侍女の画策
旦那様にお願いをしたその翌朝、緊張した面持ちの侍女が同じテーブルについた。
「奥様、これはよくないことと思うのです」
「でも私一人での食事は寂しくて……」
「奥様にはお相手がいるでしょうに」
相手?誰か他に相手なんていただろうか。
「……これでは先が思いやられますね」
小声で侍女が呟いた言葉は私の耳には入らなかった。
二人で取る食事はいつも以上に美味しく感じられた。一方の侍女は困ったような顔をしていた。
昼時、また侍女と共に食堂に向かおうと思ったが、侍女は首を横に振る。
「奥様、やはり私は傍で見守らせてください」
「そんな、寂しいわ」
「今日は特別に中庭に用意したのですよ」
促されるままに中庭へ向かう。でも一人で外で食べてもつまらない。誰かと会話しながら食べる食事は美味しさもひとしおなのだ。
中庭にはテーブルに椅子がニつ用意されていた。そしてその傍らには旦那様が立っていた。
「ブランシェ、待っていたよ」
とてもご機嫌、といった表情である。一方私は戸惑ってしまった。だって旦那様と一緒に食事をするのはこの屋敷に来た日日以来だ。
「さあ座って。今日も温かくていい昼食日和だね」
いつもより饒舌な旦那様に驚きつつも椅子に腰掛けると食事が始まった。
旦那様はおずおずと最近の私の生活について話しかけてくれた。私は刺繍や読書をしていることを話す。私は反対に気になっていた王都の様子を聞いたが、彼ははぐらかしてしまった。きっと私の悪い噂が流れているのだろう。それでも思っていた以上に会話が弾むことに驚いた。
食後の紅茶を一口飲むと私は言わなければいけないことを伝えようと決意する。
「……この前は許可も得ずに外に出て申し訳ありません」
「ああ、いや、私も強く言いすぎてしまった」
一度沈黙が訪れる。旦那様は気まずそうな表情だったが、その後すぐ、何かいいことを思いついたと言わんばかりの笑みを浮かべる。彼の口から出たのはびっくりする提案だった。
「あなたさえよければ、ピクニックに行かないかい?」
「ピクニックですか?」
「あなたを護衛もつけずに町へ出すことはできない。でも、代わりに私と一緒に湖に行かないか」
旦那様と一緒なのは少し不安だが、それでも屋敷から出られるのは嬉しい。
「行きたいです」
私の答えに旦那様は満面の笑みを浮かべた。
食事を終えると侍女が満足げな表情で他の使用人と何かを話している。本当は彼女とお喋りしたかったが、旦那様がベンチへと誘うので二人でそれぞれ別々ののベンチに座った。旦那様が自分の座ったベンチからちらちらとこちらに視線を送り落ち着かない様子だ。私がいるとリラックスできないのかもしれない。
私は気にせずに午後の日差しを楽しむことにした。




