第5-8話 リーダー失格って、何だ!?
オレは、リーダー失格だ………
※ ※ ※
数日前、牢獄…
「おい!ビータ!!しっかりしろ!!目を開けろ!!気を確かに持てっ!!!」
半ば泣き声で叫ぶエーコの傍らに横たわる男性…ビータ。二人ともボロボロの服に伸び放題の髪、そして…ビータの腹には大きな刺し傷が開き、血がドクドクと後から後から流れ出ている…
「り………リーダー………サーセン………ドジっちまい…ました………ハァハァ…」
ビータが切れ切れの息で言った。
「しっかりしろ!!お前!!パン屋をやるんだろ!?お前の父ちゃんや母ちゃんみたいに!!それが夢だって!!だから…だからオレは………っ!!」
言いかけてエーコは言葉をつぐんだ。だからエーコは、仲間を連れて『渡河点』へと逃げ、その『渡河点』のパン屋で、ビータは働けなかったのだ。余所者だからと断られて………
「ああ…あああ…シースケ…ディー…イーサン…エフミ………」
ビータが、先に死んでいった仲間達の名前を次から次へと口にする。もしかすると、彼には見えているのかもしれない。エーコは焦って、
「い、行くな!!戻って来い!!お、オレはお前の焼いたパンが食いてぇんだ!!約束だったろ!?いつか食わせてくれるって…!!」
だがビータは虚ろな目で、
「………父ちゃん…母………ちゃ………ん………」
ガクっ!!ビータの首と、腕が、力無く垂れ下がる。
『六つ首の大蛇』…そのパーティー名の何たる皮肉か。大蛇の首は一つ、また一つと落ちて行き、最後の一つも、今…
「ビータ………ビぃータぁぁぁぁ!!!」
慟哭が、牢内にこだまする………
「………もういいだろう、いい加減やかましいんだよ。」
割って入るノームの女術師。ビータの亡骸を、2人のノームが頭と足を抱えて担ぎ上げる。
「待って!!待ってくれ!!連れてかないでくれ…ぐふっ!!」
懇願し、女術師に縋りつこうとするエーコの腹に、女術師の杖の先端が打ち込まれる。女術師は低い声で、蔑む様に、
「………バカだよお前等。地獄から逃げた先は、別の地獄に決まってるだろうに…」
腹を押さえて崩れ落ちるエーコを置き去りに、ノーム達はビータを連れて出て行き、ガチャリ!鉄格子の鍵が下ろされる。去り際に女術師は、
「………全く…後始末に補充…手間ぁかけさせるんじゃ無いよ…」
エーコは一人になった。冷たい牢獄の中で………
そして数日後………
※ ※ ※
ザ ク っ ! ! !
何人もの仲間達を葬って来たステゴザウルスのスパイク付き尻尾は、エーコの剣の一撃で、まるでナイフを立てられたバターの様に、根本から切れた。
「………え!?」
それを成し遂げたエーコ自身も信じられなかった。冒険者時代から使い続け、牢屋に囚われてからはろくに手入れも出来なかったボロボロの剣で………
(あの魔法使い…アゲハの魔法…そのせいか…!?)
そうとしか、考えられなかった。『南都』を抜ける直前には、魔法使いの魔法は呪文詠唱が要らなくなったと風の噂で聞いていた。『ヘキサヘッドヒドラ』では稼ぎが少ないために買えなかったが…
(こんなに、すごかったなんて………)
「今だ!!奴はもう丸腰だ!!畳みかけろ!!!」
「へへ…大蛇の首もダイナソーの尻尾もちょん切らないとね!」
ヒサゴに言われてレッカが剣を構え直す。尻尾を切られたステゴザウルスは、バランスを崩して向こうでもがいている。
「ラン、フロギストンボール!!」
アゲハが叫んだが何も起こらない。しばらくしてステゴザウルスの顔面に火の玉が発生し、グォォ…ステゴザウルスはうめき声を上げた。あれは一体何が起きたのだろう…
「ラン、ウェポンアーツ・レッカスラッシュ!!」
レッカがエンチャントウェポンで発行するミスリルソードでステゴザウルスに斬りつける。
ウォォ…慌てて立ち上がったステゴザウルスは、横を向き、尻を振ろうとするが………何体もの敵を退けて来た尻尾は、もう無い…
「ラン、エンチャントウェポン!!」
短剣にエンチャントをかけたヒサゴが、ステゴザウルスの長すぎる後ろ脚を斬りつける。グォォ…ステゴザウルスは膝から崩れ落ちる。
(すごい………すごいすごい………)
エーコは、ただ茫然とするしか無かった。
「ラン、エンチャントウェポン!!ほらエーコ、あんたもやりなさい!!」
アゲハから魔法が飛び、剣が再び銀色に輝き、ヴィィ…と音を立てる。
「お、おう!!」
慌ててエーコは、剣を槍の様に前へ突き立て、ステゴザウルスへと突進する。
(ああ………オレは、リーダー失格だ………
あの時、ヒサゴの手を取っていれば、ビータ達を死なせずに済んだのに………)
「うおおぉぉぉぉぉっ!!」
グ サ ッ!!
身動きが取れなくなった上に魔法で強化された剣で脇腹を刺し貫かれ、ステゴザウルスは息絶えた………




