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第2-10話 結局、ヒールって、何だ!?

ロクスケのスクロールショップ…


入口のドアが開く音に、ロクスケは顔を上げて、

「いらっしゃい…」


入って来たのは、修道服に身を包んだ、若い美女…


「キュリア………」


「お久しぶりです、ロクスケ様…」

キュリアは微かにほほ笑む。


「おう!最近、流行り病の治療で忙しかったんだよな!?俺の病まで治してくれて、ありがとな!!」

その際、アゲハが帰って来た様な気がしたが、夢か何かだろう…


「『南都』は、救われましたわ…ロクスケ様の、お陰で………」


「何、言ってんだ!?実際に流行り病を治したのは、お前等だろう!?『セインツティアー』を習得した、お前と、『ラフカディオ神殿』の神官達が…」


その言葉にキュリアは、寂しげに微笑んで、


(わたくし)は…地獄に落ちますわね…」


キュリアの発案で造った術式、『セインツティアー』は、ごく狭い範囲に、弱い()()()()を与える物。


流行り病の原因は、目に見えないくらいに小さな生物。しかも、宿主の体温が上がった程度で死んでしまう前提の弱い生物。そして、とある治癒術士が講習会で言っていた。『毒と薬は表裏一体だ』、と。薬とは、弱めた毒。なら、宿主の生命に影響を及ぼさない弱いダメージであっても、そいつらにとっては致命傷になり、死滅してしまう、宿主にとっての薬になるのだ。言い換えればこれは『呪い』をかけている事に他ならない。どんな教義であってもまともな宗教なら何においても許されざる禁忌となるであろう…


だからキュリアは、術式の名前をぼかした。術式の真相を知られない様に。

だからキュリアは、そのまま神殿を出て行った。術式の真相を知られた時のために。


「『南都』に住む大勢の人を病から救ったんだ。地獄なんかに落ちる訳無いだろう!?」

ロクスケは、そう言ってくれた。

キュリアの発案に対し、ロクスケは更に術式を改良し、流行り病の病原体を見つけてよりピンポイントでダメージを発動させる機構を組み込んだ。これには偶然にもロクスケ自身が()()()()()()()()を取得していた事も幸いした。

「ま、本当言うと、神殿の奴等には早いうちに術式の真相を知ってくれた方がいいんだがな…『キュアポイズン』と同じ要領で、病原体を判別するデータベースを組み込んだから、新しい病気が出て来る度に、病原体のサンプルデータを蓄積する必要があるんだ………」


『南都』は、救われた。禁忌を犯し、同僚をも騙し、その罪を一身に背負い、涙を流し続ける聖女によって…


「そうしましたら、(わたくし)は神殿から非難されますわね…」

言いながらキュリアはカウンターに一歩近寄る。


「だからそういう事に寛容そうな奴…例えばあのオーウェンじいさん辺りから事情を…」


「…そうなりましたら、ロクスケ様…あなたが、(わたくし)を守って下さいますか!?」

蠱惑的な笑みを浮かべて、カウンター越しのロクスケを見つめるキュリア。


「きゅ…キュリア!?」


「『南都』を捨てて、2人きりで、どこか遠くへ…ふふ…それもいいかもしれませんわね…」


その時だった。


バタン! 「たっだいまー、ロクスケー!!お店はちゃんとやってたー!?」

入口のドアが開き、1人の女性が勢いよく入って来た。ミニスカートにヘソ出しビスチェ、とんがり帽子の魔術師。


「あ、アゲハ…!?」

それは、会いたかった女性(ひと)の名前。だが…カウンター越しにキュリアに言い寄られているこの状況ではまずすぎる…


「あ~~~っ!!な、何してんのよあんたは~~~~~っ!!!!!」

ロクスケとキュリアを指差し、絶叫するアゲハ。そして、アゲハの登場に、キュリアは上品な所作で振り返り、一礼し、


「お久しぶりですわね、アゲハさん。化け物(アースドラゴン)退治の時にご一緒した、治癒術師のキュリアですわ。」


「ああ…あの時の…あたしがパーティーメンバーと遠征に行ってる間に、何があったの!?」


「あの後、あなたからいただいた『ヒール』の呪文書のお陰で、(わたくし)は、この世の真理を悟りましたわ。本当にありがとうございます…」


「ああそれは良かったわねぇ。ならそのまま、あのドアからお帰り下さい!!」


「そうは参りません。(わたくし)に真理を授けたのは人間の姿をした悪魔で、(わたくし)はその者に魂を奪われてしまいましたの!!」


「そんなの!あたしが一言言えば返してもらえるわよ!!」

アゲハはキュリアに詰め寄り、ロクスケの右と左で2人は相対する。


「いいえ結構です!!悪魔の契約は一生続きますわ!!」

ロクスケの左側で、修道服越しのキュリアの乳房がぶるんと揺れる。


「そう言わずに…ああそうだ!!聖職者なら一生、神に仕える清い身体のままいなさいよ!!ええきっとそれがいいわ!!」

右側でビスチェから溢れるアゲハの乳房がぶるんとゆれる。サイズは誤差レベルで左側の方が若干大きい。


「…それは女神官に対する偏見で侮辱ですわ。あなたに『魔女は火炙り』と言うのと同じくらいのね!!」


「………本っ当に火炙りにしてくれようかしら………あたしの魔法で!!」


バチバチバチっ………!!2人の間で火花が散り、背後にラフカディオ神と、燃え盛る炎のオーラが現れる。


「何ですの!?」


「何ですってぇ!?」


どうやら2人は互いを危険な存在と認識したらしい。そして、2人を危険な存在と認識したロクスケは、カウンターから抜け出し、抜き足、差し足で、店から出て行こうと、入口のドアを開け…がしっ!がしっ!!左と右の肩をキュリアとアゲハに摑まれる。


「どこへ行かれるのですか!?」「あんたのためにケンカしてんのよ!?」


そのまま、2人によって店内に引き戻されるロクスケ。バタン!ドアが閉まる勢いで、表のノブにかかっていた看板が、"Closed"の側に裏返った。


第二部 ヒールって、何だ!? 完

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