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ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜  作者: 白洲詠人
第四部 ファイヤーキューブって、何だ!?
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第4-8話 ワイバーンスレイヤーのその後って、何だ!?

翌日からも、新人冒険者達の、そしてアゲハ達の研修の日々は続いた。午前中はそれぞれの職種毎の講座や訓練、午後は仮入隊したパーティーでの実戦の日々が…


     ※     ※     ※


午前、冒険者ギルドの、魔術師の教室になっている会議室…


「私達『南都』の冒険者は、『南都』周辺…東の『湾』の南岸が主戦場になります。初心者冒険者は東の第二門の近くで、ゴブリン等の小鬼型モンスター討伐の他、狼や猪等の様な、動物系アグレッシブモンスターを相手にするのもいいでしょう。戦法は小鬼と同様で結構です。あまり『南都』から離れすぎない様に気をつけて。それから…」

魔術師達の前で教鞭を取るアゲハ。

「…万一ネームドモンスターを発見した場合は、クエストを放棄してでもその場から離れて、ギルドに目撃報告を上げて下さい。あなた達が相手をするのはまだ危険です。ノンアグレッシブの動物系のネームドを見かけた場合も同様です。情報が真実である事が確認されれば報酬が出て、最速から2時間以内の全情報提供者で山分けされます…はい、そこのあなた?」


手を上げた生徒をアゲハが指差すと、その生徒は起立して、

「一度倒したモンスターが、何度も生き返ってるんですか!?」


「大型化して狂暴化した野生生物に、人間が勝手に同じ名前をつけているだけで、本来別の個体です。ですが、同じ動物なので、同じ方法で対処出来るため、そう呼んでいるのです…」


     ※     ※     ※


同時刻、『南都』東新街区…


「わっしょい!!」「「「…わっしょい」」」「わっしょい!!」「「「……わっしょい…」」」


世が世なら苦情が出そうな大きな掛け声が響いていた。正確には最初の1人の声だけが大きく、続く複数の声は力無い。


東新街区を駆ける一団、先頭を走るは赤銀色のミスリルプレートを纏ったレッカ、続くはレザーアーマー姿の新人冒険者の戦士達、その中にはオンセもいる。レッカは溌剌と走り、新人達はその後をへたばりながらついて行く。


腰にミスリルソードを履き、盾を背負ったレッカの背中を、疲労で気が遠くなりながらも見つめるオンセ。鋼より軽いとはいえ、ミスリルの鎧はレザーアーマーよりずっと重いはずなのに、レッカは息一つ乱れている様子は無い。


「レッカちゃんおはよう!!」「精が出るね、レッカちゃん!!」「新人さんも頑張れよ~~~!!」


東新街区の住人達が、レッカに挨拶する。レッカ先生はこの辺りに住んでるらしいが、住人から慕われてるな。ワイバーンスレイヤーなら当然か…


だがオンセは知らなかった。レッカがここに住む様になったのが、ほんの一か月前だという事に…


     ※     ※     ※


数刻後、東の第二門の外…


「「「一!!二!!一!!二!!」」」


レッカの掛け声に続いて素振りをする一同。流石に街中で真剣で素振りをする訳にも行かないため、外まで出て来たのだ。


レッカの『授業』は、ずっとこんな感じだった。フル装備でひたすら走り回らされ、真剣で素振りをさせられ…これまで剣の師匠に教わっていた事と何ら変わらない。むしろずっとハードになった様な…


レッカ先生は、最初に聞いていたのとイメージが全然違う。それが、彼女の生徒達の総評だった。


ワイバーンをほぼ一人で倒した、ミスリルの鎧を纏った女戦士。そんな人が先生になってくれるなら、どんなすごい剣技を教えてもらえるんだろうと思っていたが…


『こんな基本的な事ばかりじゃなく、もっと実戦で役に立つ事を教えて下さい。』


恐れ知らずの新人がレッカに意見した事もあったが、彼女はニコニコ微笑んで、

『こういう事が一番大事なんだから…』

と言うだけだった。


ワイバーン討伐の時、レッカは戦士にでも使える魔法…剣技を記録して再生する術、『ウェポンアーツ』を駆使して、華麗な技を次々と繰り出したらしい。その剣技は一巻の巻物(スクロール)にまとめられ、路地裏通りの呪文屋で売られているらしい。だが、レッカは生徒達に、その巻物に手を出す事を禁止した。『君達にはまだ早いよ』『まずは、基本を覚えないとね』と言って…実際、それらレッカのウェポンアーツは新人冒険者向けローンの対象外になっているため、手が出ないが…


