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ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜  作者: 白洲詠人
第三部 エンチャントウェポンって、何だ!?
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第3-1話 4輪目の牙持つ花って、何だ!?

「ラン、ファイヤーボール!!」


その一言で、アゲハの杖の先から火球が形成され、放たれる。


ボ ン! 火球は過たず巨人の顔面に当たり、巨人…トロールは、たまらずよろめく。

『Uoo…』


「ラン、プロテクト!!」

その一言で鎧が光の膜で包まれ、


「レッカ、行って!!」

ヒサゴが叫ぶと、鎧を着た女戦士、レッカが突撃し、上半身を火に包まれたトロールに剣を振り下ろす!


「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」


ザ ク っ!!



What does "Fire Ball" means!? ~The scroll shop Rokusuke and his clients will run their programs~

Chapter 3.



ド サ っ! その一撃を受けて地に倒れるトロール。


「よし!」

肩で息をしながら叫ぶレッカだったが、


「レッカ、左!!」

後ろからヒサゴの声が飛ぶ。


「え…」『Uoo…』ガン!「キャア!!」


左側から別のトロールに殴り掛かられ、咄嗟に盾で受け止めようとするが盾ごと弾かれて思わずよろけるレッカ。


「ラン、ヒールボール!!」

後ろから声と共に光の球が飛び、レッカの左腕に当たると、さっきの一撃で捻挫した彼女の左腕の傷が癒え、痛みが引いて行く。


後ろ…アゲハとヒサゴに挟まれる形で立っているのは、修道服に短杖を構えた治癒術師…いや、神官のキュリア!


「サンキューキュリア!さあ、来い!!」

キュリアに礼を言うと、再びトロールに向き直るレッカ。


一方、キュリアは常時スキャンボディでレッカの身体を監視しながら、周囲をうかがうと…


『Uoo!!』


前で戦っているレッカの横をすり抜けた一体のトロールが、アゲハの眼前まで迫っていた!トロールはアゲハに拳を振り下ろし…


「危ない、アゲハさん!!」

キュリアはアゲハに駆け寄り、彼女の左手を引っぱろうとするが…


パシン! アゲハはその手を振り払い、


「ラン、フレイムボール!!」


掲げた杖から巨大な火球を飛ばし、迫り来るトロールの頭部を吹っ飛ばす!


