第4-7話 反省会の後って、何だ!?
同日、夕方、『南都』冒険者ギルドの、いつものテーブル…
「さて…2人の初クエスト、ゴブリン退治は成功に終わったけど…」
ヒサゴはシンコとオンセを見回して言った。
「2人とも、今日の反省点は何!?」
テーブルに俯いてシンコは言った。
「………7匹目のゴブリンが出た時点で、3回目の『スリープキューブ』を重ね掛けすれば…」
続いてオンセが言った。
「…切り結んでるゴブだけじゃなく、周りで寝てるのにも注意を向ければ…」
「…後衛は全体を見渡さなきゃだめよ。」
アゲハが言った。
「オンセ、今日は出てった血の分、余計に食べといて。」
レッカが言った。
「今回は運が良かっただけですわ。お気をつけ下さいまし。」
キュリアが付け加えると、
「「はい………」」
2人は更に頭を下げた。
「じゃあ、今日はここまで、解散!!」
※ ※ ※
同日、夜、冒険者ギルドの寮の大部屋…
早々にベッドに着いたシンコ達だったが、昨夜とは違って寝息すら聞こえて来ない。
もうどのくらい経った頃だろうか、
「あ、あのさ…」
どこかのベッドから声が上がった。
「みんな、今日………どうだった!?」
しばしの沈黙の後、意図を察した誰かが言った。
「…何度も先輩にどやされたよ…」
「もうグダグダになって、最後は先輩達が片付けてくれたよ…」
「私なんか、脇腹をゴブに刺された…まだあの時の気持ち悪い感覚残ってる…」
冒険者初日はみんなあまり上手く行かなかったらしい。そして、オンセも同室だったのか…
「ごめんなさい…」
シンコが呟くと、オンセは、
「謝んないで。あれは私の不注意なんだから…」
「本当にこんな事が、毎日続くのかな…!?」
「あたし達、何日生きてけるのかな…!?」
発言は徐々に不穏な物に変わって行った。
「もう、やだ…」
誰かが漏らしたのをきっかけに、
「帰りたい………」
誰かが言った。
「帰るって、どこへ………!?」
長い沈黙が続いた後、
「………寝よう。明日も大変だろうから。」
誰かがそう言うと、
「………おやすみ…」
それから、周囲のベッドは静かになった。
結局、自分達は屠殺されるのを待つ家畜の身の上に変わりは無かった。
炎の魔法が使える様になったところで、そんなに劇的に強くなれるはずが無かった。
(オンセの負傷は、私のせいだ。)シンコは思った。(私がもっと、しっかりしてば…)
『後衛は全体を見渡さなきゃだめよ。』
アゲハの言葉が、胸に刺さった。
25番を『シンコ』と呼んでくれ、『魔法使い』にしてくれた憧れの美人魔術師は、指導には厳しい人だった。
当たり前だ。アゲハは彼女の先生で、経験も魔力もずっと上なのだから…
寝よう。そう思ったシンコが寝返りを打った瞬間、枕元でジャラリと小さな音が響いた。盗まれない様に枕の下に入れた財布。中にはわずかだが銀貨が入っていた。
シンコ達は一応、クエストには成功した。オンセは重傷を負ったから完全な成功とは言い難いが、シンコと、オンセの財布には銀貨が入った。
命がけの仕事で、得た報酬。
シンコは呟いた。
「………こんなもんよね………」
※ ※ ※
時は少し巻き戻る。ヒサゴが解散を告げた直後の、『南都』冒険者ギルドの酒場…
「2人にはああ言ったけど…あたい達にも反省すべき点はあるよね…」
ヒサゴが言うと、レッカが、
「もっと早く、救援の判断をすべきだった…」
「…でもあまりにも早すぎたら、訓練にならないでしょ!?」
アゲハが言うと、キュリアが、
「ヒールの回数を、もっと増やしません!?」
「あんたがいる環境に慣れたらだめでしょう!?少ない回復でもこなせる様にしないと…」
「だからと言って見殺しにしては、新人研修の意味も私達がいる意味もありませんわ!!」
「見殺し!?あたしが何も感じて無いとでも思ってるの!?」
「…落ち着いて。」
ヒサゴに言われてようやく、興奮して椅子から立ち上がっていた事に気付くアゲハとキュリア。他の冒険者の視線を浴びながら、バツが悪そうに席に着く。
「それにしても、あそこでシンコが石を投げなければ、本当にどうなってたか…」
「アゲハさん、あんなやり方教えましたの!?」
キュリアが問うと、アゲハは、
「そんな訳無いでしょ!?あたしだって肝が冷えたんだから!!」
ヒサゴは驚いて、
「じゃああれは、あの娘が自発的に…!?」
「末恐ろしいな…」
レッカも続けた。
「…と、とにかく、明日からは教える側ももっと慎重に行こう。」
リーダーの言葉に、3人も頷いた。
命がけの仕事に1日でも生き延びれるための新人研修。甘やかしすぎる訳にも、突き放しすぎる訳にも行かない。
レッカ:「いっそスカーあたりに着ぐるみ着せてモンスター役やらせて、木刀で戦闘訓練しない!?」
ヒサゴ:「だめでしょ。その方が却って新人さんに死人が出ちゃう。」