(こんなんで一人前になれんのかなぁ…)


真剣を振り下ろす感触を確かめながら、オンセは思った。


     ※     ※     ※


同時刻、冒険者ギルドの教室…


「…あと、東と南の新街区に出る、モールやラット、バット等の討伐も新人にはお勧めです。」


新人魔術師の1人が手を上げる。


「アゲハ先生、街中にモンスターが出るんですか!?」


     ※     ※     ※


同時刻、東新街区に戻って来たレッカ一行…


「れ…レッカ先生…そんな目立つ鎧着て街を走り回って、留守中や寝てる時に盗まれたりしないんですか!?」


腕も脚も痛くなってきたオンセがレッカに問う。


     ※     ※     ※


同時刻、冒険者ギルドの教室…


新人魔術師の問いに、アゲハは答える。


「それは…この『南都』は本来、『奧都』の王族や貴族の避寒地だった物を、『奧都』が陥落して、逃れて来た避難民を受け入れるために、東と南に拡張した街なんです。その際、新しく街を広げた区画は()()()徹底的に魔物を駆除しました。けど…地下までは手が及ばなかったんです…」


     ※     ※     ※


同時刻、東新街区…


「ああ、それはね…」


新人冒険者の問いにレッカが答えようとしたその時、


「化け物が出たぞ~~~っ!!」

向こうから叫び声がした。それを聞いたレッカは、


「みんな、街の人を助けるぞ!!現場に駆け足だ!!」


そこからさらにわっしょいわっしょいと走った先には、怯える数人の住人達。


「モンスターはどこですか!?」

レッカが問うと住人の1人が、


「ああレッカちゃん、あ、あそこ!!」

指差す先には、道の真ん中に開いた大きな穴と、そこから這い出た巨大ネズミ(ジャイアントラット)巨大コウモリ(ジャイアントバット)、そして、穴から頭を出した巨大モグラ(ジャイアントモール)


東と南の新街区は、本来、街の外だった場所に街を広げた場所。その地下には洞窟が広がっており、モグラが掘った穴を通ってネズミやコウモリが時折湧いて出るのだ。ちなみにその洞窟は、『南都』の地下を路地裏通りの水路の橋の下まで続いている。


「報酬はいつも通り少ないけどみんなで出すから、お願い!!」

住人に言われてレッカは盾を構え、剣を抜くと、新人冒険者に、

「じゃあみんな、ノルマは1人1匹ね!」


「「「え………!?」」」

最早剣を抜く体力すら覚束ない新人戦士達の顔が青くなる。


「えーい!!」ブン! 「このっ!!当たれ!!当たれっ!!」ブン!!

なけなしの元気を振り絞っての新人達の一振りが虚しく宙を斬る中、向こうではレッカが早くもコウモリやらネズミやらを何匹も倒している。

「ほらほら!!早く倒さないと全部私がやっちゃうよ!!」


「がんばれ~~、レッカちゃ~~ん!!」「新人さんもがんばれ~~!!」

住人達が応援する。


やがて、モンスター達は駆除され、穴も元通りに埋められると、


「レッカちゃん、ありがとう!!」「新人さん達もありがとね!!」

口々にお礼を言ってレッカ達を取り囲む住人達に、オンセも戸惑う。レッカは明るく笑いながら、


「みんなが無事でよかったよ。ところでオンセ、さっき何か質問してたけど、何の話だっけ!?」


「いえ…なんでもありません………」


もし万が一、街の誰かによってレッカの装備が奪われて戦えなくなったら、次は誰が、彼等を守ってくれるというのか…!?

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