第4-5話 はじめてのクエストって、何だ!?
一方、レッカとヒサゴ、そしてオンセがやって来たのは職人街のとある工房…
炉の熱気と、槌打つ音に満ちた空間、そこに行き交う職人達の熱気と怒号が何より熱い。異様なのはその職人達が皆、立派な髭をたくわえ、体格はがっしりしているが、身長が成人男性の2/3程度でしか無いのだ。
「ドワーフって言うんだ、この人達は…」
「ドワーフ…」
オンセはレッカの言葉を反芻した。噂に聞いていた、生来の職人の亜人…
「レッカちゃーーーん!!」
向こうから1人の娘が駆け寄って来た。やはり背が低い。彼女もドワーフなのか。
「ボルド!!」
レッカがドワーフの娘…ボルドに駆け寄り、両手で握手する。レッカ先生はここのドワーフと知り合いなのだろうか。
「レッカちゃんありがとうね!レッカちゃんがウチの鎧着てワイバーン倒してくれたから、あれからミスリル武具を注文するお客さんが大勢来てくれたよ!!」
向こうでは冒険者の女戦士がドワーフの女性に、「採寸はこちらです…」と連れられて行く。隣で槌で打たれて徐々に形を成して行く胴鎧は、胸元が前に突き出て腹部が細かった。そして、側に用意されているトルソーも女性の物だった。
「それでボルド、今日はこの娘の…」
レッカはオンセの両肩を持ってボルドの前に押し出す。
「お…オンセです。よろしくお願いします!!」
オンセはガバっ!と勢い良くお辞儀すると、ボルドはニコーっと微笑んで、
「あなたがレッカちゃんのお弟子さん!?それじゃあ、この書類に目を通してサインしてね!」
ボルドが1枚の書類を取り出す。一緒にいたヒサゴが武具店の看板を見ると、端の方に双葉マークが貼られていた。
「………」
言われるままに書類をしばし凝視していたオンセだったが、隣のレッカを見つめて、
「あのーレッカ先生、これ、何て書いてあるんですか!?」
残る3人は綺麗にコケた。ボルドは作り笑いを浮かべながら、
「こ、これはね…」
と、ロクスケがシンコにしたのとほぼ同じ説明をする。ちなみにヒサゴからこの報告を聞いた冒険者ギルドは翌日から一部新人戦士のためにアゲハとキュリアを教師にした読み書きと20までの数字を教える授業を追加したそうな。閑話休題、説明を聞き終えたオンセは書類の右下に頼りない筆跡でサインをする(辛うじて自分の名前は書けるらしい)。
それからボルドは、「うちはレザークラフト部門もあるのよー!」と言うと、真新しいレザーアーマーを持って来るとオンセに着せる。踏み台を使いながらあちこちの紐を調整すると、最後に丸い木の盾を持たせ、何とか女戦士が出来上がった。
最後にボルドはオンセの両手を握ると、
「それじゃあ頑張って強くなってね!いつかウチ等のミスリルアーマーを着てくれると嬉しいな!!」
怒涛の時間は過ぎ、オンセはドワーフの武具店を後にした。
「よーし、それじゃあ、アゲハ達の所まで走ろうか!!みんなきっと待ってるよ!!」
そう言うとレッカは職人街を大通りへと駆けて行く。
「え!?ちょ!!ま、待ってくださいよレッカ先生~~~!!」
慌てて後を追うオンセ。革製とはいえ鎧に加え、盾も背負っているため来た時よりも装備は重くなった。職人街を走る師弟を見つめたヒサゴは、
「やれやれ…」
苦笑しながら2人の後を追った。
※ ※ ※
『スリープキューブ』の術式を習得したシンコの下へ、レッカとヒサゴに連れられたオンセが合流した。オンセは新しい鎧を着て盾を背負い、そして何故か、肩でゼエゼエと息をしていた。
「それじゃあ装備も整えたみたいだし、午後は実戦形式で、冒険者の立ち回りについて教えて行こうか。」
ヒサゴがそう言う。既にクエストは受注してあった。湾の南岸のとある村の近くに巣食ったゴブリンの討伐。
※ ※ ※
『南都』の東の第二門を抜けた馬車の中で、アゲハが訊ねる。
「シンコ、今回のターゲット…ゴブリンはどんなモンスター!?」
シンコは『象牙の塔』で読んだ書物の知識を頭の中で掘り起こしながら答える。
「えーっと…身長40cmくらいの、小柄な小鬼で、知能も力もそれ程強くない…」
「注意すべき点は!?」
「………繁殖力が強い…群れで現れる可能性が高い。」
※ ※ ※
クエスト発注元の村に到着すると、シンコとオンセは村人から目撃情報を聞き取る。慣れない、ぎこちないながらも、村人の話に耳を傾ける2人。それを見つめていたヒサゴが、ふとこちらを見て言う。
「…あたい達も余程緊急でない限り、事前にちゃんと情報収集をしてから討伐に挑んでます。」
「ヒサゴさん、誰と話してますの!?」
キュリアが怪訝な顔をした。
「派手な魔法をブっ放す爽快感を全面に押し出す方針で、それ以外の描写を割愛していただけで…」
「ですから誰に何を言い訳なさってるの!?」
※ ※ ※
「えーっと、ゴブリンがいるのは村はずれの洞窟で、目撃情報から数は少なくとも4匹、シャーマンやホブゴブリンはいない様です。洞窟もそんなに深くないから、多くても6匹だと思います。」
集めた情報を整理して、シンコが言った。
「じゃあそれを、これからオンセとシンコの2人で討伐してもらうね。」
ヒサゴが言うとアゲハが、
「シンコ、作戦は!?」
シンコは答えた。
「………『スリープキューブ』で眠らせて、抵抗された個体、起きた個体から、オンセさんに倒してもらいます。」
オンセは自分の名前まで数を数えられなかった。