ズ、ズーーーン!! 首を失ったトロールは前のめりにアゲハの横に倒れ、その刹那、拳が彼女の頬をかすめる。


ツ………っ 頬から一筋の血が流れる中、アゲハはキュリアを睨んで、冷たく言い放つ。


「余計な事しないで!!」


「な…!?こ、こっちは親切心で…」

庇ったつもりが非難されて、思わず怒鳴り返すキュリア。


「冒険者やるなら役目と優先順位を考えて!!あんたの仕事は前衛の治癒!つまりレッカの回復!!あたし達は後回し!!」

まくし立てるアゲハ。


「や、役目と言うならあなただって…魔術師が接近戦って、何考えてますの!?」


「ちゃんと対抗策はあったでしょ!?」


「………」「………………」

互いに睨みあうアゲハとキュリア。


「そ、そろそろ戦闘に集中してくれないかなー…」

遠慮がちにヒサゴが言うと、


「分かりました!以後、注意します!!」

キュリアが言い放つと、ようやく2人はモンスターの群れに向き直る。しかし振り向きざまにキュリアは、

「ラン、ヒールボール。」

ごく弱いヒールボールを横に放つと、それはアゲハの頬に当たり、さっき付いた傷が癒えて行った。それを感じたアゲハは、


「チっ………!!」

舌打ちし、

「ラン、ファイヤーボール!!」


「ラン、ヒールボール!!」


互いに前へ、攻撃と回復の魔法を打ち合うアゲハとキュリア。


「ほらほらシスターさん!回復遅いよ!!もう教会へ帰ったら!?」


「あなただって!!そんなに打って、魔力が底をついても知りませんよ!!」


「お生憎様!!あたしは『北都』でランクBまで行ったの!!」


「わ、(わたくし)だって、ランクDからスタートですのよ!!」


「そりゃヒーラーだから特別扱いされてるだけでしょ!?魔法系はみんなそうよ!!」


「ぐ…っ!!だ、大体『北都』って、追放されて『南都』へ落ち延びて来たんでしょう!?」


「あ、あんただって、神殿追放されたくせに!!」


(わたくし)は神殿とは良好な関係を維持してますわ!!」


「ならあんた何でうちに入ってるのよ!?第一部ラスボス戦の、2話限りの名無しのゲストじゃ無かったの!?」


「そうではないからこうしてるんでしょ!?」


互いに醜く罵りあいながら、その罵声の合間にちゃんと術式を走らせ、モンスターの討伐と、レッカの治癒を怠らない2人を横目で見ながら、ヒサゴはため息をつき、


「………この2人のいるパーティーを維持してるあたいを、誰かもっと評価してくんないかなぁ…」


     ※     ※     ※


フィールドのトロール討伐クエストをコンプリートし、『南都』へ帰る馬車の中…


「…ねぇ、ヒサゴ!なんでこいつ入れたのよ!?」

不満げなアゲハがキュリアを指差す。


「え~!?ずっと探してたヒーラーが、ようやく見つかったんだよ~!?」

ヒサゴはヘラヘラ笑って取り合おうとしない。


「やめた方がいいよ!神殿クビになるなんて、何やらかしたやら!!」

『北都』のパーティーを追放されたアゲハは言った。


(わたくし)は、神殿の外に、やりたい事が見つかりましたの。」

にっこりとほほ笑むキュリアに、


「ヒサゴ!こいつ絶対怪しいよ!!きっとよからぬ企みがあって、あたし達を面倒事に巻き込むに決まってる!!」

自分が『北都』に帰る実績稼ぎのために、ヒサゴ達に接近し、アースドラゴン討伐に巻き込んだアゲハは言った。


「そうは言うけどアゲハだって、遠征の最中ずっと言ってたじゃない。『あのシスターさん、うちに入ってくれないかなぁ、さすがにヒーラー抜き3人でアースドラゴンは無茶だった』って。」


「ひ、ヒサゴ!?」


「分かってるじゃないですかアゲハさん。たった3人で化け物退治なんて、無茶すぎます。」


「ぐ………っ!!」

キュリアに正論を返され、言葉に詰まるアゲハ。そこへヒサゴが、


「………ねえみんな、冒険者の年季が明けた後の事、何か考えてる…!?」


「冒険者を…辞めた後…!?」

御者席のレッカが言った。


「あはは…あたしは、『北都へ帰る』って目的が消えたばっかりだからなぁ…」

(わたくし)は、冒険者を始めたばかりですから…」

気まずそうに言うアゲハとキュリアに、ヒサゴは遠くの空を見つめて、


「あたいはね…予備役として、冒険者ギルドに残りたいと思ってんの。」


「予備役…」


「いつまでもモンスター退治なんて出来ないけど、街の人間相手なら、何とかなりそうでしょ!?だからあたいは、年季が明けた後もシティーアドベンチャー専門として、冒険者を続けようと思ってんの。その後は、ギルドの一般職員にでもなれればなって…まあ、色々勉強しなきゃならないけど…」


魔術師なら隠遁して魔法の研究か、最悪でも私塾で子供に読み書きを教えれば食べていけるし、神官は神殿に戻るなりどこかの教会へ行くという道もある。だが斥候(スカウト)が、冒険者引退後に現役生活で習い覚えた技を活かして生きて行く事は難しいだろう。


「でも、ランクDじゃあ、そもそも予備役に残れないんだよね…」


車輪が軋む音と、馬の蹄の音だけが、馬車の中に響く。


「だから、ランクCに上がれたのは、むしろ大歓迎。アースドラゴン討伐で評価も上がったろうし、これで目標に近づけたって事!」


「ヒサゴ…」「ヒサゴさん…ラフカディオ様は、あなたを見守って下さっていますわ。」

アゲハとキュリアが声を揃えた。


「…でさ、アゲハ、こないだも言ってたけど、ランクBになると、冒険者を略式で捕縛出来るって本当!?だったら素行の悪い冒険者の成敗クエストも受けられるね!」

目を輝かせるヒサゴに、アゲハは苦笑いして、


「…あんまりやり過ぎるとあの通りみんなから嫌われるからほどほどにね…」


「…あなた、他にもやらかしてた事がございましたの!?」

ジト目で見つめるキュリアに、


「うるさーい!!」

アゲハが怒鳴り返し、また言い争いが起きてしまった。


(アゲハは優秀な魔法使い、キュリアは神殿出身のヒーラーだ。そして…ヒサゴ、予備役を目指してたなんて…)


そんな3人のやり取りを、御者席で聞きながら、


(私も、もっと強くならなきゃいけないのかな………)


御者席の女戦士、『ファングドフラワー』のレッカは、思った。



ファイヤーボールって、何だ!?~呪文屋ロクスケは術式を走らせる~


第三部 エンチャントウェポンって、何だ!?


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