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「城水先生! どうかされました? 浮かぬ顔されて…」

 声をかけたのは、女性教頭の新月しんげつ咲穂だった。

[あっ! 教頭…。いや、別に]

 城水はすぐ、逃げをうった。

「そうですか? なんか、顔色がすぐれないようですが…」

[ははは…いやなに、出がけに家内と喧嘩けんかしたもんで…]

 城水の脳内数値は、瞬時に上手うまい方便をはじき出し、具合よく城水の口を開かせた。

「まあ! そうでしたの? ほほほ…そんなご事情がお有りとは。一人身の私には、とんと分かりませんわ」

 快活に語る新月だったが、城水の脳内数値は、女性特有の更年期ヒステリーをつぶさに見てとっていた。

[ははは…つまらんことを申しました、では…]

 早くこの場から去れ! と脳内数値が弾き出した結果を、城水はすぐ、実行した。

 城水が教室へ戻ると、生徒達が浮かぬ顔で教科書を広げ、待っていた。

「先生、どこへ行かれてたんですか?」

 生徒を代表して、クラス委員の到真とうまが椅子を立ってたずねた。時空は地球外物質が告げたように過去へ戻されていた。城水は一瞬、鳥肌が立つようなゾォ~っとする感覚を覚えた。授業の途中にもどっていた。城水は黒板を見た。書いたはずの数字や文字が消えていて、消された痕跡もなかった。だが、教壇の上には算数の教科書はあった。自分が置いたのだから当然だったが、城水には解せなかった。到真を指名して訊ねた数字のがい数の場面は夢だったのか…。地球外物質がテレパシーで告げた異次元の意味が城水は少し分かったような気がした。

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