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第46話:帝国皇帝の平伏と、大陸全土に轟く『軍神聖女』の二大称号

――チュン、チュン、ピピピ……。

標高千五百メートル、アウグスブルク高地の朝は、本来であれば絵画のように美しく、小鳥のさえずりと共に清涼な空気が満ちる爽快な目覚めとなるはずだった。

だが、白樺の離宮の最上階、重厚な遮光カーテンで外界の光を遮断した天蓋付きベッドの真ん中で、私は敷布団に顔を突っ伏したまま、心底不機嫌な唸り声を上げていた。


「……ううぅぅぅ……最悪よ。全然寝た気がしないじゃないの……!」


ギリリと奥歯を噛み締め、枕を両手でバンバンと殴りつける。

昨夜の悪夢の記憶が、鮮明に脳裏をよぎる。

心地よいシエスタを楽しもうとしたら、黒光りする大軍勢が砂煙を上げて庭を汚し、仕方なくスプリンクラー(高圧洗浄水流)で洗い流してやったら、今度は泥まみれの男たちが数千人規模で中庭に居座った。

風邪を引かれて病原菌を撒き散らされたら困るからと、不要な毛布と前日の残り物スープを投げつけて「早く消えろ」と追い払ったのに、なぜかあいつらは号泣し、親指を切り裂いて血判を押した呪いの紙切れを押し付けてきたのだ。


その後、部屋に逃げ帰ってベッドに潜り込んだものの、窓の外から夜通し聞こえてきた「エレオノーラ様万歳!」「我らの慈愛の母よ!」という五千人の野太い祈りの大合唱。

深夜になってようやく静かになったと思ったら、今度は興奮と恐怖で神経が高ぶり、夢の中にまで血まみれの指を持ったゴットフリート将軍が現れて「スープのおかわりをください!」と迫ってくる始末。


(有給休暇の台無しよ! 完全なるバケーションの破綻だわ!!

前世で言えば、有給を取って山奥の高級温泉旅館に泊まったのに、隣の部屋で泥酔したヤクザの親睦会が始まって、一睡もできずに朝を迎えたようなものよ!!)


激怒と疲労で目の下に薄っすらと隈を作った私は、ガバッと掛け布団を跳ね除けてベッドから飛び降りた。


「リディエ!!」

「おはようございます、お嬢様。朝食のハーブティーをお持ちいたしました」


部屋の隅から、音もなく現れた専属侍女のリディエ。彼女は昨日の大騒乱などまるでなかったかのように、完璧な所作で銀のトレイを掲げている。


「朝食なんて後回しよ! 今すぐ荷物をまとめなさい! 撤収よ! 王都へ帰るわよ!!」

「……かしこまりました。避暑のご予定は一週間の予定でございましたが、即時帰還の手配を進めてよろしいのでございますね?」

「当たり前でしょ!! こんな山奥、二度と来るもんですか!!」


私は窓辺に駆け寄り、遮光カーテンをシャッと荒々しく引き開けた。

眼下に広がるのは、昨日の激流で綺麗サッパリ洗われた中庭と、その先の泥濘地。

すでに泥人間たちの姿はなく、静寂が戻ってはいたが、一度でもあんな狂気の不審者集団に押し寄せてこられた場所で、どうして呑気に昼寝などできようか。


「標高が高くて涼しい? 空気が綺麗? そんなもの、安全な睡眠環境の前には屁の突っ張りにもならないわよ!

いつまた窓の外から血まみれの指を持った筋肉ダルマが飛び込んでくるか分からないような場所で、誰がリラックスして二度寝できるというの!

もう別荘なんて行かないわ! 我が家の本邸の、三重結界が張られて近衛兵が門を固めているあの私室のベッドが、一番落ち着くに決まっているじゃないの!!」


やっぱり、住み慣れた我が家が一番なのだ。

王都が多少蒸し暑かろうが、部屋の中に氷を山ほど持ち込ませればいい。

私はプンプンと鼻息を荒くしながら、リディエに着替えを急がせ、朝食のクロワッサンを口に放り込むと、逃げるように快速馬車へと乗り込んだ。

目指すは王都。

あの堅牢極まりない、誰にも邪魔されない我が公爵邸のシェルターへと、一刻も早く引きこもるために!


