↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/99

第5-11話 ファングドフラワーの帰還って、何だ!?

「知ってる場所に出て来れたのはいいけど…これからどうしよう!?」

レッカが言うと、ヒサゴは、


「冒険者ギルドに戻って、攫われた事実と、状況を説明しないと…」


「では、このまま『南都』に…」


「…いや、それより、近くの村に助けを求めた方が早いかな!?」

アゲハが言うと、ヒサゴが、


「そう言えば、この近くに、ドワーフの集落があるんじゃなかった!?ボルドになら、話が通じやすいと思うんだけど…」


だがレッカは首を横に振る。

「いや………今回はやめとこう。」


「そうだね………」


『湾』の南岸を馬で西へと進む一行。左手に見えた谷間に、煙の上がった集落…ドワーフの集落が見えたが、ヒサゴ達は素通りした…


一方、ドワーフの集落では…


たまたま集落の入口付近まで出ていたボルドは、『南都』へと続く街道を、3頭の馬に分乗する5人の女性冒険者が駆けて行くのを目撃した。


「…レッカちゃん…!?裸馬に乗って、どうしたんだろ!?」


首をかしげるボルド。集落の奥には赤茶けた岩肌が露出した一角と、轟音を立てて落ちる滝と、その瀑布に設置された巨大水車…水車に接続された巨大魔道具からは、雷のエネルギーを発している。


ミスリルの露天掘り鉱脈と、精錬施設らしい…


     ※     ※     ※


一方、『南都』冒険者ギルド…


大勢の冒険者達でごった返す『酒場』に、一人の場違いな男が入って来た…ロクスケである。


(こ、この俺が、また、ここに来る事になるなんて…)


冒険者ギルドには、あまり良い思い出の無い彼だった。だが、そうも言ってはいられなかった。周囲で声高に喋る者達に、思わず耳を塞ぎそうになりながら、ロクスケはカウンターへよろよろと足を運ぶ。


「いらっしゃいませ………あら、あなたは確か、呪文屋の…」

ちょうどカウンターにいた、アゲハ達の担当受付嬢が応対した。


「お、おう…ろ…ロクスケ、だ……」

しどろもどろに答えるロクスケ。今や大勢の客が来る様になった呪文屋の店主の彼だが、人付き合いを苦手とする性根は何ら変わっていなかった。


「本日は、どの様なご用件でしょうか?」

受付嬢が訊ねると、ロクスケは、


「アゲハ………は、いるか………!?」

(違うだろう!!俺が言わなきゃならんのは、そういう事じゃ無いだろう!!)

ロクスケは内心、焦った。その心の内を知らずに、受付嬢は、


「アゲハ様でしたら、お仲間の方と一緒に、『渡河点』までクエストで出かけられました。そのまま数日、向こうで過ごされるそうです。」


「そうか………」

そんなの、知ってる情報だった。


「アゲハ様に何かご用か言伝がございましたら、私が承りましょうか?」


「いや、いい………邪魔したな。」

そう言い残して、後ろを向き、ロクスケはカウンターから歩み去ろうとする。


(大体…あいつ等が助けを求めてる理由を、どう説明するつもりなんだ…!?俺の夢しか、根拠が無えだろう………)


一歩、二歩…カウンターから出口へ向かう動線で、ロクスケは思い出す。


バザーで一緒に呪文書を売った日の事を、


アースドラゴンを倒した後の休暇で、一カ月間店の手伝いをしてくれた日々を、


客が途切れた合間に、術式談義に花を咲かせ、


時には拙い料理を振舞ってくれ、


そして、店の手伝い初日、お茶と茶菓子を持って現れた彼女、その言葉………


(アゲハ………)


そして、昨夜の夢………


『助けて………』


ズキっ!ロクスケの胸が痛んだ。


(アゲハ………くそぅっ!!なんで………!?他人と関わるとろくな事にならないって、分かってるはずなのに………


あいつが今、ひどい目にあってると思うだけで、何でこんなに心が苦しくなるんだよ………ッ!!!)


