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ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜  作者: 白洲詠人
第四部 ファイヤーキューブって、何だ!?
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第4-10話 弱体魔法って、何だ!?

はぐれトロール討伐クエストの帰り道…


「な…何も出来なかった~~~…」


馬車の中でがっくりと項垂れるオンセ。だが、その隣に無言で俯くシンコは考えていた。


(私の眠りの術式が…全然効いてなかった…)


こんなもんだと分かっていた。そもそも自分は魔術師として、冒険者として大成しないって…だが、


全てを諦めていたはずのシンコの脳裏に、生まれて初めて、『悔しい』という思いが芽生えたのかもしれない…


「あ…あの、アゲハ先生…」


「ん!?」

いつもより2人増えて狭くなった馬車の中でアゲハは振り向く。


「ああいう大型モンスターを相手する時、魔術師はどう立ち回ればいいんですか!?」


「…言っとくけど、あなた達にはまだ早いわよ。今回はあたし達と一緒だった上に、1匹しかいない事が分かってたから連れて行ったんだから…」


「いずれ、大型を相手にする事になった時のためです!それに、先生は仰っていました。『生き残るために、常に考えろ』って!」


「………」

揺れる馬車の中でしばし黙った後、アゲハは、

「そうね…それなら……」


     ※     ※     ※


数刻後、冒険者ギルドの酒場…


「…アゲハも何で教えちゃうかなぁ…」

いつものテーブルでヒサゴが言った。


「そうですわ…万が一にも危ないクエストを受けようとしたら…」

キュリアが眉をひそめて言った。


「アゲハだったら、『ダメって言ったらダメ!!』って、しかりつけるかと思ったのに…」

レッカがからかう様に言うと、アゲハは、


「…あたしだってそうしようかとも思ったわよ。でも…」


「でも…!?」


「あの時のシンコの目、輝いてたわ…実はあたし、あの子がここに来た日…最初の授業の前日にあの子と会ってるんだけど、あの時は死んだ魚…いいえ、売られてく家畜の様な目してたわよ…」


「あー…」ヒサゴとレッカにも心当たりはあった。


「そんなあの子が、前を向いて、将来の事考えれる様になったんだもの…やる気を無くさせる訳には行かないわ………」


     ※     ※     ※


同時刻、ロクスケのスクロールショップ…


「それでまた俺の店に来たのか…」

カウンターのロクスケが言うと、シンコは決意に満ちた顔で、


「はい…ですから、お願いします!」


「分かった…書類を用意するから、棚から取って来な。」

そう言うとロクスケは引き出しをゴソゴソと探りはじめ、シンコは棚から一巻のスクロールを取り、カウンターに置く。


表紙に書かれていたのは、"Paralyze(パラライズ)cube(キューブ) Programmed by Ageha"


「大きな動物やモンスターほど、スリープ系の魔法で眠らせにくい。多少催眠ガスを体内に取り込ませても、十分に眠らせられる量が脳に到達するとは限らんからな。だから…局所的な麻痺を狙う。腕なり足なり、末端を狙って、身動きが取れなくなった状態で、戦士に討ち取ってもらうんだ。」


「なるほど………」


「じゃあ、書類書いてくれ。あと、頭金の銀貨1枚も…」


「あ、はい…」

書類にサインをして銀貨を払いながら、シンコは思った。ファイヤーキューブに、スリープキューブに、パラライズキューブ。これで自分が使える術式は、3種類。そして、自分が1日に使える術式も、3回…


いくら取れる手段を増やしても、自分にはそれを、十分に活かしきる事が出来ない。


それに比べてアゲハ先生。午後からのトロール討伐では、自分には到底使えない様な魔力消費の多い術式を連発していた。


「あ、あの…店主さん…」

この店主…ロクスケは、アゲハ先生と親しそうだった。だから…何か知ってるのかもしれない。

「…アゲハ先生は、どうしてあんなに高い魔力を持っているんですか!?」


「………さあな。俺自身、あいつと知り合ったのはほんの半年前だし。」


「何か、秘密があるんですか!?アゲハ先生の魔力に!?」


「そんなのアゲハ本人に聞けよ。」

ロクスケ自身がシンコの魔力を測定したのだ。彼女が魔力の低さに悩んでいる事は分かった。


「何か手っ取り早く、魔力を高める方法が…」


「無い!!」

普段ボソボソとしか喋らない店主の大声だった。


「………っ!!」

生来気弱だったシンコは男の大声に縮こまる。


「あ、ああ…済まない…」

慌てて取り繕う様に謝るロクスケ。


「あ、いえ…」

つられて間抜けな返事をするシンコ。


「あ…アゲハは……魔力量について…魔力量を増やす方法について、何か言ってたのか!?」


「あ、いえ、えーっと…と…特には何も…」


「そ…そうか…じゃ、じゃあ、無いんじゃないか!?」

言いながらロクスケはシンコがサインした書類を引き出しにしまう。

「ま、まあ、魔力も身体能力の一つだから、使い続ければ伸びてくんじゃないか!?」


「そうですね…私はまだ修行中の身ですから…地道に練習してみます…」


それじゃあ、失礼します。 おう。支払いきちんとな。 そう言い交わしてシンコは店を後にした。


残されたロクスケは、カウンターの奥の部屋に引っ込む。テーブルの上に無造作に置かれっぱなしになっているのは、"Swallowtail Magic Crest"と書かれた本。難しい説明文の傍らに、羽を広げたアゲハ蝶の様な紋様を背中やら腕やらに描かれた人物の絵が何枚も描かれており、その回りくどい文章は、要約すると、『人間の魔力を増幅する紋様』という内容だった………

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