをした事に驚いて動けなかったのか。答えはおそらくわからないだろう。
しかし、そこに隙ができたのは事実。これを逃したら、次はない。
「っ、やああぁぁぁッ!!」
レインは聖力を愛刀に込めて、刀の棟で二体のドラゴンを打った。
ここでも少しおかしな事が起きた。
聖力にて確かに何かが浄化していったのだが、2対のドラゴンの体はまだ残っている。
だが、レインは心なしか満足しているようだ。
「私の答えは正解だ………はふぅ~、殺すのなら楽なのに生かすとなると…神経使うわ。……疲れた、寝る。」
そう呟くと、レインはドラゴンと同じようにして寝転がる。
――先程まで激しい戦いをしていた場所には、静かな少女の寝息だけが漂っていた。