***


――しかし。

その頃、アウグスブルク高地へと通じる南の山道では。

王都から徹夜で爆走してきた【救出部隊】の面々が、人類の常識を覆す光景を前にして、言葉を失い凍りついていた。


「急げッ!! 馬を潰しても構わん! エレオノーラのもとへ急ぐのだァッ!!」


血走った瞳で先頭を疾走していたのは、王太子レオポルトだった。

その背後には、大剣を握りしめ鬼気迫る形相のマティアス率いる近衛第一・第二騎兵連隊二千、そして純白の軍馬に跨がり結界魔導を展開し続ける神官長シルヴァン率いる神殿神聖騎士団。

彼らは、エレオノーラが「五千の帝国軍が越境侵略を開始した最前線の山奥へ、単身で囮として向かった」という報せを受け、一睡もせずに街道を駆け抜けてきたのだ。


もし間に合わなければ。

もし、あのお方の御身に万が一のことがあれば――。

レオポルトの心臓は、恐怖と後悔で千々に引き裂かれそうになっていた。


――だが。

峡谷の入り口を抜け、高地へと続く最後のなだらかな坂道に差し掛かった、その瞬間。


「……待てッ!! 全軍、停止ッ!!」


マティアスの鋭い怒号が響いた。

軍馬たちが激しく蹄を鳴らして急停止する。

前方から――もうもうと立ち込める砂埃……ではなく、清らかな朝霧を切り裂いて、巨大な集団がこちらへ向かって歩いてきていたのだ。


「敵軍かッ!? 迎撃陣形をとれ!!」


近衛兵たちが一斉に抜刀し、弓を引き絞る。

だが――霧の中から姿を現したその軍勢を目撃した瞬間、レオポルトも、マティアスも、シルヴァンも、息を呑んで硬直した。


「……な……んだ……あれは……?」


現れたのは、確かにバルディニア帝国の主戦派が誇る【鉄騎兵団】の兵士たちだった。

しかし――。

槍がない。

剣がない。

弓も、盾も、甲冑の胸当てすらも外されている。

五千の屈強な男たち全員が、武器を一切持たず、肩から純白の上質な羊毛毛布をすっぽりと羽織り、まるで神殿の巡礼者のように静かに、整然と列をなして歩いていたのだ。

しかも、その表情。

敗残兵特有の絶望や怨嗟など、微塵もない。

全員が、まるで聖地で魂の救済を受けた修道士のように、穏やかで、慈愛に満ちた、どこまでも清らかな笑みを浮かべていた。


そして、その列の先頭。

馬を引いて徒歩で歩いていた巨漢の男――鉄騎兵団長ゴットフリート将軍が、レオポルトたちの姿を認めるや否や、静かに足を止めた。

将軍の兜はなく、顔にはまだ泥水の跡が残っていたが、その瞳は澄み渡り、胸の前で恭しく手を組んでいた。


「……ゴットフリート将軍……!? 貴様、一体何の真似だ……!?」


マティアスが切っ先を向け、警戒を露わにして問い詰める。

すると、ゴットフリートは敵意の欠片も見せず、深々と、まるで王国の王族に対するかのように優雅な一礼を捧げたのだ。


「……武器を収められよ、王国の騎士たちよ。我らはすでに、刃を交える資格すら持たぬ、ただの救われた魂に過ぎぬ」

「……何だと?」


レオポルトが馬を進め、眉根を寄せる。

ゴットフリートは天を仰ぎ、感涙を瞳に滲ませながら語り始めた。


「我らは昨日、あのアウグスブルク高地において……神の御業を目の当たりにした。

あのお方は……エレオノーラ閣下は、湖一つ分を圧縮した超高圧の神聖水流波を解き放ち、我が五千の鉄騎兵を、一兵の死傷者も出さずに一瞬で無力化された」


「「「…………ッ!?」」」


「それだけではない……!」

将軍の声が震え、頬を涙が伝う。

「冷え切った泥濘地で凍死寸前だった我ら侵略者に対し……あのお方は、倉の毛布を放り投げ、温かな大鍋のスープを恵んでくださったのだ……! 『腹を満たして、体を温めて、命あるうちに故郷へ帰りなさい』と……!

圧倒的な力で我らを屈服させながら、その命を奪うどころか、武人の誇りを守るためにあえて悪態を演じてまで我らの命を救ってくださった……!!」


ゴットフリートは膝をつき、胸に手を当てて叫んだ。


「我が軍は、エレオノーラ閣下の前に完全なる【無条件降伏】を受け入れた!

血判を記した降伏文書は、すでに閣下の侍女殿へとお納めしてある!

我が鉄騎兵団五千は……本日ただいまより、エレオノーラ閣下の僕であり、あのお方の安寧を脅かすいかなる不届き者をも叩き潰す盾となることを誓った! ……通していただきたい。我らは本国へ戻り、皇帝陛下にこの奇跡のすべてを報告せねばならぬのだ!!」


「…………」


沈黙。

山道に、朝風が吹き抜ける。

近衛兵たちの手から、槍がカランと音を立てて落ちた。

マティアスは剣を握ったまま、ガタガタと全身を武者震いさせていた。


「……たった……たった一人で……」


マティアスの唇から、魂の抜けた声が漏れる。


「五千の精鋭部隊を……死傷者を一人も出さずに水流で押し流し……敵将を心服させて無条件降伏を勝ち取られたというのか……!?」


「ああ……あああ……ッ!!」


レオポルトは馬上で胸を掻きむしり、空を仰いで号泣した。

涙が止まらなかった。

囮になって死ぬ覚悟などではなかったのだ。

彼女は――最初から、国家間の全面戦争の危機を、自らの圧倒的な力と底知れぬ慈悲によって、血を一滴も流さずに終わらせるための【完全無欠の親征】を完遂してみせたのだ!


