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ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜  作者: 白洲詠人
第三部 エンチャントウェポンって、何だ!?
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第3-8話 レッカのエンチャントウェポンって、何だ!?

「改めて考え直そう。レッカの出来る事と出来ない事って、何だ!?」


「出来る事は…剣を使った戦闘、かな!?重い金属鎧を着れないから、あんまり前に立って戦えないけど…剣も、これ以上重い両手持ちの、バトルアックスとかハルバードとかを持てないから使ってるだけで…」


「言いにくいけど、戦士としては中途半端か…魔法で底上げする余地は多そうだけど…」

ヒサゴが言うとレッカが顔をしかめて「本当、言いにくい事ズケズケと言うね。」


「…出来ない事は、魔法、よね…」

「ああ…この店の術式は全部使えない。」


「ねえ、ロクスケ、この店の品揃えって、魔術師用の攻撃魔法と弱体魔法、治癒術師用の回復魔法と強化魔法、それぞれ単体向けと複数、範囲向けよね!?この中で、一番必要魔力量の少ないのって、何!?」


アゲハに言われたロクスケはしばらく考えて、

「…単体用の回復、強化魔法、かな!?魔法っていうのは、他者に働きかける物程、必要魔力量が多いんだ。」


「攻撃魔法や弱体魔法は、他者…敵にかける物よね。」

「治癒や強化も、普通は他の人にかける物ですわね…」

「それも、一人相手より範囲や複数人を相手にすると、確かに難易度が上がるわね…」


「アゲハは術式の中身を読んだ事があるよな!?ファイヤーボールをはじめとする単体攻撃魔法も、回復魔法でもヒールボールの様な治癒対象を直接触らない物も、みんなcreate(生成)系のサブルーチンとform(形成)サブルーチンとforce(力)サブルーチンを使ってるんだ。火なり生命力を生成して、それを球に形成して、力を加えて飛ばす。その3つを行わなきゃならんから、これらの魔法は必要魔力量が高い。たとえ単体相手であっても、な。」


「言い換えれば、自分にかけるなら、その力を加える部分が要らない、と。下手をすると形成する部分も…」

ヒサゴが言うと、キュリアが、

「そう言えば、冒険者をされてる低位の治癒術師さんには、ヒールボールが使えなくて、ヒールだけで前衛さんを治癒されている方もいらっしゃいますわね。自身が攻撃される危険を冒して前へ出て…」


ロクスケは肩をすくめて、


「危ねぇな、そりゃ…とにかく、自分自身にかける、回復魔法や強化魔法なら、必要魔力量が少ないんだ。実際、さっき話た魔力量によって解けなくなる封印も、回復と強化は、他より低めに設定されてるんだ。自分用の使用を想定して…」

「それでも(レッカ)には、その封印は破れないんだよな!?」

「そうだな。残念ながら…」


するとアゲハが唐突に、

「あ、そうだ!攻撃魔法からforceサブルーチンを外して、近距離用の攻撃魔法を作れば!?戦士だから近接戦闘をしながら、そういうのをぶっ放せる様にすればいいんじゃない!?フレイムボール!あたしが作ったフレイムボールを改良して…」


「…自分自身への回復、強化魔法を軽くする事を考えよう。」

「そうですわね…」

ロクスケとキュリアが、アゲハを放って話を進める。


「自分専用の治癒魔法に強化魔法か…何てこった!お前等と話すだけで、新商品のアイディアが湧いて出るなんて!!これ、戦士にも売れるぞ!!」

「でも、レッカには使えないんだよね!?」

「そうは言っても、最後に残ってる生成系のサブルーチンまで取っちまったら、文字通り何も出来なくなっちまうぞ。」


「ねえ、ロクスケ、それは『普通の呪文』ならの話でしょ!?あんたの術式ならどうなの!?」

アゲハにそう言われたロクスケだったが、

「はあ!?普通の呪文も俺の術式も変わらない…」

言いかけたところにレッカが、

「そう言えば、アゲハもキュリアもすごいよね。魔法って普通、長ったらしい呪文を唱える必要があるんじゃない!?それを2人は、『ラン、何ちゃら』のたった一言で…」

するとアゲハが、

「ああ、それ!?レッカの言う通り、魔法の呪文は発音や抑揚を一切間違えずに唱える必要があるの。だから普通の魔術師は、いざ呪文詠唱の段になって間違えて不成立に終わらない様に、常日頃から詠唱の練習をしてたの。」

「だが、俺の術式はそれを無くした。」ロクスケが続けて言った。そして苦い顔をして、「…ま、俺も現役時代、詠唱失敗を何度も何度も咎められて心を病んで、それで冒険者辞めてこの店を開いたんだけどな。あいつ等のお望み通り、『ラン』の一言で火の玉も癒しも出現させられる『魔法使い』を用立ててやろうと思ってな…」

「そう言えばロクスケ様、以前、その様な事を仰ってましたわね…」

「なあにそれ!?あたし、聞いてないんだけど…1か月も一緒に店員してたのに…」

キュリアとアゲハが角を突き合わせ始めたため、ロクスケはコホンと咳払いをして、


「と、とにかく、俺の術式は、完成された魔法の呪文を術者の頭の中に構築して、必要な時にそれを呼び出し、走らせる………」


「………」


「………」


ロクスケと、アゲハと、キュリアは、顔を見合わせてしばし黙り込み、


「「「あ!!!!!」」」


一斉に声を上げた。


それから3人は、自分達が考えた事をまとめて説明すると、ヒサゴは言った。


「そりゃぁまた、突拍子も無い事を考えたもんだね…」


「ああ…だが、これなら必要魔力量も少なくて済む上、戦士にも有用だ。」


「ですが、これですと、レッカさんにも多大な苦労を求める事になりますわね…」


「レッカ、どうする!?」


4人に促されてレッカは言った。


「私………やる!!」


それを聞いてロクスケはニヤリと笑い、

「よし!じゃあ製作に移ろう。だがさすがにこれは時間をくれ。ただ作るだけじゃなく、出来るだけ軽く、しかも必要な機能を備えなきゃならんからな。ギリギリまでチューニングが必要だ。あと、新しい術式を作るんだから、それなりの金はもらうぞ!!」


「うえ~~~…私、そんなにお金無いよお~~~…」

レッカはげんなりして言ったが、ヒサゴが、


「あんた、ギルドの口座を見てきたら!?受付嬢さんも言ってたでしょ!?『口座の内容もご確認下さい』って…」


「そう言えば、クエスト報酬の銀貨銅貨を持ち歩くのがいい加減煩わしくなったから、言われるままに作ったんだっけ…ちょっと確認してくる。」


そう言ってレッカは店を出て行った。残されたキュリアは、


「ところで…さっきアゲハさんが仰ってた、フレイムボールって何ですの!?」


「ああ、それはねぇ…」

ヒサゴが当時の事情を『やや』誇張して説明すると、キュリアはアゲハをジト目で見つめ、


「アゲハさん………やっぱりあなた、かなりやらかしてましたのね………」


アゲハは赤くなり、


「最後は役に立ったからいいの!あんたも見てたでしょう!?」

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