110/123
-110-
「あらっ! 城水の奥様じゃござぁ~ませんの?」
里子は、また五月蠅いのが現れたと、顔で笑いながらも、口では軽く舌打ちした。ご近所の若狭夫人だった。奥様会では散々、手こずらせた相手である。ここは、触らぬ神になんとやら…と思いながら一応、話だけは聞くことにした。
「奥さま、ご存知? 悪いことは出来ませんわね。会社経営されてる西谷さん、不渡り出されて雲隠れですって?」
「えっ! そうなんですか?」
里子は初耳だった。
「そうなんざぁ~ます。でね、お家は、蛻の殻。当然、奥さまも…。なんでも、立ちが悪いマルチ商法だったみたいよ」
「まあ…」
里子は最初、軽く聞く人だったが、だんだん重くなっていた。
「旦那さま、国際指名手配らしいわよ。そら、多くの人をぺテンにかけたんだから、当然ざぁ~ます」
若狭夫人は鼻息を荒くした。
ところが、西谷が消えた真実は雲隠れでもなんでもなかった。悪徳会社経営者の西谷は異星人によって消去されたのである。すなわち、新たなエネルギーと化したのだった。西谷の場合は完全消去で、城水家前の坂の下にあるマンホール地下駅から別の次元へ移送された訳ではなかった。