「エレオノーラ……! どこまで……どこまで世界を愛し、どこまで気高く孤独なのだ、お前という女性はァッッ!!」


シルヴァンが馬から滑り落ち、泥の道に跪いて祈りを捧げ始める。

「神聖にして冷徹なる軍略……そして敵すらも包み込む無私の慈愛……。あのお方こそが……真の、現世に降臨された二大称号の主……!」


救出部隊は、もはや救出の必要などどこにもないことを悟り、そのままエレオノーラへの狂気的な賛美の巡礼団へと姿を変えて、踵を返したのだった。


***


――そして、その報せは。

瞬く間に国境を越え、隣国バルディニア帝国の帝都へと激震をもたらした。


「ば、馬鹿なッッ!? あり得ん、あり得んぞォォォッッ!!」


帝国宮殿の謁見の間。

玉座から転がり落ちそうになりながら絶叫したのは、バルディニア帝国の絶対君主、皇帝ルドルフト三世だった。

皇帝の足元には、参謀本部から届けられた緊急電報、そして先ほど帰還したゴットフリート将軍からの直筆報告書が散乱していた。


『鉄騎兵団五千、アウグスブルク高地にてグランヴェル公爵令嬢エレオノーラの単独迎撃を受け、完全無血にて無力化。

敵は戦略級古代水流魔法を行使。我が軍の死傷者ゼロ。

直後、敵より毛布および温食の下賜を受け、全将兵が心服。

ゴットフリート将軍、独断にてエレオノーラ閣下に無条件降伏を受諾せり』


「死傷者ゼロで五千が壊滅しただと!? 湖を落とされただと!? 敵軍にスープを振る舞われて全員が信仰の信徒になっただとォッ!?」


皇帝の額から、脂汗が滝のように噴き出していた。

謁見の間に居並ぶ帝国の元帥や将軍たちも、全員が顔面を蒼白にし、膝をガクガクと震わせている。

先日の使節団のヴァルデマール将軍に続き、今度は主戦派の筆頭であったゴットフリートまでもが、一戦も交えずに精神を完全に粉砕されて帰ってきたのだ。


「化け物だ……! あの小娘は、人の姿をした神の化身か、あるいは古代の戦略兵器そのものだ……ッ!」


皇帝は玉座の手すりを爪が割れるほど強く握りしめた。

恐怖。

底知れぬ圧倒的な恐怖。

もし、これ以上あの女を刺激したらどうなる?

今回は「庭の水を撒いて毛布を投げた」だけで済んだ。

だが、もし彼女が本気で不機嫌になり、その古代魔力を帝国の本土へ向けて解き放ったら――帝都ごと、バルディニア帝国そのものが地図の上から押し流され、更地に開拓されてしまうのではないか!?


「直ちに……直ちに親書を書けェッッ!!」


皇帝は立ち上がり、羽ペンを持つ文官たちへ向かって狂乱の形相で叫んだ。


「不可侵条約の即時更新だ! 関税の免除要求も、航路の要求も、皇子への側室要求も、すべて白紙撤回せよ!

それだけではない! 今回の不法越境侵略に対する謝罪として……国庫から金貨十万枚、純度百パーセントの魔導水晶、帝室秘蔵の宝飾品をありったけ馬車に積み込め!!

『どうか我が帝国の無礼をお許しください、二度と貴女様の安眠を邪魔いたしません』と……公爵令嬢エレオノーラ閣下へ、平伏の謝罪文を今すぐ送り届けるのだァァァッッ!!」


大陸最強の軍事大国バルディニア帝国が、たった一人の十六歳の少女の前に、文字通り完全に膝を屈した瞬間であった。


***


――そして。

そんな国家間の激震など露知らず。

二日間の強行軍の末、ようやく王都へと戻ってきた私を乗せた快速馬車は、王都の正門へと差し掛かっていた。


「……ふあぁぁぁ。やっと着いたわね」


馬車のシートの上で、私は大きく伸びをした。

山道はガタガタ揺れるし、宿場のベッドは硬いしで、結局道中もろくに熟睡できなかった。

だが、それももう終わりだ。

我が愛しの公爵本邸に帰れば、完璧な遮音・遮光結界の張られた私室と、ふかふかの特注羽毛布団が待っている。

今日から三日間は、誰が呼ぼうと絶対にベッドから一歩も出ずに寝腐ってやるのだ。


「リディエ、着いたらすぐに熱いお風呂を沸かせなさいね。泥臭い空気は全部洗い流して、清潔なパジャマに着替えるわ」

「かしこまりました、お嬢様。……ただ、お嬢様、少々外の様子が尋常ではないようでございます」


「……え?」


リディエの言葉に、私は怪訝そうに眉をひそめ、馬車の窓のカーテンを少しだけめくった。


――その、瞬間。


ドォォォォォォォォォォォンッッッッ!!!!


