第5-7話 ステゴザウルスって、何だ!?
同時刻、『南都』、路地裏通り、ロクスケのスクロールショップ…
カウンターに一人座るロクスケは、いつもより静かな店内を眺めながら、
「…なんか変な夢、見た気がする。あいつが『助けて』………って…」
それから彼は、勝気な女魔術師の顔を思い浮かべ、
「………ま、あいつがそんな事、言う訳無いよな………」
※ ※ ※
同時刻、某所…
うなり声を上げた威嚇するダイナソー…ステゴザウルスに、レッカは、
「ねえ…あんた等の『仕事』って…いつもああいうの相手させられてたの…!?」
「…ああそうだよ!」
エーコはぶっきらぼうに答える。
「…じゃあ、あんたの仲間や牢の前の住人がいなくなったのって…」
「ああそうだよ!オレが馬鹿だったのさ!!」
エーコが吐き捨てる様に答える。
「あのさあ…あたい等なんであいつ等と戦わなきゃなんないのかなぁ…そもそもここ、どこなの!?」
ヒサゴがノームの女術師に問うと、彼女は、
「お前等が知るべき事では無い!さあ早く倒さないと、あいつに踏みつぶされてしまうぞ!!」
言いながら、ノシノシとこちらへ歩いて来るステゴザウルスを指差す。
「…ああもう!やるしか無いか!!」
叫びながらレッカは盾を構え、ステゴザウルスに突進する。
「うおおおぉぉぉ!!」
不意にステゴザウルスは左前脚を深く踏み込む。その瞬間、
「危ない!!」
エーコの声が飛び、反射的にレッカは飛び退く。ステゴザウルスは踏み込んだ勢いそのままに横を向き、尻尾をしならせて、ブン!スパイクのついた先端が前へ向かって飛んで来る。スパイクの先端がレッカをかすめた。
「あ、危なかった…」
エーコの隣まで退いたレッカが呟くと、エーコは、
「あの一撃に、もう何人もやられてるんだ…」
そんなアゲハ達の様子を後ろから監視していたノーム達は、
「やっぱりあいつ等もだめか…脱走組じゃない現役だからって、期待して損したか!?」
するとノームの女術師が、
「それはどうかねぇ…見な、あれを!!」
杖で指す先では、ステゴザウルスと対峙するヒサゴ達が、
「なあエーコ、あいつについて、知ってる事、みんな話して!!」
しかし言われたエーコは困惑して、
「んな事言われても分かんねぇよ!オレ達ずっと命からがら戦ってたんだから!!その間にみいんな、あの角の付いた尻尾に串刺しにされてやられてたんだ!!」
するとアゲハが顎に手を当てて、
「みんな角の付いた尻尾に串刺し…という事は、それ以外に攻撃手段は無いって事よね!?」
今度はヒサゴが、
「言われてみればあいつ、角も牙も爪も無いし、動きも鈍そう。背中の飾りは…文字通りのただの飾りか。」
「身体の割に頭が小さいから、頭もあんまり良くなさそうね。」
アゲハが言うと、今度はキュリアが、
「でしたら、あの尻尾を何とか出来れば…」
「…やってみるか!!」
レッカが低く言った。
「おいおい、正気かよお前等…」
エーコがぼやいたが、ヒサゴは、
「…あたい達でチャンスを作る。その役は、あんたがやりな!!」
4人がそれぞれの武器や杖を持ってステゴザウルスに向き直り、エーコも遅れてそれに倣う。後列で杖を掲げたアゲハが、叫ぶ。
「ラン、ファイヤーボール!!」
次の瞬間、ボっ!! 杖の先から火の玉が現れ、ステゴザウルスめがけて飛んで行く!
「やはりあいつら…ウチと同じ術式を…」
後ろで見ていたノームの女術師が呻いた。
ボっ!!火球はステゴザウルスの頭に当たる。グェェ…思わず頭をよじったステゴザウルスに、
「ラン、プロテクション!!ご武運を!!」
キュリアの防御の呪文を受け、
「うぉぉ!!ラン、ウェポンアーツ・レッカブレード!!」
ザクっ!!ワイバーンを倒したレッカの剣戟がうなる!!
グルル…鬱陶しそうに頭を振るステゴザウルスに、トスっ!!ヒサゴが射った矢が当たる。
火の玉が、剣が、矢が、遠くから近くから次から次へと押し寄せる攻撃に、ステゴザウルスの小さな頭がいい加減について行けなくなったその時、ステゴザウルスの左前脚が再び深く踏み込まれる。
ブ ン ! 二度目の正直を狙った、スパイク付きの尻尾の一撃!
「今だ!!ラン、エンチャントウェポン!!」
アゲハの魔法が飛ぶと、ステゴザウルスの死角に回り込んでいたエーコが、ボロボロだったはずの剣を銀色に光らせて、ステゴザウルスの尻尾の付け根めがけて、振り下ろす!!
「うおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!」
ザ ク っ ! ! !
※ ※ ※
『南都』、路地裏通り、ロクスケのスクロールショップ…
「…家賃を貰いに来たよ…」
そう言って、大家の老婆が店内に入って来た。
「…ほらよ。」
ロクスケがカウンターから幾ばくかの金貨を差し出すと、大家はそれを受け取る。
「毎度。ツケの家賃もだいぶ減ってるねぇ…この調子で頼んだよ。」
そう言い残して店を出て行こうとする大家にロクスケは、
「ま、待ってくれ…!!」
大家を呼び止める。
「…何だい!?」
「あ…あんたその…あ、アゲハはどうしてた!?」
アゲハはロクスケの呪文屋の裏の借家に住んでいる。大家にとってロクスケと同じ店子という事になる。
だが大家は、きょとんとしたまま、
「アゲハちゃんなら『渡河点』だよ。アタシの元店子が引っ越すから、荷物持ちと道中警護で一緒に行って、何日かあっちにいるそうだよ。」
「そうか………」
そう言えばヒサゴも昨日、去り際に言っていた。『何日間か泊まりの任務だ』、と。冒険者の活動に遠征もつきもの。遠くへ出かけているなら、見かけないのも当たり前だ。
(夕べの夢は、ただの変な夢、考えすぎか…)