くるっ!ロクスケは踵を返し、ズカズカズカ…歩み去った道を再びカウンターへと戻っていた。


「………!?」

挙動不審に首をかしげる受付嬢に、ロクスケは、


「あ………アゲハ達が、助けを、求めてる。」

言った。

「そ、捜索隊なり救援なりを、今すぐ出してくれ!!」


シ ン … 一瞬、『酒場』が静まり返った。そして、


「アゲハ先生~~~っ!!」「「「アゲハ先生~~~っ!!!」」」

シンコと、アゲハのファンの女魔術師3人が悲鳴を上げた。


「聖女様ぁぁぁぁぁ~~~!!」

キュリアに命を助けてもらったベアーが叫んだ。


「ヒサゴぉぉぉ!!」

スカーが涙を流した。


「レッカぁぁぁぁぁ!!!!!」

向こうで初老の男性が叫び声を上げているが………ロクスケは知らなかったが、レッカの剣の師匠だった。


(アゲハ達………意外と愛されてるんだなぁ…)

妙な事で感動するロクスケ。


「救援を出そう!!『渡河点』だな!?お、オレが行く!!」

「私達も行きます!!」

スカーとシンコがカウンターに詰め寄るが、受付嬢は、


「み、皆さん、落ち着いて下さい!!ロクスケさん、それは、どこの情報ですか!?『ファングドフラワー』が遭難なり事故なりに遭ったという、確たる証拠はあるんですか!?」


『酒場』の皆が固唾を飲んで見守る中、ロクスケは何も言えなくなった。そこへ…


ガランガラン!!「た、大変だぁ!!」入口のドアが乱暴に開かれ、一人の男…制服を着た衛視が入って来た。


「お前…今日、非番じゃ無いだろう!?こんな所で何してんだよ!?」

レッカの剣の師匠が訊ねたが、衛視の男は、


「ふぁ、『ファングドフラワー』の方達が、東の第二門で、救助を求めてます!!」


「アゲハ達が…!?」「東の第二門って…『渡河点』と正反対じゃねぇか!!」「どうしてそんな所に………」

騒然となる『酒場』。衛視は一呼吸置いて、


「『渡河点』で誘拐されて、『峠』を越えて脱走して来たそうです!!」


「「「なぁぁにぃぃぃ~~~!!??」」」


ド ク ン !! ロクスケの目の前が真っ暗になった。アゲハが無事だった…いや、その前に、


………アゲハがひどい目に遭っていた………!!!


不意にロクスケの視界が反転する。後頭部に激痛が走り、視界いっぱいに『酒場』の天井が広がり、ロクスケの意識が遠くなって行った…薄れ行く意識の中でロクスケが聞いたのは、


「ロクスケさん!?ロクスケさーーーん!?」「呪文屋が倒れたぞ!?」「誰か!誰かーーーっ!!」


     ※     ※     ※


挿絵(By みてみん)


     ※     ※     ※


ザザーーーン…ザザーーーン……


潮騒の響く海岸に立つ1人の幼い少年。波の中に貝殻を見つけ、しゃがみこんで拾い上げる。


少年はそれを両手に掲げ、見つめ、遥か遠く、この貝殻が来たであろう、海の向こうを眺める。


ふと、幼児が隣を見ると、そこに誰かが立っていた。


白いワンピースの少女だった。金髪で、耳は、短く尖った…


少年は手の平の中の貝殻を差し出し、自身の小さな大発見を興奮気味に語ると、少女はにっこりと微笑む。


ふと、少年の頭に、温かい物が置かれる。細く、節くれだった指の、手のひら。見上げると、そこに立っていたのは、杖をついて腰の曲がった、白髪にローブ姿の老人。少年の頭をなでながら、白髭の中の唇が、言葉を紡ぐ。


『よく、やった………』


     ※     ※     ※


「………はっ!?」


目を開けたロクスケの視界に、再び『酒場』の天井が見えた。


「………」

ロクスケは上体を起こす。ロクスケの隣にしゃがみこんでいたのはスカー。


「ぃよっ!!」

おどけた挨拶をするスカーに、ロクスケは、


「俺は………どのくらい倒れてた…!?」


「数分、かなぁ!?」


「そうか………恥ずかしい所を見せたな………」


「…何が恥ずかしいっつうんだよ!?」

スカーは飄々と答えたその時、


ガランガラン!!入口のドアが開き、ゾロゾロと女達が入って来た。ヒサゴにレッカにキュリア、見かけない女戦士…


「「「!!!」」」

誘拐されたと聞いた『ファングドフラワー』の無事な姿に湧き上がるギルドメンバー達。そして…


最後に入って来たのは、とんがり帽子に尖った耳、胸元の開いたヘソ出しビスチェにミニスカートの、美貌の女魔術師!!


「皆さん、本当にご心配をおかけしました!!」

ヒサゴが深々と頭を下げる中、ダっ!!駆け寄る影があった。


「アゲハっ!!!!!」


ロクスケはアゲハに駆け寄り、公衆の面前で、彼女を抱きしめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。