耳を聾するような、凄まじい大歓声とファンファーレの音が、私の鼓膜をダイレクトに貫いた。


「「「うおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」」」

「「「エレオノーラ様ァァァッッ!! 救国の聖女様がお戻りになられたぞォォォッッ!!」」」


「……は?????」


私の思考回路が、完全にフリーズした。

視界を埋め尽くしていたのは――王都の城門から目抜き通りに至るまで、文字通り足の踏み場もないほどに密集した、数十万人の大群衆だった。

頭上からは、空を覆い尽くさんばかりの色とりどりの花びらと金銀の紙吹雪が雪崩のように降り注ぎ、教会の鐘が一斉に狂ったように打ち鳴らされている。


沿道に掲げられた、無数の巨大な横断幕。

そこには、金糸と白銀の塗料で、誇らしげにこう殴り書きされていた。


『帝国軍五千を単身で撃破! 無血の勝利を刻みし【軍神】エレオノーラ様万歳!』

『敗者にすら毛布と温食を与え救済せし【慈愛の聖女】エレオノーラ様万歳!』


(……は? ぐ、軍神……? 慈愛の聖女……?)


私の口から、魂の抜けた声が漏れ出た。

馬車が城門をくぐると、群衆が左右に割れ、そこへ白銀の甲冑を着た近衛兵たちと、純白の法衣を着た神官たちが整列して敬礼を捧げた。

先頭に立っていたのは、馬から飛び降り、涙で顔をぐしゃぐしゃにした王太子レオポルトだった。

レオポルトは馬車のドアに駆け寄り、窓越しに私の手を取ろうとして、必死の形相で叫んだ。


「エレオノーラ……! 無事だったのだな……!

帝国軍五千を、一人で、水流の奇跡で無力化し、敵将に毛布を与えて無条件降伏を勝ち取ったという報せ……国中を駆け巡っているぞ!

帝国皇帝からも、全面降伏と莫大な賠償金を約束する親書が届いた!

お前は……お前は、この国を……いや、大陸全土を戦火から救ったのだ!!」


「……はい?」


続いて、馬を並べたマティアスが、大剣の柄に手を当てて咆哮する。


「戦局を支配する冷徹無比の【軍神】! そして敵すらも温かく包み込む【慈愛の聖女】!

国内外のあらゆる貴族、民衆、そして敵国の兵すらもが、貴女様をこの二大称号をもって讃えておりますぞッ!!」


「「「軍神聖女様万歳ッ!!」「エレオノーラ様万歳ィィィッッ!!」」」


地鳴りのような賛美の嵐。

広場に集まった市民たちが一斉に地面に跪き、手を合わせて私を拝み始める。

紙吹雪が舞い、花束が馬車の屋根に次々と投げ込まれ、王都中が完全に熱狂の祝祭パレードと化していた。


その熱狂の中心で。

馬車の座席に座り、カーテンを握りしめたままの私は――。


(……なんでよぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!)


声にならない、血を吐くような魂の絶叫を上げていた。


(私……! 私、ただ蒸し暑いのが嫌で、涼しい山奥でお昼寝しようとしただけよ!?

庭を砂で汚されたからスプリンクラーで掃除して、泥だらけの不審者に残飯と不要毛布を投げつけて『汚いから消えろ』って追い払っただけじゃないの!!

なんでそれが帝国軍の電撃侵略を撃退したことになってるのよ!?

なんで敵の皇帝が土下座して金貨を差し出してきてるのよ!?

軍神!? 慈愛の聖女!? 二大称号って何なのよぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!)


悪役令嬢として嫌われ、国外追放されて南の島でニートになるはずだった。

なのに、今や国内はおろか、敵国からすらも「神」として崇拝され、私の地位はもはや国王すら頭を下げざるを得ない絶対不可侵の領域へと到達してしまっている。


「もう嫌……! 私の……私の愛しの自堕落ライフが……またしても銀河の果てまで吹き飛んでいくわぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!」


悪役令嬢エレオノーラの悲痛極まりない慟哭は、全王都に鳴り響く歓喜のファンファーレと、数万人の民衆が合唱する聖歌の中へと――哀しくも、完全に、跡形もなく掻き消されていくのだった。

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